5 岩佐の名誉を傷つけず、ワイルドなイメージを与える事が何より大事な場面
「岩佐先輩に近藤先輩、どうか野球部に戻って来てもらえませんか?」
すると岩佐先輩は、俺に背を向けて答えた。
「それは無理な相談やな」
「何でですか?」
「俺はもう、野球はしねぇって決めたんだ」
「でも、今やってましたよね?」
「う、うるせぇよ!今のは違うんだよ!
別に野球に未練があるとかじゃねぇんだよ!
おい平太(近藤先輩の事)!
お前もこの生意気な下級生に何か言ってやれ!」
俺の言葉が気に入らなかった様子の岩佐先輩は、
そう言って近藤先輩に声を荒げた。
すると近藤先輩は
「分かった!」
と言って俺を見据え、声高らかにこう続けた。
「よく聞けよ一年!ガンちゃんはな、
この前の小学生との試合で負けたショックで、野球を辞めたんや!」
「オイオイ待て待て!」
近藤先輩の言葉に、岩佐先輩が慌てて口を挟む。
「どうしたのガンちゃん?」
「お前それだとまるで俺が負け犬の腰抜けみたいじゃねぇか!
もっとこう俺の名誉が傷つかないような表現を心掛けろよ!」
「あ、そうか、ごめんガンちゃん。やい一年坊主!よく聞けよ!」
岩佐先輩の言葉を受けた近藤先輩は、再び俺の方に向き直って言った。
「ガンちゃんはな、
別に小学生のチームに負けたのがショックで野球を辞めたんとちゃうぞ!
ガンちゃんはホンマは野球部に戻りたいんやけど、
自分から辞めるって言うた手前、なかなか戻りにくいんや!」
「うぉーい!待てーい!」
再び岩佐先輩が口を挟む。
そして近藤先輩の胸ぐらを掴んで怒りの声を上げた。
「それだと俺が自分に素直になれないシャイボーイみたいじゃねぇか!
そうじゃなくて、もっとワイルドな俺のイメージを与える事に心を砕きたまえ!」
「わ、分かったよガンちゃん。やい一年!よく聞けよコラ!」
「あの、ちょっといいですか?」




