20 野球部が勝ったら
「え?まだ何かあんの?」
「あの、今度の試合、
あなた方が勝ったらウチの部の予算を丸丸もらえますけど、
俺らが勝った場合、何がもらえるんですかね?」
「は?そんなん決めるだけ無駄やと思うけど?」
「まあでも一応勝負ですから、
ウチの部費に見合うようなモンを賭けてもらわないと」
「ま、ええけど。で、あんたらが勝ったら何が欲しいの?ソフト部の部費か?」
それに対して俺は、首を横に振ってこう答えた。
「いえ、部費やなくて、小暮をウチにください」
この期に及んでまだ言うかというツッコミが聞こえてきそうやけど、
それほどに小暮はウチのチームに必要な選手なんや。
すると佐渡さんは苦笑しながら言った。
「そういえばあんた、この前も小暮を野球部に引き抜こうとしとったなぁ。
あんたはあの子の事が好きなんか?」
「違います。純粋に戦力として欲しいんです」
「ほ~う」
俺の言葉に、そう言って目を細める佐渡さん。
そしてこう続けた。
「まあ、別にそれでもええよ。どうせあたしらが勝つんやし」
「その言葉、忘れんといてくださいよ。
後でやっぱりやめたなんてナシですよ?」
「分かってる分かってる。
万が一、いや、億が一にもあたしらが負けたら、
例え本人が嫌がっても、小暮を野球部に譲ったるわ」
佐渡さんはそこまで言うと、踵を返して去って行った。
よし、うまい事約束を取り付けたぞ。
これで今度の試合で勝てば、廃部を免れる上に小暮も入部させられる。
正に一石二鳥!
・・・・・・まあそれも、今度の試合で勝てばの話やけどな。
とりあえず、碇が戻って来ん事にはまともな試合もでけへん。
頼むからさっさと機嫌を直して戻ってきてくれ、碇。
俺は心からそう願いながら、部室へと向かった。
しかしそんな俺の願も虚しく、碇は翌日から学校に来んくなってしもうた。
これは冗談抜きで大ピンチや!
野球部は一体、どうなってしまうのやろうか?




