3 ガヤも静まる投球練習
「よーし!投げてこい碇!」
キャッチャーボックスに座った俺は、
マウンド上の碇にそう言ってミットを構えた。
その俺を傍らで近藤先輩が見据えている。
そう簡単に俺のポジションは渡せへんぞという目や。
一方の碇は、マウンド上でソフト部の女子達に黄色い声援を送られていた。
「きゃーっ!かわいー!」
「こっち向いてー!」
その声援に、碇は戸惑いの表情を浮かべている。
それにムカッときた俺(もちろん、碇が女子にモテる事に対して)、
「くぉら碇!そんな女どもほっといて、さっさと投球練習を始めんかい!」
と怒鳴った。
するとそれを聞いたソフト部の連中が、今度は俺に罵声を浴びせてきた。
「何なのよあいつ!」
「引っ込めマヌケヅラ!」
「アホキャッチャー!」
好き放題言いおってあいつら!
ワシはこれでも主人公やぞ⁉
もう許さん。
絶対にあいつらは倒す!
俺の中の闘争心が、更に大きく燃え上がった。
そんな中、碇の投球練習が始まった。
最初のうちは軽い肩慣らし。
その間は、ソフト部の女子達から一球ごとに声援が飛んでいた。
「きゃーっ!」
「かっこいい!」
一方傍らの近藤先輩は、これなら俺でも捕れるやんけという顔をしている。
そんな中俺は、碇にボールを返しながら言った。
「よし碇!ラスト一球、全力で来い!」
その言葉に頷いた碇は、独特のゆったりしたモーションから全力の一球を、
俺のミットめがけて投げ込んだ。
バゴォオオン!
一瞬のうちに起こった出来事。
そして辺り一帯に響き渡った衝撃音。
今までキャーキャー騒いでいたソフト部の連中は、
今の一球でピタッと静まり返った。
そして傍らで見ていた近藤先輩は、もう既にベンチに戻っていた。
よっしゃ、これで準備万端整った。
あとはこのピンチを凌いで、次の最終回の攻撃につなげるんや!




