第14話 覚悟
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
ピアータは自室に入るなり薄墨色の礼装のまま寝台に倒れ込んだ。
「もう、嫌だ! もう、私は二度とやらんぞ、デメトリア!」
寝台にうつぶせになったままピアータは、駄々をこねる子供のように両手足をジタバタと動かした。彼女の後について部屋に入ってきたデメトリアは盛大にため息をつく。
「せっかくの礼装が台無しです。せめてお着替えください」
そうたしなめるデメトリアだったが、その口調は優しかった。
王宮で兄王子たちを前に涙ながらにエルドア国への征西を訴えたピアータだが、それだけで終わらなかった。その後すぐに重臣諸侯らがピアータを取り囲んだのだ。彼らは口々にピアータの苦衷を察すると言い、また亡き父王への忠孝を褒めそやした。そして、是非とも詳しい話を聞かせていただきたいと自分の屋敷へ招待したのである。
そんな重臣諸侯らの下心は見え透いていた。
これまで国の祝典でさえ男装を貫いてきたピアータがついに年頃の姫らしく礼装をまとって現れたのだ。
さすがに父王が亡くなり、勝ち気な姫も弱気になったのだろう。
そう思った重臣諸侯らの中でもピアータと釣り合う年頃の子息を持つ者たちが「これぞ好機」と考えたのも無理はない。亡きドルデア王の思い出を語りたいとピアータを屋敷に招き、自分らの子息と見合わせようとしたのも当然であった。
「よくぞ我慢されましたね、姫殿下」
デメトリアが知る普段のピアータならば、模擬剣を片手に「私の伴侶に相応しいか試させてもらう」と笑顔で追い払うところだ。だが、今日ばかりはそうも行かない。せっかく征西へと焚きつけた重臣諸侯の機嫌を損ねないように、ことさら父王の死に心を痛める姫の演技を続けてやんわりと招待を断らねばならなかったのだ。
「くそっ! 連中の顔は覚えたからな! この私の伴侶に推したのだ。後であいつらの馬鹿息子どもにその資格があるか、試してやるぞ!」
ギリギリと歯ぎしりをするピアータの様子に、デメトリアが顔も知らない重臣諸侯らの子息らに同情を覚えていると兵舎の従僕が来客を報せに来た。
「私の家からの使いの者だと?」
従僕から耳打ちされたデメトリアは訝しげな顔を作る。
「申し訳ありません、姫殿下。少しこの場を離れます」
ピアータに断りを入れてから退室したデメトリアだったが、すぐに部屋に駆け戻ってきた。
「デメトリアか? いったい、どうした?」
寝台にうつぶせになったまま尋ねるピアータに、血相を変えてデメトリアは叫ぶ。
「姫殿下! 急ぎ、おいでください!」
◆◇◆◇◆
デメトリアに案内され、ローガ家の使いの者を待たせてあるという部屋に飛び込んだピアータは、こちらに背を向けて立っていた使者の後ろ姿に固まってしまった。
咽喉を鳴らして唾を飲み込むピアータが凝視する中で、ローガ家の使いの者を名乗る男がゆっくりと振り返る。
「急に押しかけてすまなかったな、ピアータ」
男の言葉に、ピアータは絞り出すような声を出す。
「ゴルディア兄上」
ローガ家の使いの者に扮し、地味な服に身を包んでいるが、それは間違いなくピアータの兄、第一王位継承権者であるゴルディアだった。
「おまえと余人を交えずに、ひそかに語り合いたいと思ってな。妻の実家に無理を頼んで、こうして使者に扮してやってきたというわけだ」
ピアータを心配してついてきたデメトリアだったが、ゴルディアの言葉に何も言わずに部屋を出る。ゴルディアとともに残されたピアータは、気まずげにゴルディアから視線を逸らした。年の離れた勝ち気な妹には珍しいその殊勝な態度に、ゴルディアは小さく笑みを浮かべる。
「怒りにきたのではない。そう固くなるな」
そうは言われてもピアータの顔は晴れない。
何しろ、つい先程の自分の言動によってパルティスばかりか国の重臣諸侯までもをエルドア国征伐へと傾かせたのである。しかし、それは「まずは国内の安定と統一こそが大事」としていたゴルディアの意図に背くことだった。
「ですが、兄上。私も考えあってのこと――」
ピアータの弁解の言葉に被せるようにゴルディアは言う。
「言わなくても良い。おまえの考えはわかっている」
そして、ゴルディアは次の言葉を単語ひとつひとつ区切るように明確に口にした。
「破壊の御子であろう」
正鵠を射られ、ピアータは言葉を失った。
そんなピアータにゴルディアは、ふっと笑みを洩らす。
「私とて、破壊の御子の脅威は知っている。もっとも、私の場合はエルドア国の急激な発展の方に危機感を覚えているのだがな」
ゴルディアが警戒しているのは、破壊の御子個人と言うより発展を続けるエルドア国であった。
今なお急激に伸び続けるソルビアント平原の穀物の収穫量。さらにその増収は、元ホルメア国だった地域へと波及している。そればかりか王子である自分ですらこれまで見たこともなかった珍奇な品を続々と生み出し、さらに最近では既存の品質がゴミにすら思えるほどの高品質のガラスと布の大量生産にまで成功したという。
そして、それらが生み出すのは言うまでもなく莫大な富だ。
「遠からず、エルドア国の国力は我が国を圧倒するであろう」
それが、この三年の間にエルドア国を調査したゴルディアの結論であった。
「そして、その国力に支えられる兵力もまた然り」
ゴルディアが調べたところ、エルドア国では急激な軍の強化は行ってはいなかった。それは、破壊の御子が農民の徴兵を嫌い、兵農分離を押し進めているためである。あくまで志願者のみを兵として採用しているため、開拓村や各地の工房で労働力が求められる現状ではそちらに人を取られてしまい、兵に志願する者が少ないからだ。
しかし、それでも急激な人口増加が起きているエルドア国である。ジワジワと、その兵の数も増え続けていた。
それでも当面は、エルドア国からの侵略の懸念はない。
それは破壊の御子に他国を侵略する意志がないからだ。その破壊の御子がエルドア国の玉座にいる限りは、エルドア国の侵略はないと思って良い。
だが、とゴルディアは思う。
「今は良い。今は、だ。――しかし、将来はどうだ?」
破壊の御子の後継者が同じ意志とは限らない。いや、破壊の御子だとて人だ。人が何かをきっかけに、それまでの主義主張を翻すことなど珍しくもない。
そうして破壊の御子とエルドア国が西域統一の野望に目覚めたとき、そこにあるのはロマニア国など及びもつかないほど成長した超大国である。その前ではロマニア国など、刃向うこともできず、ただ平伏して慈悲を乞わねばならなくなってしまうだろう。
ゴルディアは拳に力を込める。
「今はまだ両国に大きな差はない。しかし、時を置けば置くほどに、その差は広がっていこう。ならば、今やるしかないのだ! エルドアを滅ぼし、破壊の御子を打ち倒すのは今やらねばならぬのだ! いかなる手段を使おうとも、破壊の御子を打ち倒さねばならん! そうでなければ我らの子や孫たちがエルドア国の奴隷ともなりかねん!」
ゴルディアの血を吐くような言葉に、しかしピアータは素朴な疑問を覚える。
「そうまで思われているのでしたならば、なぜそうせぬのですか?」
ゴルディアが明確にエルドア国を敵視し、それを打ち倒さなくてはいけないと決断しているのは理解できた。だが、これまでのゴルディアの言動や施策を見れば、むしろエルドア国との対決を避けようとしているようである。
そのおかげで武闘派と呼ばれる将軍諸侯から批判を受けさえしていたのだ。素直にエルドア国へ敵対する姿勢を見せていれば、そのような無用な批判を受けずにすんだのではと思う。
言葉と行動とに矛盾を感じたピアータの指摘にゴルディアは力ない笑みを浮かべて見せる。
「私には、エルドア国を打ち倒す光景を思い浮かべられなかったのだ」
怪訝な表情を浮かべるピアータから視線をはずしたゴルディアは、その目を宙へと向ける。ゴルディアは、そこに何を見出しているのだろうか。ピアータはゴルディアの目に、敬愛や嫉妬や屈辱といった様々な感情が複雑に入り混じっているように見えた。
しばし躊躇してから、ゴルディアは絞り出すような声で言う。
「破壊の御子のところには、この私が何人も束になってかかっても勝てぬ者がいる」
ゴルディアの発言に、ピアータは驚いた。
父王におもねりすぎて決断に欠けるところはあったとしても、ゴルディアの内政における手腕は見事なものだ。父王が倒れて三年の間に、ロマニア国内に大きな混乱が起きなかったのは、ひとえにこの兄王子の手腕があればこそと言っても過言ではなかった。
そのゴルディアをして、自身が何人束になってかかっても勝てないと言わしめさせるような者がいるとは、にわかには信じられない。
しかし、すぐにピアータは心当たりがついた。
「それは、アウレリウスという者でしょうか……?」
ピアータの問いに、ゴルディアは言葉では答えなかった。だが、その瞳がわずか揺れたのに、ピアータは「やはり」と思う。
エルドア国でソロンと名乗る老人が、かつて父王の親友でありながら無謀な征西を諫めたが故に国を出奔した希代の天才アウレリウスであることは、すでにピアータも知っていた。
王都ホルメニアでの一件以降、ピアータは個人的にアウレリウスについて調べていたのだが、アウレリウスのことを知れば知るほど唖然としたものである。とにかくやることなすこと破天荒そのもの。しかし、それでいてきちんと結果を出しているのだ。祖父にあたる前王ナバスが「御しがたい」と評しながらも、その才を愛したというのも無理はないと思った。
だが、それでも政務の手腕においてはロマニア国に並ぶ者はいないと思っていた兄王子ゴルディアをして、自身が何人も束になっても敵わぬと言わしめさせるとは予想を超えるものだ。
驚愕するピアータを前に、ゴルディアは自嘲を浮かべる。
「先日、我が国を訪れたアウレリウスを私は亡き者にしようとした」
ゴルディアの告白に、ピアータは目を見張った。
ふたりの関係を知る者たちは、ゴルディアはアウレリウスを実の父であるドルデア王よりも慕っていたと口を揃えたように言っていた。また、これまでもアウレリウスのことを口にするゴルディアの声は、深い敬愛の念を感じさせるものだったからだ。
それに公には、ゴルディアはアウレリウスを討つべしと声を上げていた武闘派の将軍諸侯を抑えに回っていたのである。それが裏ではアウレリウス暗殺を目論んでいたというのだから驚きだ。
「政の手腕で敵わぬのならば、剣に訴えるのは当然であろう?」
確かにゴルディアの言うとおりであった。だが、常に人を活かそうとするこれまでのゴルディアの姿勢からは考えられない決断に、ピアータは即答できなかった。
返答に詰まるピアータを前に、ゴルディアはギリッと歯を強く噛み締める。
「しかし、それすらも見事にかわされたのだ」
ゴルディアの力いっぱい握り締められた拳がぶるぶると震えていた。
「私が私と国の名誉を損なう覚悟をもって斬りかかったというのに、それすらアウレリウスには華麗にかわされてしまったのだっ!!」
ゴルディアの声は屈辱に濡れていた。しかし、それは力が及ばずことがならなかったからではない。それすらも当然と思ってしまう自分に対してのものだった。
「私は、アウレリウスに勝つことはできぬのだ……!」
兄の悲痛な告白に、ピアータはかける言葉を見つけられず、沈黙するしかなかった。
しばし、重苦しい沈黙がその場を支配する。
その沈黙にピアータが耐えられなくなって来た頃、ゴルディアははかない笑みを浮かべて顔を上げて言う。
「だが、そんなときにおまえが動いてくれた」
言葉の意味が理解できずに困惑するピアータに、ゴルディアは過去を振り返りながら説明する。
「かつて、私はダライオスと語り合ったことがあるのだ」
父王ドルデアが昏睡したまま亡くなる恐れが高かったため、ゴルディアとて父の死後のロマニア国の行く末を憂いていた。
統治の面ではゴルディアも心配していなかった。ゴルディアも自身の能力を十分に理解している。うぬぼれではなく、自分の手腕をもってすればロマニア国を安定して統治することは難しくないだろうと思っていた。
しかし、問題は軍事の面である。
ゴルディアは先の征西において、自身に軍事的な才能が欠如していることを痛感していた。
今は自身の後見人であるダライオス大将軍がいるので、何の心配もない。しかし、無敵を誇るダライオスとて人間である。あのような無茶な戦い方を続けていれば、いつかは誰かに倒されてしまうだろう。そうでなくとも、ダライオスとて良い歳である。本来ならば、とっくに後進に道を譲っていてもおかしくはない年齢なのだ。
もし、ダライオスがいなくなった後にエルドア国が侵略してきた場合、どうすれば良いかと相談を持ちかけると、ダライオスはまずゴルディアに頭を下げた。
「殿下には誠に申し訳ないことをいたしました」
宿敵ダリウスを打倒するため、ダライオスは自身の剛勇を埒外のものにまで高め、それをもってロマニア国の大将軍となるしかなかった。それについては後悔はしていない。とうていまともな手段ではあのダリウスに勝てるはずがなかったからだ。
しかし、それは弊害をも生んでしまった。
ダライオスは、ロマニア国全軍の憧れを集める大将軍である。その憧憬 (しょうけい)の対象でもあるダライオスが埒外の剛勇を誇る大英雄であったがために、ロマニア国軍には個人の武勇を偏重し、知略を姑息な手段と軽視する気風が生まれてしまっていたのだ。
そうした猪武者たちも彼らに慕われるパルティスを大将軍に据えれば問題なく御せるであろう。
このダライオスの提案は、ゴルディアも考えていたものだ。
やはりそれが最適かと納得しかけたゴルディアだったが、ダライオスはさらに続けた。
「普通ならば、それで十分でございましょう。しかし、敵をエルドア国と考えた場合となると――」
ダライオスはここでわずかに言い澱んだ。
「パルティス殿下はあまりに素直すぎます。ダリウスすらも手玉に取った策士である破壊の御子とは、あまりにも相性が悪い」
では、どうすれば良いのかとゴルディアが尋ねると、ダライオスは顔をしかめてしばらく黙り込んでしまった。それから、さんざん迷いに迷った挙げ句、ようやくダライオスは重い口を開いた。
「もし、本当に国が危急存亡の危機に直面するような恐れがあり、もはや体面などにこだわる余裕すらなくなったときにのみではありますが」
即断即決を好むダライオスらしからぬ持って回った前置きをしてから、ゴルディアに次のように告げたのだった。
「ピアータ。おまえに助言を求めよ、と」
ゴルディアの言葉に、ピアータは驚いた。
「わ、わたしにでございますか?」
目をパチクリとさせて驚くピアータに、ゴルディアはしっかりとうなずいて見せる。
「そうだ。ダライオスは、この国に破壊の御子を討てる者がいるとすれば、それはおまえをおいて他にはいないと断言した」
兄上は冗談がお下手だ、と笑おうとしたピアータだったが、ゴルディアの真剣な眼差しを前に、その言葉を飲み込むしかなかった。
「そして、父上も亡くなり、ダライオスもまた倒れたこのとき、おまえが破壊の御子を討たねばならぬと決断したのならば、私はおまえを支えるのが役目であろう」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい、兄上!」
たまらずピアータは悲鳴のような声を上げる。
「まさか、私を大将軍にでもされるおつもりですか?!」
「さすがに、それは無理だ」
ゴルディアは小さく笑った。
「無理矢理おまえを大将軍にねじこんでも、将兵らはついて来るまい。将兵らの統率はパルティスに任せる。おまえは補佐としてパルティスを助けよ」
「パルティス兄上の補佐と言われても……」
ピアータは困惑した。
パルティス王子の周りは、すでに彼を支持するパルティス派とも言うべき武闘派の将軍諸侯で固められている。そこに今さら自分が分け入ったとしても決して良い顔はされないだろう。ましてや自分の意見など聞き入れてくれようはずもない。
「それは承知している」
そう言ったゴルディアは懐から丸めた羊皮紙を一巻取り出すと、それをピアータに渡す。
「それを条件とし、パルティスと派閥の者たちに協力を求めるとともにおまえを側近としてねじ込ませる」
パルティスを王位につけようとしている武闘派の将軍諸侯たちは、内心ではゴルディアを敵対視している。そんな武闘派の将軍諸侯らを納得させるとは、兄がどれほどの条件を提示するのかとピアータは固唾を飲みながら羊皮紙を開いた。
そして、ピアータは我が目を疑った。
しかし、いくら目を瞬いても羊皮紙に書かれた文章は変わらない。何度読み直しても内容を読み違えているわけでもなかった。
「兄上! これは、正気ですか?!」
確かに、そこに書かれていることを伝えればパルティスの支持者たちも協力を惜しまない――いや、それどころか率先して協力するだろう。
そして、それだけのものを持ち込んだとあれば、パルティスの派閥に属する将軍諸侯たちもピアータをおろそかにはできない。パルティスの派閥の中でもピアータの発言力はいやが上にも増すだろう。
それだけ重大な内容だ。
「言ったであろう、ピアータ」
ゴルディアは固い決意とともに告げる。
「私はいかなる手を使っても破壊の御子を打ち倒す覚悟だ」
◆◇◆◇◆
これより、ひと月ほど後。
座る者がいなくなった玉座を前にして、ゴルディア王子とパルティス王子はエルドア国征西を巡って激しく衝突した。
亡父の仇を討つべしとエルドア国征西を訴えるパルティスに、今はまだ国内の安定に尽くすべしと説くゴルディア。
これまでも繰り返されてきたふたりの王子の論争は、このときも最後まで折り合うことなく、ついには決裂した。
パルティス王子はその日のうちに手勢を率いて王都を飛び出すと、「亡き父に報恩の意志があれば、私の旗の下に集うべし」と国中に檄を飛ばしたのだ。
これに武闘派と呼ばれる将軍諸侯らは喝采を挙げると、続々とパルティス王子の旗の下へと兵を引き連れて参集したのである。
この弟王子の暴挙にゴルディア王子は使者を遣わし、征西を思いとどまるようにと再三再四にわたって説得を試みた。
ところが、パルティスはそのすべてを拒絶した。ついには送られた使者とも会おうとはせず、持参したゴルディアの書簡もまたその場で突き返したのである。
すなわち、もはやゴルディアの意見は一切受け入れる気はないと示したのだ。
ここに至っては、もはややむを得まいとゴルディアも決断する。
第一王位継承者としてゴルディアは、パルティスの行動を国を乱すものであると糾弾した。そして、集めた兵を速やかに解散させ、一切の武具を身につけず、また従者ひとりもともなわずに王都へ弁明と謝罪に来るようにパルティスに申しつけたのである。
このパルティスへの命令は、もはや罪人に対する扱いであった。
当然、これにパルティスの下へ参集した将軍諸侯らは激怒する。彼らはゴルディアこそがロマニア国を乱す当人と痛罵した。そればかりかゴルディアへ速やかに王位継承権を放棄してパルティスへ国を譲るようにとまで言い放ったのだ。
これに、ゴルディアもついに激怒した。
ゴルディアも自身に味方する将軍諸侯らに檄を飛ばし、パルティス討伐の兵を集め始めたのである。
また、パルティス側も傍観してはいなかった。征西の旗をゴルディア討伐の旗へと塗り替えると、将軍諸侯らにさらなる参集を呼びかけたのである。
こうしてロマニア国では、ゴルディア王子とパルティス王子との王位を巡る骨肉の争いが始まろうとしていた。




