8 入部届
その翌日の、一時間目後の休み時間。
トイレに行こうと思って教室を出ると、廊下の所に小暮が立っていた。
「おー小暮、昨日はありがとうな。お前のおかげで助かったわ」
俺がそう言いながら小暮の元に歩み寄ると、
小暮はフイッと俺から顔を背け、
「別に、お前の為にやったんじゃねぇよ」
と素っ気なく言った。
う~む、すっかり嫌われてしもうたみたいやな。
あの時の事、まだ怒ってるんやろうなぁ。
とりあえずここは、素直に謝っとこう。
そう考えた俺は、小暮に頭を下げて詫びを入れようとした。
するとそれより一瞬早く小暮が、
「これ」
と言って、一枚の紙切れを俺に差し出した。
「ほへ?」
目を丸くしてそれを受け取る俺。
そしてそれを覗きこむと、その紙切れには『入部届』と書かれていた。
「あの、これは?」
再び小暮を見やって尋ねると、小暮は顔を背けたままこう答えた。
「それを、野球部の顧問に渡しておいてくれ」
「あへ?」
小暮の言わんとする意味がもうひとつ分からなかった俺は、
マヌケな声を上げて首を傾げた。
すると、からかわれているとでも思ったのか、
小暮は怒ったような口調でこう続けた。
「だから!野球部に入るって言ってんだよ!」
「へ?誰が?」
「俺が!」
「何で?」
「何でもだよ!」
「そうは言うけど、
お前はこの前まであんなに野球部に入るのを拒否しとったやないか?
それが何で急に入るなんて言い出すんや?」
俺がそう尋ねると、小暮はやにわに俺の胸ぐらを掴み、声を潜めてこう言った。




