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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十七章 大きな変化

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外交官

登場人物ざっくり紹介


・エリー

 行商人、人間族、心は女性。自ら服などをデザインし売ることで成功し、商会を起こすまでに至ったが、全てを他人に譲ってメーアバダルに、以降は行商人、交渉役として活躍、人材が増えてきた最近は行商に集中していたため、領内には不在がち



 エグモルトがやってきた日から数日が経って……とりあえずイルク村は平和な日々を過ごしていた。


 平和と言っても何もなかった訳ではなく、まず白ギー2頭の出産があった。


 随分と出産が遅れていた2頭、その理由? なのかどうか分からないが、2頭が生んだ子はどちらも双子で……かなり危うい状態での出産となった。


 すぐさま安産絨毯を使うことになり、アルナー達が言うには安産絨毯がなければ死んでいたとのことだ。


 安産絨毯のおかげで無事だった4頭の子白ギーだが、メーアの六つ子達のように小柄で、長時間立つことが難しいようで、しばらくは様子を見守る必要があるだろう。


 そこら辺に関してはアイセター氏族が頑張ってくれるそうなので、任せたいと思う。


 そんな出産騒動があった中も、エグモルトは気にした様子もなくあっちこっちを駆け回ったり、時たま奇声を上げたりもしていて……まぁ、何か悪いことをしている訳ではないので、放っておいて良いのだろう。

 

 何かがあればダレル夫人が対応してくれるので問題なし……ダレル夫人でも手に負えない場合は、マヤ婆さんやピゲル爺さんが出てきてくれるので、尚の事問題なしだ。


 マヤ婆さんとピゲル爺さんには、流石のエグモルトでも頭が上がらないようで……面白いくらいに大人しくなり、言うことを聞いてくれている。


 もしあの2人がいなかったら? なんてことを考えたりもして……あの2人がいてくれて本当に良かったと思う。


 と、そんなことを考えながら村の見回りをしていると、鷹人族が2人、それぞれ違う方向からやってきて、私の周囲のユルトの屋根にとまり、声をかけてくる。


「メーアバダル公、東からエリー殿達が帰還してきますぞ」


「メーアバダル公、ゴブリン達がそろそろ到着するようです」


「ああ、連絡ありがとう……そういうことなら広場で到着を待たせてもらうよ」


 私がそう返すと2人はコクリと頷いてから飛び立ち……それぞれ東と南に私の言葉を伝えに行ってくれる。


 それから広場に移動して、しばらく待っていると……まずはエリーの行商団が広場へとやってくる。


 今回エリー達は、新しい馬車の試験運用をするために隣領へ向かっていた。


 その馬車というのが洞人族達が作った鉄馬車と呼ばれるもので……横長の箱のような馬車に、いくつもの鉄製の車輪がついているというものだ。


 鉄馬車を作った目的は、冷却ツボのおかげで分かった食品の需要を満たすため、冷却ツボよりも強い冷却力で隣領に新鮮な食料を運ぶためで……横長の箱の中には冬の間に溜め込んだ氷で作られた氷柱が何本か入れられていて、その冷たさでもって食料の鮮度を保つ仕組みになっている。


 箱の壁、床、屋根は木材やら鉄やらでメーア毛や白ギー毛を混ぜたものを挟むような形で作られていて、それが氷の冷たさを外に逃さないようになっているらしい。


 そんな箱の中に大きめの氷柱が3、4本あれば肉や魚、野菜や果物を数日保存出来るようで……それでもって隣領に食料を売りに行けるかという実験をしていたという訳だ。


 食料だけでなく氷そのものも運ぶことが出来て……夏になれば氷の販売もするつもりらしい。


 そんな風に中に色々と入った大きな馬車となると、車輪が木材では耐えられないとかで鉄製にされていて……鉄製の車輪の周囲には、鉄の摩耗を防ぐための防御材が貼り付けられていて、それを定期的に交換する必要があるそうだ。


 更に整備された街道以外での運用が出来ないとかで……色々と制限があるらしい。


 更に更に当然のように重くなる鉄馬車は普通の馬に引かせるのは難しいらしく、ハルジャ種専用となっていたりもする。


 ハルジャ種を4頭から8頭……その上で結構な回数の休憩がいるとかで、運用には色々と気をつけなければならないそうだ。


 そんな鉄馬車を使った行商の結果は……、


「成功も成功! 大成功!

 ゴブリンさん達が持ってきてくれる魚も鮮度抜群なものだから、あっという間に売れちゃったわよ!

 獣人さんは鼻が良いから少しでも悪くなっていると買ってくれないのだけど、全部が売り切れ!

 畑の野菜や、こっちで解体した黒ギー肉も問題なし! 何よりあっちの果物や野菜、お肉を大量に買い付けられるのが最高なのよ!

 特に今の時期に美味しい果物をいっぱい買ってきたから、皆で楽しめるわよ!」


 とのことで大成功だったようだ。


 特にリンゴ魚の人気は凄まじく、上質な牛肉よりも高くても売れたというのだからとんでもない。


 あちらは海が遠い上に、海との間に暑い砂漠があって、運ぼうにもそこで傷んでしまうため手に入らず……上質ともなればそういった値段になるそうだ。


 結果かなりの儲けになったようだが、こちらが儲けすぎても良くないというか、そこまで儲けるのが目的ではないので、儲けた分だけあちらで買い物をしてきたようで……鉄馬車の中にはたっぷりと新鮮な食材が入っているらしい。


 早速開けて確認……と、行きたい所だが、せっかく冷やしているものなんだからと、ここではなく地下貯蔵庫に運び込んでからの確認のほうが良いようだ。


 そういうことならと、運び込みの準備をしていると、ゴブリン達が南からゴブリン用の幌馬車でもってやってくる。


 その幌馬車は結構な距離を行き来することになるゴブリン達のために用意したもので、ゴブリン達の来訪を見回りの鷹人族が見つけた段階で派遣されるものとなっている。


 ゴブリン達とゴブリン達が持ってきた荷物を、トカゲ川水源の船着き場で回収し、イルク村まで運んでくるためのもので……今回はイービリスを始めとした4人が来てくれたようだ。


「メーアバダル公! 今日は嬉しい報告がある! あの入江は宝の山だな!」


 そんな幌馬車の荷台から御者台へと顔を出したイービリスが大きな声を張り上げていて……どうやらその手で何かを摘み持っているようだ。


「……なんだ? 何か新しい魚でもいたのかな?」


 その様子を見やりながらそんな声を上げていると、鉄馬車の車輪の様子を確かめていたエリーが顔を上げて視線をやって……そしていつにない真顔へと変化していく。


「あれはまさか……!」


 そしてこれまたいつにない力強い声を上げて……馬車が段々と近付いてきたことで、私にもそれが何かが分かる。


 と、言ってもその実物を見たのは何度もないというか、最近だと隣領に行った際にネハがつけていたアクセサリーの中で見ただけなのだけども……。


「えぇっとそれは確か……真珠か? 随分と大きいようだが……」


 私がそう呟くと、エリーが鼻息を荒くし、到着した馬車から飛び降りたイービリスが元気な声を張り上げる。


「うむ! 真珠だ! 大入江の海底のあちこちにいる貝が美味しくて、好んで食べていたのだが……ある場所の貝の中にやたらとこれがあってな、確か陸上では高く売れるのだろう?

 我らには不要なものだが、メーアバダル公の役に立つならと集めておいたぞ!」


 そう言ってから結構な大きさの革袋を持ち上げるイービリス。


 ……もしかしてあれの中いっぱいに真珠が入っているのか?


 と、そこにゴルディアとアルナーがやってきてそれぞれ声を上げてくる。


「おう、エリー帰ってきたか、そろそろギルドの連中が到着するから、そいつらを使っての長期行商計画を立てるぞ。

 隣領だけじゃなくて王国中に行商隊を出せるようにしないとな」


「え? 皆が来るの? もう来るの? そんな予定あった? 私初めて聞いたんだけど?」


 まずゴルディアの言葉にそう返すエリー。


「エリー、帰ってきたか、エリーのための正装を作っているから、あとで確認にきてくれ。

 私としてはちゃんと女物にしたかったんだが、ダレル夫人が言うには王国では女性が官職についた場合は、特に外国と関わる場合は、男物の正装を着るものらしいのでな……外交官として働いていく以上は、男物になるそうなんだ」


「待って待って、それも聞いてないんだけど、私が外交官になるの?

 いや、男物は全然良いんだけど……私だってちゃんとした場ではそのくらいは弁えるけども、え? 私なの? お父様??」


 アルナーの声にそう返しながらエリーはこちらへ視線を向けてきて、そう言えばまだ話してなかったなと、手を打った私はその辺りの事情を説明するため口を開く。


「ああ、そう言えばまだエリーには話してなかったか……獣人国との外交をモントだけに任せるのは不安だということで、エリーに頼もうかと考えていたんだが……そうか、もう正装を作っていたのか」


 そんな私の言葉にエリーが何かを返そうとするよりも早く、アルナーが楽しげに弾む声を上げる。


「心配するな、正装はダレル夫人に聞きながらちゃんと作っているからな、良い出来になっているぞ。

 それにエリーは顔も良いし体格も良いからな、ディアスよりも正装が似合うんじゃないか?

 正装だけじゃなくて洞人族に儀礼用の剣とやらも頼んであるから、後で確認しておくと良い。

 ……ん? それは真珠か? 確か獣人国ではかなり高値で取引されていたはずだから、外交ついでに持っていったらどうだ?」


「え、あ、うん、褒めてくれてありがと、アルナーちゃん。

 っていうか待って、外交官は正式決定なの!? いや、確かに他に適任いないから、やれと言われればやるけども!?」


 するとエリーはそんな悲鳴に近い声を上げて……それから落ち着くまでの間、右往左往としながらわたわたとし……エリーには珍しい混乱した姿を見せてくれるのだった。




 ・第十七章リザルト



【領民】672人 → 701人


 内訳


 エグモルト・ダレル 

 血無しの獣人達 28人


【メーア】48人で変化なし 


家畜【白ギー】 17頭 → 22頭

 出産で5頭


家畜【ガチョウ】140羽前後

 食事などで日々増減中


家畜【馬】56頭で変化なし

 軍馬とハルジャ種含む合計頭数


家畜【ロバ】8頭で変化なし


家畜【ヤギ】10頭で変化なし


家畜【ラクダ】3頭で変化なし


家畜【黒ニワトリ】200羽を手に入れた



施設【デーツ畑】が荒野に出来上がった


施設【薬草小屋】【ガラス張りの研究室】が出来上がった


施設【領主屋敷】が建設中だ


 

メーアバダル領に【名産品】の概念が定着しつつある。

名産品一覧


メーア布

メーア鋼

デーツソース

リンゴ魚

真珠



 ……夏が近付く中、様々な人物と出来事もメーアバダル領に近付いてきている。


 


お読みいただきありがとうございました。


次回からは新章突入です



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― 新着の感想 ―
ふと思ったんですが、エゼルバルトの奥さんメーアが妊娠した時もディアスのユルトに住んでいたんでしょうか? これからも増えたら妊娠するメーアがいっぱいでメァメァ賑やかでしょうねw
いつか来るだろうとは思ってたけど、ついに真珠が登場した。 伊勢志摩のミキモト真珠いったなぁ。切った真珠漬けを試食した記憶がある。御木本幸吉が、海外メディアを黙らせた、質の悪い養殖真珠をバケツ一杯入れて…
はっちゃけまくってるエグモルトも、師匠と(元)王様が出てきたら借りてきた猫みたいに大人しくなるしかないの、絵面を想像して笑っちゃうw それでもめげずに水を得た魚のようにはしゃいでメーアバダルの産業や研…
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