追放少女と追放者
ダンジョン内部。
精鋭と呼ばれる冒険者たちが次々と潜入し、地上へ溢れ出ようとするモンスターたちの勢いを削ごうとしていた。
その中にはアレンの姿もあった。
胸に去来するのは、かつて共に在った少女――凪咲への複雑な感情。
(あいつは、手を抜いていた)
あの頃、パーティーにいた凪咲の動きは、明らかに本気ではなかった。
だからアレンは、彼女を追い出した。
戦場では、連携の乱れが命取りになる。
一人でも自分の命を懸けられない者がいれば、全員の死を招く。
それがわかっていたから。
だが。
(あの一撃……ドラゴンを屠った、あの斬撃は……)
目に焼き付いて離れない。
力が違いすぎる。
あれはもはや、戦技ではない。
王国が禁忌として封じた「攻撃魔法」のような。
圧倒的な破壊の化身だった。
魔王亡き今、強力な攻撃魔法は存在そのものが封じられている。
許されるのは補助魔法、生活魔法程度。
それだけ、人間の手に余る力なのだ。
(あいつは、恐ろしい)
アレンは素直にそう思った。
認めたくはなかったが、あの力を見た今、無視はできない。
だが、それでも。
(俺たちは違う)
アレンは剣を強く握り締めた。
目の前には、数体のゴーレム。
無骨な巨体が地響きを立てながら迫る。
「足を狙え!動きを止めろ!」
瞬時に指示を飛ばし、仲間たちが左右に展開する。
打撃役の戦士たちが前衛で押し込み、
後衛の魔導士たちが足元に向けて弱体化魔法を放つ。
一撃一撃は地味だが、確実にゴーレムの動きを鈍らせる。
(リアがいれば、もっと楽だったか)
昨日、自分たちのもとを去った弓使い――リア。
彼女の抜けた穴は、確実に痛手だった。
その事実もまた、アレンの胸を苛立たせる。
だが、仲間たちは歯を食いしばって戦っていた。
誰一人、文句も言わずに。
「頭の刻印を壊せ!」
ゴーレムの片足を叩き折った瞬間、アレンが叫ぶ。
前衛の戦士が跳びかかり、剣を振り下ろす。
甲高い金属音とともに、ゴーレムの魔力核が粉砕された。
石の巨体が崩れ落ちる。
「次、来るぞ!」
仲間たちがすぐに陣形を立て直す。
その瞬間、ダンジョンの奥から、轟音が響いた。
(……崩落か?)
一瞬思考を巡らせたが、すぐに振り払った。
構ってはいられない。
目の前には、次のモンスターたちの影が現れている。
雑魚ではない。
獣型、虫型、異形の魔物たちが、闇の中から押し寄せようとしている。
アレンは剣を振り上げた。
(俺たちは、異様な力になど頼らない)
異能を持たずとも。
攻撃魔法にすがらずとも。
仲間を信じ、連携し、叩き伏せる。
それが、俺たち冒険者の――矜持だ。
「全員、気を引き締めろ! 次はこっちから攻める!」
闘志を燃やし、アレンは仲間たちに指示を飛ばす。
折れない。
この程度で、屈しはしない。
たとえ異形が迫ろうとも。
人間の意地を、ここに示してみせる。




