6 大京山の方針
「困ってんのはこっちですよ!
そもそも優秀な選手と見れば、例え他所の学校からでも引き抜こうっていう、
あんたらのやり方が気に入らないですね。
そこまでして甲子園に出たいんですか?」
「公文やな」
「愚問でしょ」
「そうそれ。ええか?野球っちゅうのはな、選手がやるもんなんや。
強いチームを作ろうと思えば、優秀な選手を集めなあかん。分かるやろ?」
「そやけど、やり方ってモンがあるでしょうが」
「野球の勝負っちゅうのは試合の前から既に始まってるんや。
優秀な選手を集め、それを極限にまで鍛え上げたチームが勝者となれる」
「じゃあ優秀じゃない選手がいくら頑張っても、勝者にはなれないと?」
「そうや。そして君らもこの学校で野球を続ける限り、
その一員に仲間入りするやろうな」
「それ以上ウチのチームの侮辱をするなら、
例え年上のあんたでもぶっ飛ばしますよ?」
「おおぅ、怖い怖い」
そう言って皆上は肩をすくめる。
そして踵を返して俺達に背を向け、こう続けた。
「まあ今日の所は帰るわ。
もし、この(・・)学校で(・)野球が(・)続けられん(・・・・・)く(・)なった(・・・)時は、
すぐにでもウチのチームに来てくれてええんやで?」
「そんな事は一生ないでしょね!」
俺が強い口調でそう言うと、皆上はフッと鼻で笑い、
ゆっくりとした足取りで校長室の方に戻って行った。
「何か、嫌な感じの人だったね」
皆上の後姿を眺めながら、碇が言った。
「勝つ為なら手段を選ばんタイプやな。
高校野球界のスターか知らんけど、ホンマにいけ好かんやっちゃ」
「でも、昌也君の事を凄く誉めてたよね?」
「あれは誉めてると言うてええんか?」
「そりゃあそうだよ。
甲子園の大スターが認めたんだから、昌也君はやっぱり凄いんだよ!」
そう言って碇は嬉しそうに笑った。
まあそれに関しては悪い気はせんのやけど、
皆上が去り際に言うた言葉が、妙に頭に引っかかっていた。
俺らがここで野球がでけへんようになった時は、いつでも大京山に来い。
ケッ!そんな時が来る訳ないやないか。
俺はこの学校のチームで甲子園に行くんや。
あんな奴が居るようなチームなんかには絶対に行かへんぞ!
俺は改めてそう心に誓ったのやった。
が、その誓いに立ちはだかるように、物語は動き出す事になる。
とりあえず、明日に続く。




