10 扉越しの伝言
俺は家の中に入れてもらい、碇の部屋があるという二階へ上がった。
そして碇の部屋の前に立ち、その扉をノックしながら中の碇に声を掛けた。
「お~い碇~?居るか~?」
するとしばらくして、中から碇の声が返って来た。
「え、その声は、昌也君?」
「そうや、俺や」
「な、何でここに?」
「お前に話があるんや」
「僕は、ないよ」
「でも、俺はある。なあ碇、俺の話を聞いてくれ」
「そんなの、聞きたくないよ」
「まあ聞けや。あのな、この前お前が見たアレはな、誤解なんや」
「聞きたくないって言ってるじゃないか!もう帰ってよ!」
「碇!心配して来てくれた正野君に何て事言うの!」
傍らに居た光さんが、部屋の碇に声を荒げる。
しかし碇もそれに反発するように声を荒げた。
「うるさいな!今は誰とも話したくないんだ!僕の事はほっといてよ!」
「碇!」
光さんはそう叫び、碇の部屋の扉を無理矢理こじ開けようとした。
しかし俺はそれを横から制した。
「おばさん、今日はもういいです。
彼が落ち着いて話ができるようになってから、また来ます」
「正野君・・・・・・ごめんなさいね、せっかく来てくれたのに・・・・・・」
そう言って申し訳なさそうに頭を上げる光さん。
それに対して俺は「構いませんよ」と言い、
部屋の碇に向かってこう続けた。
「おい碇、実はな、明後日の日曜、ウチの学校のソフト部と、
野球の試合をする事になったんや。
場所は学校。そしてその試合で負けたら、野球部は廃部になる」
「え?廃部?」
にわかに驚いた声を上げる碇。俺は頷いて続けた。
「そうや。相手のソフト部は、
この前の矢沙暮高に勝っても劣らへん強豪チームや。
だから明後日の試合、何としてもお前に来て欲しい」
「・・・・・・」
「待ってるからな」
黙り込んだ碇にそう言い残し、俺は碇の家を後にした。
結局碇の誤解を解く事はできんかったけど、
あの状態の碇には何を言っても無駄やったやろう。
まあとりあえず試合の事は伝えたから、後は碇が来てくれる事を天に祈ろう。
どうか試合当日、碇が来てくれますように。




