16 監督のお出まし
「ところで、小暮君のスカウトの件はどうなった?」
「う、それが、昼休みに呼び出したりして勧誘はしてるんですけど、
なかなか・・・・・・」
「何をやってるんやマッタク!君はそれでもプロのスカウトマンか!」
「いえ、ただのアマチュアのキャッチャーですけど」
「こうなったらやっぱり俺が直々に出張るしかないな!」
「いやあ、今回はそれでも難しいかと・・・・・・」
と、俺とキャプテンが話していたその時、
『ピンポンパンポーン』
と、校内放送を知らせるチャイムが響き、スピーカーの声がこう言った。
『野球部の松山碇君、野球部の松山碇君、至急校長室に来てください』
「何やて?」
その校内放送に眉を潜める俺とキャプテン。
一方碇は、
「あ、忘れてた」
と声を上げ、ポリポリと頭をかいた。
「忘れてたって、何をや?」
俺が尋ねると、碇は苦笑しながら答えた。
「いやあ、実は今日、僕をスカウトしたいっていう大京山の監督さんが、
直々にこの学校に来るらしくって」
「な、何やってぇっ⁉」
驚きの声を上げるキャプテン。
そして碇の両肩をガシッと掴み、こう続けた。
「ど、どういう事や松山君⁉
大京山に行くっちゅう話は、断ってくれたんとちゃうんか⁉」
それに対して碇。
「そうなんですけど、ウチの校長先生がなかなか納得してくれなくて。
それで今日、とりあえず大京山の監督さんに会ってくれって言われて」
「あの校長め!余計な事をしおってからに!
そんなに大京山の監督にええ顔したいんか!」
そう言って歯ぎしりするキャプテン。
そんな中俺は、碇にこう言った。
「とりあえず、校長室に言った方がええんとちゃうか?
大京山の監督が来てるんやったら、シカト決め込むのもマズイやろ」
しかし碇は不安そうにこう返す。
「で、でも、大京山の監督さんが凄く怖い人だったらどうしよう・・・・・・」
「そんなもん、『僕は大京山に行く気はありません』
ってハッキリ言うたったらええんや」
「そ、そうなんだけど・・・・・・」
俺の言葉に、そう言って俯く碇。
まあ確かにこいつは、強引な押しに弱い所があるからな。
この野球部に入部したのも、
千田先輩の(かなり)強引な勧誘によるところが大きいし。
大京山の監督が千田先輩みたいに押しの強い人やったら、
下手をすれば碇はそのままなびいてしまうかもしれへん。
そう考えた俺は、碇にこう言った。
「よっしゃ。じゃあ俺も一緒に校長室に行ったるわ」
「え?ほ、本当に?」
一転して目を輝かせる碇。
それに対して俺が頷くと、碇は
「うゎあい!ありがとう昌也君!」
と言って、俺にガバッと抱きついてきやがった!
「だあぁっ!抱きつくなバカタレ!
俺はそういう趣味はないっちゅうてるやろうが!」
俺はそう叫ぶが、碇は俺に抱きついたまま離れようとしない。
するとそれを見たキャプテンが、真剣な表情で言った。
「頼んだぞ正野君!何としても君の恋人を、大京山の魔の手から守るんや!」
「恋人じゃねぇっ!」
腹の底からそう叫ぶ俺。
何かもう、このまま碇が大京山に転校してもいいような気がしてきた。
とりあえず、第三話に続く。




