追放少女と武器
「よし、次は装備を整えようか」
訓練を終えた凪咲は、ミナを連れて武具屋に向かった。
ダンジョンに潜るには、最低限の武器と防具が必要だ。
ミナの戦闘力が心もとない今、装備で少しでもカバーしておきたい。
そんな思いだった。
「わあ、キラキラ!」
武具屋の中に入るなり、ミナは剣や鎧に目を輝かせた。
だが、いざ手に取らせようとすると――
「……ううっ……おもい……」
小柄な人間形態のミナには、剣どころか軽装用の胸当てすらまともに持てなかった。
顔を真っ赤にして必死に持ち上げようとするが、ぷるぷる震えてすぐに床に落としてしまう。
「……無理だね」
苦笑するしかなかった。
スライムの特性なのか、どうも重いものを保持するのが根本的に苦手らしい。
流石にこの様子で鎧や大剣を持たせるのは無理だ。
結局、ミナには軽い布製の冒険者服と、護身用の短剣だけを持たせることにした。
短剣も実際に振ってもらったところ、なんとか「ふりゃっ」と形だけは振れるレベルだった。
(まあ、盗賊とかスカウト職ならこの程度の装備も珍しくないし……ダンジョンでも不自然には見えないはず)
(それにヘソクリももう尽きちゃったしね)
凪咲は自分に言い聞かせるようにうなずいた。
装備選びに少し疲れた二人は、町角のカフェに立ち寄った。
テーブルに運ばれてきたのは、焼きたてのワッフルとたっぷりのクリーム。
「わあああ……!」
ミナの目が再びきらきらと輝く。
「食べていいよ。」
「ほんとにっ!?」
遠慮なく手で掴み、大きな口でぱくり。
ミナは目を閉じて、うっとりとした表情を浮かべた。
「しあわせ……!」
そんなミナの顔を見て、凪咲も自然と笑みがこぼれる。
甘いものを頬張りながら、二人は顔を見合わせた。
「明日、いよいよダンジョンだけど、本当にいいの?」
ミナの目的は「人間になりたい」である。
そしてそれは既に達成しているように感じる。
わざわざダンジョンに連れて行くのは少し気が引けてきた。
「うん!お姉ちゃんの為にがんばる!」
「……そっか、判った」
目の前で嬉しそうに頷く"妹"を見て、凪咲は心に静かな決意を固めた。
どんなに小さな力でも。
どんなに心細くても。
二人でなら、きっと乗り越えられる。
そんな気がしていた。




