賢羊人
・イルク村の内政向きの人物
・ヒューバート
本職の内政官
・エイマ
どちらかというと書記、学者
・ピゲル爺
内政においては最強格
・チャイ
こちらも学者傾向
・ゴルディア
経済中心、エリー達が外交を主に動いているので、エリーの仕事を引き継いだ
・ダレル夫婦
内政向きではあるが、他のあれこれで忙しい
イルク村に問題がなく、順調な日々を送っていることを確認出来たなら、村の西に向かう。
そこには今、緊急で役所が建設されているそうで、その確認だ。
……役所と言うが、実質的にはピゲル爺のための施設になるらしい。
物資の売買などで大活躍しているピゲル爺のための施設、そのための拠点。
今後はそこで指示を出してもらい、何人かの部下に動いてもらうことで各地での売買を進めていくらしい。
ピゲル爺本人はあくまで羊飼いを名乗っていて、そちらが本業……売買の指揮などはあくまで『お手伝い』だそうだが、その活躍っぷりを考えるとそのくらいの施設は用意すべき……とかなんとか。
更にそこではピゲル爺による指導も行われているらしい。
将来の役人候補、メーアバダル領の事務作業を担ってくれるだろう若者達に、その真髄を教えてくれるんだそうだ。
既に何人か……チャイや犬人族の何人か、ニャーヂェン族の何人か、更には来たばかりの血無し達もその指導に参加しているようだ。
血無し達の多くはキコから読み書き計算を習っていて、そのための下地は出来上がっている。
そこにピゲル爺の指導が入るとヒューバートが即戦力と評するくらいの戦力になってくれるそうで、早速様々な事務処理が行われているらしい。
将来的にはメーアバダル領からも王城に納税をする訳で、そのための準備、収入と支出の把握、獣人国の投資に対する利益配分などなど、今まではヒューバートやエイマに任せていた部分を、より詳細に正確に、誰にも文句を言わせない基準まで引き上げていくそうだ。
ヒューバートやエイマだって十分な仕事をしてくれていたが、2人だけではどうしても手が回らない部分があり、それらを今彼らがなんとかしてくれていると、そういうことらしい。
イルク村に来たばかりでいきなりそんな仕事をやらされることになった血無し達だが、文句も言わないどころか喜んで仕事をしてくれているようだ。
領経営の根幹に関わる重要な仕事を任された上に、高い報酬を約束されて、ここで踏ん張れば他の血無し達の立場も良くなるかもしれないとなってやる気も出ているようだ。
更に言うのなら賢羊商会の活躍も影響しているようだ。
血無しが血無しと呼ばれず、立派な商会として活躍していて、自分達もそうなれる、血無しではない新たな存在になれると、そう思ってくれているらしい。
中には自分達のことを賢羊人と呼んでいる者までいるようだ。
……まぁ、大メーアが見守るメーアバダル草原で暮らす人、という意味では間違っていないのかもしれないなぁ。
その呼び名が浸透していけば、血無しという言葉は使われなくなっていくのだろうし、その方が良いんだろうなぁ。
そうやって数世代もすると人間族と変わらない姿になっていく訳で……その頃に残るのは賢羊人という呼び名なのか、人間族という呼び名なのか。
……あるいはどちらでも良くなるのか、少なくともベン伯父さんはそういう世界を目指しているようだ。
そのためのメーア教であり、大メーア神殿であり、国も人種も超えた何かを目指しているらしい。
私にはよく分からないが獣人国の現状とかを聞くと、そういった新しい流れが必要なのかもしれないなぁ。
と、そんなことを考えながら足を進めていると、建設中の役所が見えてくる。
神殿に負けない石造り、神殿よりは無骨だが、大きく広く作られていて、災害などがあっても記録が失われないよう、特別頑丈な造りになるらしい。
木で組まれた足場があって、そこには多くの洞人族達がいて……様々な道具を使って作業を進めている。
そんな役場の側には仮設の役場も用意されていて、ユルト……ではなく石造りの小屋のようなものが建てられている。
ユルトでは音が外に漏れるとか、色々問題があるからと洞人族達が大急ぎで仕上げてくれたものらしい。
そこに入ってみると……大きなテーブルが中央にあり、壁には隙間なく本棚が用意されていて、早速そこには結構な量の書類が押し込まれている。
斜めにした木の板を交差させたもの……巻物棚と言うんだったか、そういった棚もあって何本かの巻物が積み上げられていて、部屋中インクと紙の匂いでいっぱいだ。
休憩時間なのか、中に人の姿はなく……挨拶したかったなぁと頭を掻いていると、小屋の外から賑やかな声が聞こえてくる。
そして聞こえてくる会話は、孤児院がどうとか、皆元気で良かったとそんな会話で……ああ、孤児院の確認に行っていたのか。
イルク村の孤児院は現状、血無し……いや、賢羊人の子供達の住居となっている。
追々は各地から孤児を受け入れるつもりだが、現状は彼らのための生活の場、勉強の場で、子供達がどういう場で生活しているか、気になったのだろうなぁ。
私が小屋を出ると、ちょうど血無しの面々がやってきた所で、それぞれ目を丸くしながらこちらを見て……少しの間の後、すぐさま獣人国の礼でもって挨拶をしてくれる。
「お、お初にお目にかかります!
もしかしてディアス様でしょうか!? 我々は獣人国からやってきた者達で、数日前からお世話になっております!!」
「は、はじめまして! 我々を受け入れていただきありがとうございます!」
「大メーア様の教えの下、一所懸命に励むつもりです!!」
20代から40代くらいだろうか、男女様々、種族も様々。
セキ達のようにどこに獣人の特徴が出ているかも様々で、傍目には人間族と変わらない姿の者もいるようだ。
そして皆獣人国風の服を着ているのだが、イルク村に馴染もうとしているのか、メーア布や刺繍のされた鬼人族伝統のビレーシャをそこかしこに巻いている。
中には犬人族の子供達やメーアの子供達を抱えている者もいて、子供達がそうやって懐いているのなら、問題のない人物なのだろう。
「ああ、よろしく頼む。
こちらに来たばかりで不慣れなことばかりだろうから、何かあったら遠慮なく誰かに相談してくれ。
個人的にはベン伯父さんが……と、こういった説明はもう受けているかな。
他にも何かあれば遠慮なく声をかけてくれ」
と、私が返すと一同は恐縮した態度で深々と頭を下げて……私が顔を上げてくれと言うとすっと上げて、そして小屋に慌てた様子で駆け込んでいく。
貴族らしく対応出来たかは分からないが、少なくとも相手は貴族として対応してくれていて、悪くはなかった……と、思う。
それから賑やかになっていく小屋を見守っていると、そこにセキ、サク、アオイの3人が駆けてくる。
いつの間にか背が少し伸びて、服も獣人国風の立派なものを、腰に装飾付きの鞘を下げてなんとも立派なものだ。
「あ、ディアス様!」
「おひさしぶりです!」
「おかえりなさい!!」
しかしその表情も声も、いつもの3人で……そんな3人に挨拶を返した私は、3人からも話を聞くかと声をかけるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は一旦戦場視点です




