7 佐渡部長は納得しない
「あだだだっ⁉な、何するんですかいきなり⁉」
咄嗟にその手を振り払い、俺は佐渡さんの方に振り向いた。
すると佐渡さんはやけに不機嫌そうな顔で俺に言った。
「一件落着とちゃうやろ。
野球部の廃部が取り消しになったら、
ウチの部に入ってくるはずやった、野球部の部費はどうなるんよ?」
「え?それはやっぱり、なかった事になるんやないですか?」
俺がそう答えると、佐渡さんは
「ふざけるな!」
と叫んで俺の胸ぐらを掴み、それをガックンガックン揺らしながら続けた。
「今更なかった事ってどういう事やねん⁉
それじゃああたしらは何の為に休日を割いて
あんたらと試合をしたのか分かれへんやないか!」
「そ、そう言われても、そもそも野球部が廃部に追い込まれる事自体が、
おかしな話やった訳やし・・・・・・」
「じゃあ廃部は見逃したるから、部費だけ全部ウチの部によこせ!」
「そんなご無体な・・・・・・」
「うるさい!そうでもしてもらわんと、あたしの気が治まらへんのや!」
そう叫びながら俺の胸ぐらを揺らし続ける佐渡さん。
こりゃあ一件落着どころか、校長よりも厄介やないか・・・・・・。
と、げんなりしていると、そこに碇が歩み寄ってきて、遠慮気味にこう言った。
「あのぅ、どうか許してもらえませんか?
部費がないと、僕らは野球部の活動が続けられないんです・・・・・・」
そんな弱腰で言うても、この人が聞いてくれる訳ないやないか。
心の中でそう嘆いていると、碇にそう言われた佐渡さんは、
「分かった、許す」
あっさり許してくれました。
え?何なのこの態度の違い。
これってエコヒイキとちゃうの?
どうにも納得がいかへん俺やったけど、
そんな俺に構わず、佐渡さんは今度は校長に食って掛かった。
「ちょっと校長センセ!
野球部の廃部が取り消しになるのはええけど、
ウチの部はそれなりの報酬をもらわんと、納得できませんよ!」
「そ、そんな事を言われても、
君らの部に回すお金はなくなった訳だし・・・・・・」
「じゃあさっきの話を教育委員会の人にぶちまけますよ⁉」
「ひぇえっ!それはカンベンしてくれぇっ!」
佐渡さんのストレートな脅迫に、校長は半泣き状態になっていた。
ま、これも自業自得や。
そう思いながら二人を眺めていると、碇が嬉しそうに俺に言った。
「良かったね昌也君。これでまた、一緒に野球ができるね」
「おう、そうやな。それもこれも、あいつのおかげやけどな」
そう言って俺は、小暮の方に目をやった。
すると小暮の奴は、もうこの部屋から姿を消していた。
何か、結局今回もあいつに助けられたな。
でも、何で今回もあいつは俺らを助けてくれたんやろう?
このまま野球部が廃部になれば、あいつにとっても都合が良かったはずやのに。
俺は小暮の真意が分からなかったが、
まあとりあえす野球部の廃部がなくなった事を、素直に喜ぶ事にした。
めでたしめでたし。




