6 それでもやっぱり戻れない
この二人のコントみたいなやりとりを聞いてるとキリがなさそうなので、
俺はそう言って口を挟み、こう続けた。
「まあ俺としては、
お二人がどういう理由で野球部を辞めたのかなんてどうでもいいんですよ。
それよりさっきも言ったように、また野球部に戻って来てもらえませんかねぇ?」
「断るっ!」
岩佐先輩は頑としてそう仰る。
仕方がないので俺は、近藤先輩の方に向いて言った。
「あのぉ、じゃあせめて近藤先輩だけでも戻って来てもらえませんか?」
すると近藤先輩も、
「ガンちゃんが戻らへんのやったら、俺も戻らへん」
と言って首を縦に振ろうとしなかった。
困ったなぁこりゃ。
おだてただけでどうこうできそうな雰囲気とちゃうぞ。
一体どうすればええんや?
ええい、ここでウダウダ考えてもしゃあない。
俺はとりあえず、思いつくままに口を開いた。
「ウチの野球部ね、今度ソフト部と試合をする事になったんですよ。
しかもその試合で勝たへんと、野球部は廃部になるっちゅう条件で」
「な、何だと⁉廃部⁉」
驚きの声を上げる岩佐先輩。
しかしすぐに平静を装ってこう続けた。
「へ、へぇ、そりゃあ大変だなぁ」
それに対して俺は頷いてこう続けた。
「はい、大変なんですよ。それに野球部は元々部員がギリギリで、
その上あなた方バッテリーが抜けた。
そのあとにキャッチャーの俺と、ピッチャーの奴が一人入ったんですが、
そのピッチャーの奴も、ある事情で今度の試合には来ないかもしれないんです。
もしそうなれば、ウチのチームは試合もできずに負けになってしまう。
だからあなた方お二人には、何としても野球部に戻って来て欲しいんです!」
俺はそう言って二人の顔を見据えた。
すると近藤先輩は気まずそうに俺から目を逸らし、岩佐先輩の方を見た。
その岩佐先輩は暫く黙りこみ、そして呟くようにこう言った。
「それでもやっぱり、俺は野球部には戻れねぇよ」
「どうしてですか⁉別に野球が嫌いになったって訳じゃないんでしょ⁉」
思わず声を荒げる俺。それに釣られるように岩佐先輩も声を荒げる。
「嫌いじゃねーよ!でもな!俺は小学生相手に負けたんだ!
高校生なのに、小学生にボコボコに打たれたんだよぉっ!」
そして岩佐先輩はおいおいと泣き出してしもうた。
これはどうしたもんやろうか?
まあ確かに高校生のピッチャーが小学生のバッターに打たれるっちゅうのは、
この上ない屈辱やろうけども。
するとそれを見た近藤先輩も、同じように泣き出した。
「しくしくしく・・・・・・」
声に出してしくしく泣く人は初めてや。
ていうかどうすりゃええねんこの状況。
流石にこれは、俺でもどうする事もでけへんぞ。
そう思って途方に暮れていた、その時やった。
「話は一通り聞かせてもろうたで」




