1 マジで碇が来ない
「どういう事や?」
ソフト部との試合を二日後に控えた、金曜の昼休みの部室で、
キャプテンは至極険しい顔つきで俺に言った。
ちなみにキャプテンの言う『どういう事や?』とは、
ここ数日碇が全く部活に顔を出さへん事に対してのモノや。
なので俺は、明後日の方向を眺めながらこう答えた。
「さ、さあ?どういう事なんでしょうねぇ?」
碇が部活に来ない事について、俺は
『体調が悪いんじゃないですか?』
と言って誤魔化してきた。
しかしそれも三日目ともなると、
キャプテンがそれを不審に思うのも無理はない。
キャプテンは疑いの目でズズイッと詰め寄り、俺にこう続けた。
「どういう事なんでしょうねぇやないやろ⁉
ソフト部との試合は明後日に迫ってるんやぞ⁉」
「そ、そうですね」
「それやのに、何で松山君は部活に来ぇへんのや⁉」
「え~と、昨日も言うたように、体調が悪いんじゃないですかねぇ?」
「それホンマか⁉」
「ど、どういう事ですか?」
「俺はどうも、君が何か隠してるように思えるんやけど」
「ギクッ!さ、さあ、何の事やら?」
「喧嘩でもしたんか?」
「い、いいえ?喧嘩なんかしてないですよ?」
「そやけど君と松山君の間で、何かあったんやろ?」
「え~・・・・・・まあ、そう言えなくもないような・・・・・・」
「という事は、松山君にまた部活に来てもらうには、
君が何かしらの行動を起こさなあかんという事やよな?」
「そ、そうなんですかねぇ?」
「違うと言うんか?」
「いえ、俺が動かないとダメです。ハイ」
「じゃあ君は今日の放課後、松山君の家に行って、彼に謝ってくるんや」
「や、やっぱり、俺が行かないとダメですか?」
「他に誰が行くんや?」
「そうですよね、俺が行かなきゃダメですよね。ハイ」
「しかしこうなると、
万が一松山君が試合に来ぇへんかった時の事も考えとかんとあかんな」
「どうするんですか?」
「アテはあるよ。この前部室の前をうろついとった、あの(・・)二人」
「ああ、野球部に戻りたいんだか戻りたくないんだか
よく分からないあの人達ですね。
確か名前は、岩佐先輩と近藤先輩」
「あの二人をチームに呼び戻す」
「そうですね。どちらにしろピッチャーとキャッチャーは、
チームに二人ずつは欲しいですからね」
「という訳で正野君、今からその二人を野球部に戻るよう説得してきてくれ」
「でぇえっ⁉また俺ですかぁっ⁉
何か厄介事は全部俺に押し付けようとしてません⁉」
「何を言うんや!雑用をこなすのは一年の仕事!
例え君が中学時代に凄い選手やったといえども、特別扱いはせぇへんからな!」
「それは別に構わないんですけど、
こういう仕事は雑用の域を超えてるような・・・・・・」
「そんな事はない!
それにあの二人は性格がひねくれ倒しとるから、
同級生の俺らが行っても余計にヘソを曲げるだけや」
「難儀な人達ですね・・・・・・」
「その反面あいつらはおだてるとすぐに調子に乗るから、
後輩の君がちょっとおだてたったら、
気を良くしてまた野球部に戻ってくるはずや!」
「そんなにうまい事いきますかねぇ?」
「大丈夫!君ならできる!」
「そ、そうですかねぇ・・・・・・」
何か、また面倒な事になってきたなぁ・・・・・・。




