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ハリガネベイスボウラーズツウ!  作者: 椎家 友妻
第二話 碇の不満、小暮の悩み
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6 米蔵じいさん

 そういう訳で俺は、

無理やりスーパーにワカメを買いに行かされるハメになった。

 マッタク、俺は今日一日碇に付き合わされてヘトヘトやというのに、

何でまたスーパーに買い物に行かなあかんねん。

しかも増えるワカメちゃん一品だけって。

 と、一人でブツブツ言いながら住宅街を歩いていたその時、

 「うぉーい!待てーい!」

 と背後から声がした。

 「へ?」

 俺は自分が呼ばれたのかと思い、後ろに振り返った。

すると向こうの方から二人の人物が走って来るのが見えた。

そのうちの一人は何とあの小暮で、

そこから少し距離を置いて、白髪頭のおじいさんの姿が見えた。

ちなみにさっきの声はそのおじいさんのものらしく、

前を走る小暮に向かってしきりに叫んでいる。

 「待たんか双菜!コラ!待てと言うに!」

 あのおじいさんは小暮の知り合いなんやろうか?

それとも身内?

しかし前を走る小暮は、そんなおじいさんの声など全く無視。

そして道端に居た俺にも気付かず、そのまま物凄い速さで走り去って行った

 「ゼェッ、ゼェッ、ま、待たんか、双菜ぁ・・・・・・」

 そう呟くとおじいさんは、その場にガクッと(かが)みこんでしまった。

それを見た俺は、慌てておじいさんの元へ駆け寄って声を掛けた。

 「だ、大丈夫ですか⁉しっかりしてください!」

 するとおじいさんはゼーゼー息を切らしながら、か細い声で言った。

 「あ、ありがとう、若いお方。

じゃがワシはもうダメじゃ、あと五十年も生きられないじゃろう」

 「でしょうね。それより俺、一応今の子の知り合いなんですけど、

おじいさんもあの子の知り合いなんですか?」

 「おお、君は双菜のお友達なのかえ?ワシは双菜の祖父で、小暮米蔵(よねぞう)と申します」

 「ああ、小暮のおじいさんやったんですね。俺は正野正也っていいます」

 「君も双菜と同じ学校に通っているのかえ?」

 「はい。同じ張金高校で、俺は野球部に入ってます」

 「何ぃっ⁉野球部じゃとぉっ⁉」

 俺の言葉を聞いた米蔵さんは、やにわに目を大きく見開いた。

そして両手でガバッと俺の首を掴みながら叫んだ。

 「双菜は!双菜は野球部に入っているのかえ⁉まだ野球を続けているのかえ⁉」

 「ぐ、ぐぇええっ!ぐ、ぐるじいです・・・・・・・」

 俺がそう訴えると、米蔵さんはハッと我に返ったように、

 「お、おお、すまん・・・・・・」

 と言って俺の首から手を放してくれた。

ヨボヨボの腕やのに凄い腕力。

ホンマに死ぬかと思うた。

すると米蔵さんは頭をかきながら申し訳なさそうに言った。

 「いやあ、ワシは昔から頭に血が昇ると、

つい人の首を絞めたくなるクセがあるんじゃ」

 「タチの悪いクセですね!おかげで俺は死にかけましたよ!」

 「君なら絞めてもいいような気がしたんじゃ」

 「ダメですよ!それよりですね、さっきの質問に対する答えですけど、

彼女、双菜さんは、野球部には入ってないです。

今はソフトボール部の方に入ってますよ」

 「ソ、ソフトボール部じゃと?」

 俺の言葉に、米蔵さんはそう呟いてガックリとうなだれた。

この様子からすると、やっぱり小暮には何らかの事情があるみたいやな。

そう思った俺は、遠慮気味に米蔵さんに言った。

 「あの、もしよろしければ、詳しい事情を話してもらえませんか?

俺、力になりますよ?」

 すると米蔵さんは暫く黙りこんだ後、

 「分かった、話そう」

 と言ってくれた。

 とりあえずこんな道端で話を聞くのもアレなので、

近くの公園に場所を移す事にした。

さてさて、これからどんな話が聞ける事やら。



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