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追放少女と帰還

ドラゴンの死骸を背に、凪咲はミナと共に動けない冒険者たちへと向かった。


「放ってはおけないよね」


そう呟きながら、傷ついた仲間たちに携帯用の治療薬を施す。

火傷や打撲、裂傷。

応急手当しかできないが、これで命を落とすことはないだろう。


アレンは、相変わらず何も言わず、ただ静かに地面を見つめていた。

その顔に怒りはない。

かといって感謝の色もない。

ただ、沈黙だけが彼を包んでいた。


そんな中、唯一まともに話せそうな少女が声をかけてきた。

かつて同じパーティーだった、弓使いの少女――リアだった。


「……ありがとう、助かったよ」


リアは深々と頭を下げた。

凪咲は首を横に振る。


「ここに来たのは偶然だけど……それでも見捨てたくなかったから」


リアは小さく笑った。


「うん、そういうところ、変わってないね」


リーダーであるアレンが無言を貫いている為、リアと今後の方針を話し合う。


「私たちはもう帰還するよ、今の状態じゃこれ以上戦えない」


凪咲もうなずく。

それは当然の判断だった。


「でも、帰り道がわからないと困るでしょ?」


リアが肩をすくめた。


「私たちは、来た道を覚えてるから」


「ほ、ほんと!?」


凪咲の反応にリアはクスリと笑った。


「私たちを助けたことを公言しない、それを守るなら、街への安全な帰還ルートを教えてあげるわ」


最初から言いふらす考えなど持っていなかった凪咲は迷わず了承した。

重要なのは彼らが生き延びること、それだけだった。


帰り道の案内はスムーズだった。

リアが手早くルートを指示し、凪咲はそれに従いモンスターを倒す。


リーダー、アレンは最後まで無言だった。

ただ背を向けて、誰よりも早く出口へと向かった。


そんな彼を見て、ミナはぷくぷくと怒りを膨らませる。


「おねえちゃん、あんなの、ぜったいおかしいよ! ありがとうっていわないなんて!」


「……いいの」


凪咲はミナの頭を撫でてなだめた。


「私たちは、自分で決めたから助けたんだ。それだけだよ」


ミナはぶうぶう言いながらも、結局は凪咲に従った。


街に戻ったふたりは、冒険者ギルドに大量の素材と財宝を持ち込んだ。

ドラゴンの鱗、爪、心臓。

加えて、宝物庫から回収した金貨や魔道具の数々。


査定結果を聞いた凪咲は、顔を引きつらせた。


「え、ええええええええっ!!?」


普段は滅多に感情を表に出さない凪咲が、思わず叫んでしまうほどの金額だった。

想像を遥かに超える、莫大な資金。


隣でミナはきょとんとしている。


「おねえちゃん、そんなにすごいの?」


「すごいどころじゃないよ……!」


凪咲は思わず額を押さえた。

これだけあれば、しばらく何も困らない。

いや、それどころか、きちんと装備を整え、新しい拠点を持つことすらできる。


(……でも、私たちの冒険は、まだこれからだ)


凪咲はミナの手を取り、そっと握りしめた。


「ミナ、これからも、一緒に頑張ろうね」


「うん、お姉ちゃん!」


こうして、ふたりの旅は新たな一歩を踏み出す。


ミナという名のスライムと、居合を極めし少女。

ふたりの冒険譚は、まだ始まったばかりだった。

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