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お前もプリンセスかよっ!  作者: テラェフカ
第一章 英雄姫は止まらない
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第二十八話 夜、森、ゾンビ

 

 女の子の風呂か長いのは世界共通らしく、雑にレポートを書き終えてもまだまだ時間がありそうだった。

 そこで、トファリも居る事だしせっかくだから片手間にプリンとミックスジュースでも作る事にした。


「そういえばさー」

「なによ?」

「トファリの姫としての業務とかどうなってんの?」

「あぁ、それは大丈夫よ。姉様と兄様達がどうにかしてるでしょ。もともと第二王女って祭典の時に出席したり政略結婚したりが役目だから」

「……自分から王女辞めますとか言えないもんなぁ」

「そうなのよ! それが出来たらどれ程良いかっ……」


 とても感情が込められている。そんなに辞めたいのだろうか。

 世の中には王族になりたい……というよりは憧れている人だって居るのに苦労は当人にしか分からないのかもしれない。

 ただの貴族でさえかなり大変だ。領地を持っていたら住民を守っていかないといけないし、問題への対処を間違えると反乱されるし。


「トファリに才能が無かったらこういう事も言わなかっただろうが……才能があるんだもんな」

「そうね。誰かを守れる才能があるんだから使わないとって思うようになったのよ」

「でも、普通に結婚して家庭を持ちたいんだろ?」

「当たり前じゃない! それが女の子の夢よ? まぁ、動ける限りはこの国の人達を守らないとって思うけど」

「死ぬ時なんて突然で選べないしさ……生きている間くらい自分のコトは選びたいよな」

「……そうね」


 焚き火を見詰めながら、みんなが風呂から上がってくるまで二人で喋る。こういう話は今までも何度かしていて、今更する必要もない本当にただの雑談――。

 式典の時のトファリは本当につまらなそうな顔をしていて、義務感でやってますというのを顔に張り付けて出席している。義務なのだから仕方ないと思うが、退屈なものは退屈とトファリはよく言っている。それに比べ、妹のパフェリ姫の方がまだ楽しそうだしトファリよりもよっぽどお姫様に向いていると思う。


「あ、次はゆっくり冷やして」

「はいはい」


 バリアの中で熱して凝固したプリン液。粗熱も取ったし、後はゆっくりと冷えていくのを待つばかりだ。

 バケツプリンならぬバリアプリン。解除した途端に地面に落ちてしまうから、切り分けて皿に乗せるまでは集中力を途切れさせてはならない。


(よしよし。これでプリンもいつでも食べられるな)


 製作過程さえしっかり覚えておけば食魔法ほど便利な魔法は無い。世界の食料事情とか気にせず(まかな)えてしまう。農家の人達が困るし、世界に影響を与えるのは流石にやりすぎな気もするからしないけれど。あくまでも俺は……この世界に住まわせて貰っているというコトを忘れてはならない。


(そういう意味じゃ俺もトファリと一緒だな。動ける限りは守れる範囲の人達を守っていかないと)


 片手間プリンと同時平行で作っている片手間ミックスジュース。これも空中で四方を囲ったバリアの中に果物とミルクを入れてトファリの風魔法で掻き混ぜて完成だ。

 どのフルーツの組み合わせが良いのかは試さないといけないから、少しずつ作っては試飲している……のだが、そろそろみんながお風呂から出てくるだろうし、今回は無難な絶対に間違いのないフルーツ達で作るしかなさそうだ。


(今度、休みの日にでも青果店でも行くしかないでしょ!)


 結構挑戦するのは面白いし、時間と資金に余裕がある時に試そうと決めた――。

 そして、みんながお風呂から出て来たのと入れ替わりでトファリが入って、上がってきたらもう辺りは真っ暗になっていた。


「じゃあ、早めに寝るように」

「本当にシューゴ様にお任せしてもよろしいのですか?」

「はい。家の仕事上、一日二日くらい寝ずとも大丈夫ですので」

「何かあったら起こしなさいね」

「分かってる」


 焚き火番を買って出て、お風呂から上がってからドリンクとプリンを食べた後に眠たそうだったルーやリベをトファリに任せてみんなにはテントで今日はもう寝てもらう。どのみち、二個しかないテントの使い道はこれしか無い。

 薪を()べて火を絶やさない様にしながら、川の流れる音がやけに大きく聞こえる静かな夜をポンちゃんとパピーと共に過ごしていく。

 こういう時にいろんな魔法が使えたら暇を潰せるのだろうが、あいにくそんな便利な魔法は使えない。食魔法で飴を作り出し、舐めるくらいしか俺には出来ない。

 パチパチと弾けた音の鳴る焚き火を見詰めていると、ふと思い出した。前世で死ぬ二日前、俺は田舎に居て、近所の人達とバーベキューをしていた。

 祖父母の家に遊びに行っていただけだから、当然仲の良い人は居なかったけど、田舎の人達はみんな優しくて楽しかった記憶がある。

 俺にもっと才能があれば、この世界と元の世界とを繋げる魔法とか使えたかもしれない。俺にもっと才能があればこの世界の人々を平和に出来たかもしれない。


(何だかセンチメンタルな気分になってきたな。言っても仕方ない事を思ってしまった……らしくないな)


 初心忘れるべからず。

 トファリじゃないけれど、俺もそれなりに好きな人とイチャイチャして結婚するという目標を持って生まれた。


「あぁぁぁぁ……トファリがせめて王族じゃなくて同じ爵位だったらユキちゃんかトファリと結婚してたかもしれないのになぁぁ……。いや、まぁ、アイツの才能だったらそれこそ王族に召し抱えられてたか」


 横で目を閉じて大人しくしているポンちゃんとパピー以外、誰も居ないし暇で、普段は言わない事を口走ってしまう。


「……待てよ? ルーが俺のコト好きって言ってくれてるし、いっそのことルーの住んでた場所に婿養子もアリか?」


 ルーは獣人さんで、距離感が近過ぎる。モフモフで気持ち良いし、人懐っこくてかわいい。獣人さんと人族の夫婦も別におかしな話では無いと聞くし。


「妖精国も行ってみたいケドなぁ~絶対に可愛い祭りでしょ」


 妖精さんは文献とか少なく、まだまだその生態の全てを知っている訳じゃない。でも、かわいいからそんなのどうでも良い気がしてくる。妖精の国……には是非行ってみたいところだ。


「鬼の国はいいや。何か危険そうだし」


 みんなリベみたいだったら物騒だし、行かなくて良いな。


 ガサガサ――。

 森の方から何かを掻き分ける様な、風に吹かれた音とは違う音が聞こえた。まだ危機を察知する俺の能力に反応は無い。

 ただの動物か、はたまた魔物か。どちらにせよバリアの準備と短剣に手を添えて、火の付いた枝をニ、三本放り投げる。


「ぅ……がぁ……っ……」

「な、なんだ……ただの死体か…………死体(ゾンビ)⁉」


 シルエットは人型。ただ、ボロボロの服装に傷だらけで乾いた様な肌をしていた。

 死霊系の魔力が変化した物理攻撃の効かない生物とか、意志なき悪霊が死体に乗り移ってゾンビになる話は聞いたことがある。だが、それは主に墓地みたいな場所かつ魔力が充満している土地の話しであって、こんな普通の森で起こる話ではない。

 警戒レベルを跳ね上げる。異常な事が起きているということは、超自然的な話かもしくは――人為的である可能性がある。


(とりあえずテントを中心にバリア。トファリを起こすか)


 ガリガリとバリアの外側をゾンビが引っ掻いている。壊されはしないし、どうやら知能も低い。何を目的としてここに居るのか分からない以上、下手に刺激するのも危険が伴う。


「トファリ! 起きろトファリ!」

「……んぁ? なんなのぉ? 騒がしいわねぇ〜」

「良いから他のみんなも起こしてくれ! 緊急事態だ」


 テントの外からトファリを起こしている間に、ゾンビが増えた。今度のはシルエットが猪。牙でガシガシとバリアに向かって攻撃をしている。

 あまり直視したいとは思えないぐらいボロボロな姿をしている。


「シューゴ! みんな起きないんだけど!」

「……どういうことだ? 眠りが深いとかそんな話ではなく?」

「息はしているから生きてはいるんだけど……声を掛けても揺すっても起きないの」

「――そうか。じゃあ、今は寝かせておこう。とりあえず外の問題を対処するぞ。さて、問題だトファリ。人為的にゾンビを作る事は合法か違法か?」

「――禁術中の禁術じゃない! まさか⁉」

「ここに集まってきている――というより、動きを見ている限りじゃここに進むよう指示されている気がする」


 このゾンビを生み出し、操っているかもしれない敵はもしかしたら倫理的観点から禁術指定とされた魔法を使う、死体傀儡師(ネクロマンサー)なのかもしれない。


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