5 ゲームソフトをすぐに返してくれそうな人間は評価が高い
「正野正也君」
「な、何ですか?ていうか、名乗ってないのに何で俺の名前を?」
「去年の中学の全国大会のビデオを見たからな。
そこで君のプレーを見て、君にずっと目をつけとったんや」
「へ?お、俺に?」
皆上の意外な言葉に目を丸くする俺。
するとそこに碇が割って入り、皆上に向かってこう叫んだ。
「そんな事を言っても、昌也君はもう僕のモノなんですからね!」
「誰がお前のモノやねん!」
俺はそう言って碇を押しのけた。
その俺をまっすぐに見据え、皆上は言った。
「なあ正野君、君、ホンマにウチのチームに来る気はないか?」
「はい?何をいきなり言うんですか?
あんたらがスカウトしたいのは碇の方でしょう?」
嘲るように俺は言ったが、皆上は真顔で続けた。
「確かにウチの監督は松山君を欲しがってる。
でもウチのチームに今一番必要なのはキャッチャーなんや。
ハッキリ言うて今のウチのキャッチャーは、肩が弱くてリードも悪い。
おまけに俺が貸したテレビゲームのソフトをなかなか返さへん」
「それは野球と関係ないでしょう」
「それに引き替え君は、肩が強くてリードもうまい。
そして何より貸したゲームソフトをちゃんと返してくれそうな顔をしている」
「どんな顔ッスか⁉しかもそれが一番の評価ポイント⁉」
「そうや」
「そうなんかい⁉」
「だからウチのチームに来てくれ、頼む」
「嫌ですよ!」
「こんなに誉めてんのに?」
「誉める気あるの⁉」
「ちゃんと裏金もあげるから」
「要りませんよ!裏金ってハッキリ言うな!」
「やれやれ、困ったなぁこりゃ」




