4 デートの相手は伊予美ちゃん?
それから数日後の日曜日。
俺は近所の駅前で、ある人物と待ち合わせをしていた。
ちなみにその人物とは、松山碇。
前々から一緒に遊ぶという約束を、遂に果たす日がやってきたのや。
まあでも、今日は碇と遊ぶってだけで、別にデートという訳では決してない。
大体男同士でデートっちゅう事自体がおかしいやないか。
マッタク、あいつのホモさ加減にはホンマに困らされる。
しかも俺に惚れてるとか言うし。
これが伊代美やったら大歓迎なんやけどな。
今日のデートかって、それはそれは楽しいモンになったやろう。
「はぁあ~・・・・・・」
俺は全身の精気がすべて漏れ出しそうな程に深いため息をついた。
するとその時、
「あ、昌也君」
と、背後から声をかけられた。
碇の奴が来たんやなと思い、俺は後ろに振り向いた。
するとそこに、
伊代美が立っていた。
「あええっ⁉い、伊代美ちゃん⁉」
予期せぬ事態に、俺は思わず両目をゴシゴシとこすった。
一瞬、俺の願いがそのまま幻覚となって現れたんかとも思ったけど、
どうやら目の前に居る伊代美は幻覚ではないみたいやった。
ちなみに今日の伊代美は白のブラウスに淡いオレンジ色のカーディガンを羽織り、
膝下のふんわりしたスカートを合わせたいかにも女の子らしい格好をしていた。
学校以外で会うのはホンマに久し振りやけど、
私服の伊代美もやっぱり可愛い。
そのあまりの可愛さに、俺は思わず呟いた。
「えぇわぁ・・・・・・」
するとそれが伊代美に聞こえてしまったらしく、彼女は、
「え?ええって、何が?」
と言って目をパチクリさせた。
イカン!これやと俺はただの変態オヤジみたいやないか!
なので俺は慌てて話を逸らした。
「あ!いや!何でもないよ!それより伊代美ちゃんは何でここに?」
まさか、碇は突如急用ができて来られへんくなったから、
伊代美が代わりに俺と遊んでくれるとか⁉
などと超ご都合主義な展開を期待していると、伊代美は俺に向かってこう言った。
「ちょっと今から電車でお出かけしようと思って」
「あ、そ、そうなんや」
まあ、そりゃそうやわな。
伊代美が俺と遊んでくれるなんてありえへんもんな。
と、心の中で勝手に落ち込んでいると、今度は伊代美が俺に尋ねてきた。
「昌也君もこれからお出かけ?」
うん、君と一緒にお出かけできたらどれほど幸せな事か・・・・・・
とシミジミ思いながら、俺はこう続けた。
「いや、俺はちょっとここで人と待ち合わせを」
すると伊代美はピンときたように両手を合わせ、こう言った。
「あ!分かった!小暮さんと待ち合わせしてるんやね!」
「違う!」
俺は〇、二秒以内に否定した。
しかし伊代美は全く信じてくれる様子もなく、ニンマリしながら続けた。
「照れんでもええよぉ~。
じゃあ小暮さんが来ぇへんうちに、お邪魔虫は退散するね。バイバ~イ」
「いや、だから違・・・・・・」
俺の弁解を聞こうともせず、伊代美は駅の改札の方へ駆けて行った。
ああ、また伊代美の誤解が深まってしもうた。
俺と小暮はそういう関係やないのに・・・・・・。
そういえば小暮の奴、もう野球部には入ってくれへんのやろうか。
入ってくれへんと、俺がキャプテンに怒られるんやけどなぁ・・・・・・。
「はぁあ~・・・・・・」
再び深いため息をつく俺。
何か最近うまくいかへん事だらけで、精神的に疲れた。
こんなにしんどい思いをしてるのは俺だけとちゃうやろか?
何で俺だけこんなにしんどい思いをせなあかんねん。
ていうか碇の奴はまだ来ぇへんのか?
待ち合わせの時間はもう過ぎとんのに、何をしてるんやあいつは⁉
ぬぉおっ!早よ来い碇!
と、碇に怒りを爆発させていたその時、
「昌也く~ん」
と能天気な声を発しながら、その碇が手を振りながらやって来た。
そして何ら悪びれる素振りもなくこう言った。
「ごめんね昌也君、待った?」
それに対して俺は、怒りをストレートに爆発させた。
「待ったわバカタレ!何で一時間近くも待たすねん⁉」
「違う違う。そういう時は、『今来た所だよ♡』って言わないと」
「アホか!何で男相手にそんな気を遣わなあかんねん⁉」
「僕も今来た所だよ♡」
「知っとるわアホ!だからもっと早よ来いって言うてるんやろうが!」
「これから何処に行く?」
「俺の話を聞けぇっ!」
出掛ける前からこの有様。
今日はこれから、どうなってしまうんやろうか?




