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安土饗応作戦 光秀 左近 ケロタンの遠眼鏡  作者: あっちゅ寝太郎


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第一章 第9話 ◆黒人侍・弥助、割烹着チームに電撃参戦?


外野の嫌がらせと信長の理不尽な圧力を、光秀の悪知恵と左近の勢い、ケロタンの珍妙な技でひっくり返す!


……だが、おもてなしが成功に近づくにつれ、光秀の瞳には異様な光が宿り始める。

「天下の行く末のため……上様、敢えて怒っていただきましょう」


光秀の胸に秘められた、あまりに切なく、壮大な深慮遠謀とは——?


歴史の結末が哀しいからこそ、今は思いきり笑い飛ばす!

史実のリアルと食文化の深掘りに、光秀の覚悟、そしてテンポ抜群の喜劇を掛け合わせた、命がけの過剰接待サイココメディ開幕!


【家康饗応大作戦】


第一章 第9話

◆黒人侍・弥助、割烹着チームに電撃参戦?


梅雨の雨もひと休み。


夜の安土城を、

涼しい風がゆっくりと吹き抜けていた。


台所では、

薪の火が静かに揺れ、

昆布と鰹の香りが漂う。


昼間の抜き打ち視察を終えた光秀たちは、

何事もなかったかのように

翌日の仕込みを続けていた。


白い割烹着の光秀。


赤い割烹着の左近。


緑の割烹着のけろたん。


三人の息は、

ますます合ってきていた。


その時だった。


くん……くん。


勝手口の方から、

何者かが匂いを嗅ぐ音が聞こえた。


左近の手が止まる。


「……誰だ。」


赤割烹着のまま、

音もなく包丁を握る。


闇の中から、

ゆっくりと巨大な影が現れた。


松明の灯が照らし出したのは、

漆黒の肌に堂々たる体躯。


信長の側近として知られる

異国の侍――弥助であった。


◆料理の香り


弥助は大鍋を覗き込み、

嬉しそうに笑った。


「イイ匂い。」


片言の日本語ながら、

満面の笑みである。


「ミー、この匂い、

大好き。」


光秀は胸をなで下ろした。


「弥助殿でしたか。」


「夜、散歩。

そしたら、お腹、減った。」


けろたんは、

すでに焼きたての川魚を皿に盛っていた。


「ケロリ。

試食でございますケロ。」


弥助は両手で受け取り、

豪快にかぶりつく。


「オォーッ!」


目を丸くした。


「ウマイ!」


その声だけで、

左近の肩から力が抜けた。


◆武人同士


弥助は左近を見た。


左近も弥助を見る。


武人同士だけが分かる、

静かな間合い。


「オマエ……強い。」


弥助が笑う。


左近も口元だけ笑った。


「そちらこそ。」


次の瞬間。


二人は同時に

腕を組んだ。


「…………。」


「…………。」


光秀が首を傾げる。


「何をしておる。」


左近が真顔で答えた。


「武人同士の挨拶にござる。」


弥助も頷く。


「サムライ、分かる。」


けろたんだけが、

小さく呟いた。


「ケロリ。

料理人同士なら、

包丁を持ちますケロ。」


◆包丁研ぎ


魚を食べ終えた弥助は、

一丁の出刃包丁を手に取った。


刃を眺める。


「少し……疲れてる。」


そう言うと、

懐から異国の砥石を取り出した。


シャッ。


シャッ。


シャッ。


一定の音が、

静かな台所へ響く。


やがて、


シャァァン……


包丁が月明かりを受け、

鏡のように光った。


光秀が試し切りをする。


大根へ刃を添えただけで、


すうっ……


紙のように切れた。


「見事……。」


左近も思わず見入る。


「敵ながら……

いや、味方ながら天晴れ。」


けろたんは目を輝かせた。


「ケロリ。

毛呂家の職人魂が震えますケロ。」


◆四人目の割烹着


光秀は静かに頭を下げた。


「弥助殿。


この饗応、

どうか力を貸していただけませぬか。」


弥助は即座に答えた。


「信長様のため?」


「その通り。」


「なら、喜んで!」


けろたんが、

一番大きな白い割烹着を差し出した。


弥助は袖を通す。


……が。


腕が太すぎる。


「ビリッ。」


「あ。」


右袖が裂けた。


「……。」


台所が静まり返る。


次の瞬間。


「ぶはははは!」


左近が腹を抱えた。


光秀も耐えきれず笑う。


けろたんは真顔のまま言った。


「ケロリ。


特注の特々大を

仕立て直しますケロ。」


弥助も豪快に笑った。


「ミー、大きすぎた!」


こうして、

安土城の台所に

四人目の割烹着侍が誕生したのである。


その頃。


天井裏では、

またしても増田長盛と堀尾吉晴が

覗き見をしていた。


「増田殿……。」


「何だ。」


「また仲間が増えましたぞ。」


「明智の台所……

どこまで強くなるのだ……。」


二人は同時にため息をついた。


その真下で、

けろたんは小さく笑う。


「ケロリ。


天井の鼠も、

ずいぶん賑やかですケロ。」


天井裏の二人は、

ビクリと身体を震わせたのだった。


(つづく)

後書き:筆者の想いに寄せて

なぜ島左近なのか。なぜケロヨンなのか。

それは、左近の持つ「武人の潔さ」と、ケロヨンの持つ「健やかな日常の象徴」が合わさった時、初めて信長の「死の気配」に対抗できると考えたからです。

店頭で雨の日も風の日も立ち続けるあのカエルのように、ケロヨンは安土の激動をケロリと見過ごし、左近は主君のために地獄の釜を焚き続ける。

この二人がいたからこそ、光秀は本能寺という「最後の配膳」まで走り抜けることができました。歴史という名の厳しい「処方箋」を、少しでも楽しく、そして美味しく書き換えたい。そんな願いを込めた主役抜擢でございました。

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