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第43話:知恵の迷宮と空の戦い

数千年の時を超え、再び大空へと舞い上がった飛空艇「ホープウィング号」は、眼下に広がる滅びの都を越え、巨大な地の裂け目を悠々と通過していった。

やがて、私たちの視界の先に、天を突くように聳え立つ、いくつもの巨大な塔の集合体が見えてきた。あれが、第二のレガリアが眠るという、「大図書館アルケイア」に違いない。


だが、私たちが図書館に接近するにつれて、その周囲の空域が、極めて危険な場所であることが判明した。


「イザベラ! なんだか、虫みたいなのがいっぱい飛んでくるぞ!」


アレンが叫ぶ。その視線の先には、ハチのように空中を飛び交う、無数の小型の機械――自律型の迎撃ドローンが、こちらを侵入者と認識し、一斉に向かってくるところだった。

それだけではない。図書館の塔のあちこちから、砲門のようなものが姿を現し、強力な対空魔術の光弾を、雨あられと放ち始めた。


「上等ですわ! この古代文明の叡智に、わたくしたちの力がどこまで通用するか、試させてもらいましょう!」


私は、ホープウィング号の操縦桿を強く握りしめた。避けられない空中戦の始まりだ。


「レオナルド! 船の防御障壁を! アレン、あなたは甲板に出て、飛んでくるものを片っ端から撃ち落としなさい!」


「お任せを!」とレオナルドが船全体に神聖な結界を張り、船体の損傷を防ぐ。

アレンは、身軽に甲板へと飛び出すと、飛来するドローンや魔術弾を、まるで的当てゲームでもするかのように、大剣で次々と弾き返し、撃ち落としていく。「力のレガリア」を手に入れたことで、彼の動体視力と反射神経は、もはや神業の域に達していた。


だが、敵の数はあまりに多い。私は、敵の攻撃の合間を縫うように、巧みに船体を傾け、危険な弾道を回避していく。冷静に、敵の攻撃パターンと、防御システムの僅かな隙間を分析する。


「アレン! 右舷前方、3時の方向! 次の斉射の後、5秒間、防御が手薄になるわ!」


私の指示に、アレンが完璧に応える。その圧倒的なコンビネーションで、私たちは、弾幕の嵐を切り抜け、大図書館の懐へと、少しずつ近づいていった。


「あそこよ!」


私は、図書館の中腹にある、崩れかけたテラスのような場所を発見した。あそこが、唯一の着陸可能なポイントだ。

私は、ホープウィング号を急降下させ、そのテラスへの強行着陸を試みた。


「アレン、衝撃に備えて!」


着陸の瞬間、アレンが甲板から飛び降り、船の底をその両腕で受け止める。彼の超人的な力が、クッションの役割を果たし、ホープウィング号は、多少の衝撃はあったものの、無事に、その翼を休めることができた。


私たちは、息つく間もなく、大図書館アルケイアの内部へと侵入した。

そこは、エルドリアの禁書庫など、比較にならないほど広大な、知の迷宮だった。天井が見えないほど高い書架が、どこまでも林立し、数億、数兆とも思えるほどの書物が、静かに眠っている。


だが、ここもまた、魔王の残滓に深く汚染されていた。

ひとりでにページがめくれる本、空中を不気味に飛び交う巻物。そして、書物に込められた物語や知識が、悪意ある幻影となって、私たちに襲いかかってきたのだ。

騎士の物語からは、恨みを抱いた亡霊騎士が。悲恋の物語からは、涙を流しながら呪いを振りまく、姫君の霊が。


「面白くなってきましたわね」


私は、その光景を前に、不敵に微笑んだ。


「力のレガリアは、アレンの力を試した。ならば、この『知恵のレガリア』は、わたくしの知性を試そうというわけですか」


私たちは、レガリアが眠るという、最上階の「真理の間」を目指した。そのためには、この知の迷宮に仕掛けられた、数々の謎を解き明かさなければならない。


やがて、私たちの目の前に、最初の試練が立ちはだかった。

行き止まりの壁。そこには、一見すると、何の意味もなさない、古代文字の羅列が、ただ、無秩序に刻まれているだけだった。


「暗号……ですわね」


アレンとレオナルドが首をひねる中、私は、その壁の前に立ち、ゆっくりと、その古代文字の配列を読み解き始めた。

私の知恵が、数千年の時を超えた、古代文明の叡智に挑戦する、その最初の瞬間だった。

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