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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十八章 華麗なる交易卿

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思いつき

獣人国の家系、簡易紹介


・キコの家(家名未登場)

 家長キコ 獣人国参議 狐人族 女性、子供にセキ、サク、アオイ

 ディアスに友好的で、文化や学問を重要視


・ヤテン家

 家長ライセイ、獣人国参議、テン人族、男性、子供にライキリ、ライマル。

 ディアスに友好的とは言えないが敵対もしていない、情報、策謀などを重要視


・ペイジン家

 家長オクタド、商人、フロッグマン、男性、子供にド、レ、ミなど、孫にドシラド

 ディアスに非常に友好的、友好的どころか全財産を賭けているレベルの支援をしつつある。


 川近くのユルトに向かうと、小川で水浴び……と、言って良いのか、川に入って静かに漂っていたゴブリン族の姿が視界に入り込み、声をかけて橋と橋脚についての話題を振る。


 するとプカプカと浮かんでいたゴブリン族の若者は水面でぐるりと回転をしてから、少しだけ悩むような動作を見せ、それから声を返してくる。


「橋脚の手入れくらいはなんでもねぇですが、橋なんか作っちまって問題ねぇんですか?

 船の邪魔になるんじゃ?」


 その言葉を受けて私がそれもそうだと気付き、どうしたものかと頭を悩ませようとしていると、サナトがそれよりも早く言葉を返す。


「ああ、問題ないない、吊り上げ式の跳ね橋にするからな。

 堀がある城なんかでたまに見かけるだろ? あれと同じような仕組みの橋を作ってやって、船が通る時には橋を上げときゃ良い訳よ。

 投石機に似た機構で作っても良いし、ドラゴン素材を上手く使っても良い……しっかりとした橋脚さえあれば、どうとでもなるもんだ」


 跳ね橋と言われて、私は「なるほど」と頷く


 戦争中に何度か見かけたその仕組で橋そのものを持ち上げれば、確かに船の行き来を邪魔することはないだろうなぁ。


 ……しかもそこにもドラゴン素材を使うのか。


 と、言うことは魔力を流すことで伸び縮みさせる感じで跳ね橋を動かす……と。


 うん? 伸び縮みか、魔力さえあれば伸び縮みさせられて……それがあれば跳ね橋や投石機みたいな細工が動かせる……と。


 改めてそう考えると何かこう、頭の底でモヤモヤと蠢くものがあり、私は頭を悩ませ……一体何がそんなにも気になるのかと思考を巡らせる。


 魔力で伸び縮み……私にはその魔力がないので、魔力を使うとか流すとか、そこら辺の話がよく分からないのだが、アルナー達は結構簡単そうにやってみせている。


 アルナーもセナイもアイハンも、ドラゴン素材の弓を軽々扱うし……命のかかった戦闘という緊張状態でも見事な連射をしてみせている。


 ……つまりそこまで難しくないことなのだろう、魔力さえあれば簡単に伸び縮みさせられるのだろう。


 魔力さえあれば……しかしそう言うことなら……。


 と、腕を組んで首をひねりながらそこまで考えたことにより、頭の底で渦巻いていた何かが形になってきて、モヤモヤが晴れて……その思いつきを私はそのまま言葉にする。


「なぁ、サナト、以前見かけたトロッコだったか、あれをドラゴン素材で作ることは出来ないのか?

 あの手で漕いでいたレバーの辺りをドラゴン素材にして魔力で動かしたら……楽に走れるトロッコが出来そうなものなんだが、そういうのは作っていないのか?

 魔力なら……アレだろ、魔石さえあればなんとかなるものなんだろう? そうなると魔石さえあればどこまでも走ってくれるトロッコとか作れそうじゃないか?」


 するとサナトは大口を開けて唖然とした顔をする、ついでに後ろに控えていたチャイも似たような顔をする。


 ゴブリンの若者に跳ね橋の仕組みを説明していたらしく、地面に絵図を描くために持っていた木の枝をポトリと落とし……そのままの姿勢で硬直し、ガタガタと震えたりもする。


 顔色は悪く、汗も吹き出し……だけども何故か良い笑顔へと表情を変化させて、それからブツブツと言葉を吐き出し始める。


「そうだよ、そうすりゃ良かったんだ、なんで誰も思いつかなかったんだ、いや、動力と言えば燃やすもんだと思い込んでたのか、くそっ―――め。

 魔石炉と――の知識が逆に邪魔してたのか……いや、しかし他の武器には使ってたんだし、頭が硬すぎたな、すぐにでも思いつくべきだった。

 モンスターとの戦いに必死過ぎて武器以外の発想が出来なかったのかもしれねぇ……だって、お前、これが上手くいけば大陸横断だって夢じゃねぇぞ……―――のように」


 所々聞き取れないその声は、どこか弾んでいるようでもあり……どうしたのだろうか? と、心配をしていると、バッと顔を上げたサナトが大きな声を張り上げる。


「親父ィィィィ!!!」


 その声を受けてたまたま近くにいた村人達が目を丸くする中、声を聞きつけたらしい洞人族達やナルバントとオーミュンがやってきて……それを見たサナトが更に言葉を続ける。


「ドラゴンの腱! 手漕ぎトロッコォォォ!!」


 説明でもなんでもない単語の羅列、だけどもそれで通じてしまったらしい、ナルバントとオーミュンがまず頭を抱えて、その少し後に他の洞人族達も続く。


 それからまた全員でブツブツと言い始め……そんな様子を見てか、満足そうに頷いたサナトが、こちらへと視線を戻し声をかけてくる。


「おう! 流石領主様だ! こんな発想を与えてくれるとはな!

 安心してくれ! 橋もしっかりやっとくからよ! つーかこれを活かすためには尚の事しっかりとした橋が必要になるだろうから、両方同時に進めなきゃならねぇな!

 道! 橋! レール! とりあえずはここから両関所、大入江と鉱山を繋がねぇとな! その後はもっと先まで……隣領と隣国とも繋がれるかもしれねぇぞ!!」


 その言葉の意味はよく分からなかったが……とりあえず目的の橋が問題なく作れるようなら、それで良いかと頷いてみる。


 するとサナトは満足げに笑って……駆け出し、ナルバント達とあれこれ会話し始める。


「あー……騒がせてすまなかったな、改めてゆっくり休憩してくれ」


 と、ゴブリン族に声をかけると若者は、問題ないぞと尻尾を振ることで返してくれて……それからまた川の中を漂い始める。


 それを見送ったなら私は、踵を返してしゃがみ込んで先程からずっとクチバシを大きく開けたままのチャイに声をかける。


「チャイ、平気か? 凄い顔をしたままだが……」


 するとチャイは我に返ったのかクチバシを閉じてから、何故かもじもじとしながら言葉を返してくる。


「ディアス様の発想に驚かされましゅた。

 後から考えれば言われてみればその通りだと、自分でも気付けたはずだと思いましゅが……そこで気付けるか気付けないかが器の違いなんでしゅねぇ。

 ……そしてサナトさんのあのお言葉……これはエリーさんにはより一層頑張ってもらわないとでしゅね」


 少し成長し、少しだけ辿々しさが抜けたその言葉に私は首を傾げる。


 何故ここでエリーの話が? という私の顔を受けてチャイはにこりと笑い……そして終始黙って話を聞いていたゴルディアは、何か思うことでもあったのか、酒場の方へとドタドタと駆けていく。


 それを見送った私は……とりあえず元々の目的であった倉庫の掃除をしようかと、チャイ達を引き連れて倉庫へと足を向けるのだった。



――――一方その頃、獣人国で エリー



 獣人が統治し、亜人達も住まう獣人国のエリーの旅路は、予想していたよりも順調なものだった。


 外交のためにと作られた、立派な専用馬車に下げられたメーアバダルのバナーにはそれ程の効果はないものの、参議であるキコとヤテン・ライセイが送った家紋入りの旗が掲げられており……更には馬車の周囲をペイジン家の関係者の姿もあって、余計な騒動に巻き込まれることは皆無だった。


 参議両家とめざましい大躍進を見せる商家を敵に回して得することなど一切なく、恨みのある人間族なのだとしても友好関係を結んだ方が良いだろうと考える者は多く、むしろどうにか縁を結ぼうと挨拶に来る者ばかりといった状態だった。


 あまりにも挨拶に来る者が多いため、予定通りに進むことが出来ず……西の果てにあるという獣王の居城にたどり着くのはいつのことかと、関係者は頭を悩ませていたりもした。


 しかしそれも嬉しい悲鳴と言えて……今日もまた多くの来訪者がやってきていて、その一人一人の手を取り、挨拶を交わし、しっかりと顔を覚えていたエリーは……ふとした瞬間に寒気を覚えて背筋を震わせる。


(……何か今嫌な予感が?

 ……余計な仕事が増えそうな……今以上の嬉しい悲鳴を上げることになりそうな、変な予感が……。

 ……いえ、きっと気のせいね、気のせいだからさっさと進んで獣王様へのご挨拶を済ませてしまいましょう)


 尚も寒気を感じながらエリーは、そんな風に思考をまとめ上げ……それから続く挨拶を少しでも早く切り上げるために、出来るだけ早く、失礼にならないように気をつけながら挨拶を交わしていく。


 馬車を降りて握手をし挨拶を交わし……時に馬車の中に招き入れて馬車を進めながら言葉を交わし。


 そうやって順調な旅路を続けていったエリーだが、不思議と嫌な予感と寒気が消えることはなく、しばらくの間、頭を悩ませることになってしまうのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はエリーメインでのあれこれの予定です



そしてお知らせです

9月18日発売の書籍14巻の表紙が公開となりました!


挿絵(By みてみん)


アルハルとアルナーがメインの冬の一枚!!

サブタイトルは次代の旗手、セナイ達が大活躍する一冊となっております!

書店などで見かけた際にはぜひぜひチェックしてみてください!

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― 新着の感想 ―
動力といえば燃やす物、内燃か蒸気かはさておき そっちはそっちで突き詰めていけば、いずれドラゴンさん達が いなくなってもやっていけそうですね。 エリーさんは…帰ってくるまでも大変そうですが…帰ってきた…
動力エンジン作れたなら、あらゆる物に応用出来そうですね、個人的には、ドラゴン素材があるから、フラップターみたいな空飛ぶ装置作れたら良いなぁ、なお、魔石で代用可能になれば良いけど、魔力が足りなくなったら…
もうこれ、空は飛べないだけで、オーラバトラー(マギバトラー?)も作れるんじゃね(^_^;)? ディアスの何気突っ込みで、産業革命が起きそうな予感(^_^;)。
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