3 鹿島さんは来てくれたが・・・・・・
「鹿島さん!」
俺の祈りが天に届いたんや!
俺は急いで鹿島さんの元に駆け寄り、こう続けた。
「とうとう突き止めたんですね!校長の悪事を!」
すると鹿島さんは、バツの悪そうな笑みを浮かべ、こう言った。
「いやあ、それが・・・・・・」
「何です?」
「えーと、それがぁ・・・・・・」
俺の問いかけに、鹿島さんは扉が開いたままの入口を見やった。
俺もそれにつられて入口の方に視線を移す。
すると、何とそこに、
校長が、居た。
「なぁっ⁉こ、校長先生⁉」
思わず声を上げる俺。
それに対して校長は、
「いかにも、私は校長先生だ」
と言いながら、部屋に入って来た。
「ど、どうしてここに?」
顔をひきつらせながら尋ねると、
校長はニヤリと悪どい笑みを浮かべ、こう答えた。
「最近この私に、良からぬ疑いを持っている生徒が居ると彼女に聞いてね。
その真相を確かめる為に、ここに来たのだよ」
「な、何やって⁉」
校長の言葉を聞いた俺は、咄嗟に鹿島さんの方を見た。
すると鹿島さんは両手を合わせながら申し訳なさそうな表情で、
『ゴメン』と口を動かした。
どうやら鹿島さんは、校長の動きを嗅ぎまわっていた事がバレてしもうたようや。
そしてそれを依頼したのが俺やというのを、白状させられたんやな。
そんな中校長は、ニヤついた顔で俺を見据えて言った。
「君だね?この私が、何か良からぬ悪事を働いていると疑っているのは」
う~む、こうなってもうたらしゃあない。
俺は開き直り、キッパリと答えた。
「そうです。俺はあなたを疑っています!」
すると校長は、余裕の笑みを保ったまま続けた。
「それは実に心外な事だが、一応話を聞こうじゃないか。
君は私の何を疑っているんだね?」
「あんたはこの学校の野球部を潰して、
碇を大京山に転校させる為に、昨日の試合を仕組んだんやろ!」
「それは違うぞ君。
私は君らのように、惰性で部活を続けている部を排除し、
その部費を他の優秀な部に回す為に、昨日の試合を企画したんだ。
そもそも松山君を大京山に転校させて、私に何のメリットがあると言うのかね?」
「あんたは大京山の監督から、碇を大京山に転校させる代わりに、
何らかの見返りを受け取ったんとちゃうんか⁉」
「えっ⁉そ、そうなの⁉」
俺の言葉に驚きの声を上げる碇。
それに対して校長は、さも愉快そうに高笑いを始めた。
「はーっはっはっは!何を言い出すかと思えば!
私が大京山の監督さんから見返りを受け取った?
ふぁーっふぁっふぁっふぁ!何を根拠にそんな事を言うのかね?んん?」
「う、証拠は、ないですけど・・・・・・」
たじろぎながら俺は答える。
すると校長は、更に高笑いをしながら続けた。
「だーっはっはっは!証拠もなしにそんな事を言っているのかね君は!
はっはっは!これは傑作だ!片腹痛いとはまさにこの事だ!」
「ぐぬぬ・・・・・・」
校長の言葉に何も言い返せない俺。
すると校長は一転して真顔になり、俺にこう言った。
「だが、これだけの言いがかりをつけられて、
このまま黙っている訳にもいかん。君にはそれなりの処分を受けてもらうよ?」
「処分って、何ですか?」
俺が尋ねると、校長は再びニヤッと笑ってこう答えた。
「一カ月の、停学処分だ」
「なぁっ⁉それはあまりにもひどいんとちゃいますの⁉」
思わず声を荒げる俺。すると校長も声を荒げた。
「何を言うかっ!生徒である君が校長の私にあらぬ疑いをかけるなど、
到底許される行為ではない!これは立派な名誉棄損だ!
本来ならば然るべき場所に話を持って行ってもいいんだ!
一カ月の停学でもぬるいくらいだ!」
「ぬぐぐぐ・・・・・・」
唇を噛みしめる俺。
あかんやんけ、ヤバイやんけ。
このままやと校長の悪事を暴くどころか、
一カ月の停学処分になってしまう!
それはいくら何でもまずすぎる!
すると校長は、一転して穏やかな口調になり、こう言った。
「しかし私の仕事は、君達生徒を正しい道へと教え導く事。
こんなに重い処分を下すのは、私の本意じゃあない。
そこでだ、君が今言った事を全て撤回し、
今後そのような疑いを一切持たないと言うのなら、
停学処分は無しにしよう。どうだね?」
「なっ⁉」
校長の思わぬ申し出に、俺は言葉を詰まらせた。
この申し出は、一見すると俺に情けをかけてくれているように思えるけど、
裏を返せば、今回の一件を闇に葬る為の脅迫でもある。
ここで俺が校長の申し出に従えば、一カ月の停学は免れられる。
でも、もう野球部を廃部から救うチャンスがなくなるかもしれん。
かというてここで下手に逆らえば、俺は即停学処分。
一体どうすればええんや・・・・・・。
頭を抱える俺。
するとそんな俺に、碇がおずおずと言った。
「昌也君、もうよそうよ。このままじゃあ、ホントに停学になっちゃうよ?」
そして佐渡さんもこう続ける。
「そうそう、こんな所で意地張ってもしゃあないって。
大人しく廃部を認めて、ウチらに部費をよこしなさいや」
やっぱり、それしかないんやろうか?
しかしこの校長の悪どい笑みから察するに、
このおっさんが何らかの悪事を働いとんのは間違いないんや。
その証拠さえあれば。
証拠、証拠、証拠ぉおおおっ!
俺は心の中で叫んだ。
すると、その時。
「証拠なら、ありますよ」
校長の背後から、やにわに声が聞こえた。




