表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

追放少女と絶命者

ミミズたちの卵をすべて斬り捨てた後も、凪咲とミナの進撃は止まらなかった。


行く手を阻む魔物は、ただの一太刀で地に伏した。

剣の振りは鋭く、刃の軌跡を目で追うことすら困難だった。

ミナもまた、凪咲の身体を覆い、飛来する毒針や牙の大半を防いでいた。

多数のモンスターにか囲まれ小さな傷を負うこともあったが、多少の傷であれば手持ちのポーションで治療できる。

ふたりの呼吸は完全に揃い、まるで一つの生き物のようにダンジョンを進む。


そんな中。


「ミナ、あれ」


凪咲が指さした先、

湿った石床に、赤黒く染まった血痕が点々と続いていた。


ミナはふにゅりと身体を伸ばし、匂いを嗅ぐ。


「……しってるひとの、におい」


迷わず、凪咲たちは血の跡を追った。

やがて辿り着いたのは、崩れかけた小さな広間だった。


そこには、モンスターたちの死骸が無惨に散乱していた。

一体一体、手練れの技で倒されている。


そしてその片隅に。

まるで眠るように寄り添って、二人の少女が倒れていた。


細い身体を血と泥に汚しながらも、顔だけは不思議なほど綺麗なままだった。

凪咲は彼女たちに見覚えがあった。


双子の精鋭冒険者。

リィナとリセだ。

何度か街で、そして訓練場で姿を見たことがある。


(戦ったんだ……最後まで、ここで)


ふたりはきっと、背中を預け合い、命の限り戦い抜き、

そして、共に息絶えたのだ。


凪咲は無言で膝をついた。


「おねえちゃん……?」


ミナが心配そうに寄ってくる。


(……弔ってあげたいけど……今は)


今は、時間がない。

立ち止まっている間にも、地上の街は危機に瀕しているかもしれない。


それでも。

放っていくことなど、できなかった。


凪咲は鞄の中から、一本だけ持っていた魔物避けの光石を取り出した。

ほのかに温かい、微かな光を放つ石。

これを置いておけば、低ランクの魔物はここに近づかない。

せめて、死体が穢されることだけは防げる。


「……少しでも、安らかに」


そう呟き、光石をそっと双子の少女たちの前に置いた。

ミナは、不思議そうに光石を見つめている。


「これでね……守れるんだよ、あの子たちを」


凪咲はミナの頭を撫でた。

何も知らない、何も汚れていないミナに、すべてを背負わせたくはなかった。


立ち上がる。

まだ、歩かなくてはならない。

このモンスターたちの狂乱を、止めるために。


「行こう、ミナ。」


「うん、おねえちゃん!」


ふたりはまた、闇の奥へと歩き出した。

静かに、けれど確かに。

光石の温かな輝きが、背中を見送っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ