4 皆上智彦
そう納得して廊下をズカズカ歩いていると、
後をついてきた碇が不安げな声で言った。
「い、いいのかなぁ?校長先生、凄く怒ってたけど・・・・・・」
「構わへんがな。こっちの言いたい事はハッキリ言うたんやから」
「でも、大京山の監督さんにも、何か悪い事をしちゃったような・・・・・・」
「何やねん、じゃあお前は五百万円をもらって大京山に行きたかったんか?」
「ち、違うよ!僕は昌也君と同じチームがいいんだよ!」
「その俺がこの高校で甲子園を目指すって言うてんねんから、
お前もそうしたらええやないか」
「つ、つまりそれは、僕に対するプロポーズって事だね?」
「違うわバカタレ!」
とか言い合いながら歩いていると、背後から、
「おい、ちょっと待てや」
という声が聞こえた。その声に立ち止まって振り返ると、
夏田監督と一緒に来ていたキャプテンの皆上が、俺達の方に駆け寄って来た。
「まだ何か用ですか?」
目の前まで駆け寄って来た皆上に、俺は冷たい口調で言った。
皆上智彦。
この男はこの前の春の甲子園の中継で見たから知っている。
現在大阪最強と言われる大京山のキャプテンにして四番バッター。
あの強豪校で一年の時からレギュラー入りし、
その実力は今すぐプロに入っても通用するんやないかと言われるほど。
おまけに細身で背が高くて男前なので、
女性のファンがメチャクチャ多いという、スター性抜群の選手や。
その皆上が、軽い口調で俺達に話しかけてきた。
「いやあ、君らにこの前の事を詫びとこうと思うてな」
「この前の事?」
眉を潜める俺に、皆上は言った。
「この前君らの所に、ウチの部員がお邪魔したやろ?」
「え?・・・・・・ああ、あの定山っていう人ですね」
声とガタイと態度がデカかったあの人やな。
すると皆上は頭をかきながら続けた。
「俺は止めたんやけどなぁ、どうしても松山君が投げる球を見てみたいって言うて」
「あの人は碇の事を、全然大した事ないピッチャーやって言うてたでしょ?」
「いーや、松山君の本気の(・)球が見られへんかったって言うて怒ってたわ」
「いやいや、碇の実力はそんなもんですよ。
大京山さんのバッターには、とても歯が立ちません」
「俺はそうは思えへんけどな」
皆上はそう言うと、碇の方を見てニヤリと笑った。
その、人を見透かしたような目つきにいささかムッと来た俺は、
刺すような口調で言った。
「で、本題は何ですか?それだけを言いに来たんやないでしょう?」
すると皆上は一転して真面目な顔になり、真剣な口調で俺にこう言った。




