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お前もプリンセスかよっ!  作者: テラェフカ
第一章 英雄姫は止まらない
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第二十六話 満足!

 

「シューゴ! シューゴ! いっぱい捕まえてきたよッ!」

「これまた……凄いなルーは」

「それよりも……ん~~良い香りぃ~! えへへ~、お腹空てきちゃった~」

「よぉーし! すぐに特製ヤキソバ作るからな!」


 ルーの持ってきた食材は解体担当のミーニョさんとリベの元に運んで貰い、すぐに戻って来たルーの目の前でヤキソバを作り始める。

 最後に濃いタレを混ぜれば良いだけのヤキソバは簡単で、まずは肉や野菜を熱した鉄板の上で炒めていく。そして、お湯で湯がいた麺の水を切り、鉄板の上にダイブさせて肉と野菜と混ぜ合わせながら最後にタレを掛ければ完成だ。

 ただ、ちょっとルーの為に多めに作るから時間は掛かるけど、作り方自体は実にシンプル。それでもって、鉄板でタレの香りが立つと本当に美味しそうな匂いがしてくる。作っている俺もお腹が空いてくる程に。


「ルー、お皿に取ってじゃんじゃん食べな! すぐ次の分を作るから」

「わぁーいっ! いただきまーーすっ!」


 三又に分かれた木製の食器。フォークを使って、ルーは出来立てのヤキソバを食べている。臭みを取った肉に野菜は少なめで濃いソース、間違いない味だ。一口食べたルーの瞳が輝いたのを俺は見逃さなかった。


「おいひぃ~~~~~~っ」

「そこにすかさず、シンプルなステーキ!」

「うまぁぁぁぁぁいっ!」

「串焼き串焼き」

「モグモグモグモグ!」


 目の前に用意する料理をペロリと食べてしまうルー。流石に解体と調理が追い付かなくなってくる。


「ルー? 自分で作ったご飯がさ、より美味しく感じる事があるんだけど知ってる?」

「んー? 変なシューゴ~、誰かに作って貰った方が美味しいに決まってるよぉ~」

「いや、まぁ……それはそうかもしれないか」


 作戦は失敗。急いで作らないといけなくなった。そしてそこに――。


「あら、良い香りがするわね~」


 ルー程じゃないにしろ、そこにもう一人大食らいの女の子トファリが戻って来た。沢山の食材を抱えて。

 トファリの分だけは俺が作るか俺の魔法で出さないといけない。魔法で出すにせよ、みんなと同じ食事をするには一度作らないといけない訳で……。


(ユエル様にルーの分を作らせるのは酷か……?)


 早くも次の料理を待っているルー。材料を切り分けてくれているミーニョさんとリベ。さて、どうするか……。


「――ったく、大変なら言いなさいよ。手伝いくらいするわ」

「トファリ……――お前は料理に関しては何も出来ないんだから、大人しく座っててくれ」

「…………」

「ユエル様、ちょっと大変ですけど頑張りましょう! そろそろ油の温度も上がってきたんで、ちょっと焼き担当になってください」

「分かりましたわっ」


 石を集めて作った雑なかまどに大鍋をおいて油を熱していた。串で温度を確かめてみると丁度良い頃合いで、さっそく揚げ物を作っていく。

 カットしてある肉に小麦粉と卵とパンを風の魔石で作動するミキサー的なやつで粉砕した粉を使って、衣を付けて油へ投入――まずはカロリー満タンの豚カツ。


「シューゴ、シューゴ、これは何作ってるの?」

「んーっと、肉にサクサク食感を足してるって感じかな。ルーがほら、焼いただけはイヤって言ってただろ?」

「ルーの為? ありがとシューゴ!(スリスリ)」

「あはは、くすぐったいぞルー。豚カツはそのままタレをかけて食べても良いし、パンに挟んでも美味しいぞ」

「うんっ!」

「そしたら今度は鳥の肉を揚げて唐揚げにしても良いし、野菜とかも素揚げしたらまた違った食感で美味い!」

「凄いねぇ! 全部美味しそう!」


 稲妻のごときスピードで、ユエル様が呼ぶとルーは食べ物の方へと移動していく。バクバクとあんなに食べて胃が心配になるが、ルーならなんやかんやで大丈夫なのだろう。


「――もん」

「ん? どうしたトファリ?」

「私だって、料理できるもんッ!」

「…………いや、できないだろ」

「できる!」

「できない!」

「できる!」

「できない!」


 トファリは料理、出来ない。ただ切って焼くのを料理と称するのなら誰だって料理人になれてしまう。

 そもそもトファリは切る事は出来ても焼いたら焦がす。そういう奴なのだ。


「シューゴ様、もしかしてトファリ様もお手伝いしたいのでは?」

「…………料理作りたいのか?」

「で! き! るッ!」


 やる気だけを見せられてもどうしろと……。

 ルーが沢山食べる忙しいタイミングだし、面倒は見きれないのだが一人でさせると爆発しかねない。ドラゴン女でもあるし、思っていたけど爆弾女でもあるトファリだ。


「……シューゴ様、ルー様のお食事は私にお任せください。ヤキソバもアゲモノも見ていましたし、それほど複雑では無いですので。どうか、トファリ様にお時間を割いてはくださいませんか?」

「……よろしいのですか?」

「えぇ! 戦えない私が出来る事はこれくらいですもの!」


 なんて、なんて良い人なんだろうユエル様は。自分に出来る事はみんなやっているけど、その中でも誰かを気遣える優しさを持っていらっしゃる。

 俺も嫁に貰うならそういう、誰かを気遣える優しさを持つ女性が良いな。やっぱり宿屋のユキちゃんだろうか。


「――ふっ。じゃあトファリ、ユエル様のお言葉に甘えて一緒にユエル様と俺達の分のご飯、それとみんなのデザートでも作ろうか」

「うん! 私だって本気を出せば作れるんだから、馬鹿にしていられるのも今の内よ?」

「まずは焦がさない様になってくれよな。ユエル様、苦手な食べ物とかありますか?」

「いえ、大丈夫ですわ! …………ホッ。(そりゃ、トファリ様も女の子ですものね! お料理できる姿を殿方に……おや?)」


 ユエル様が何やら難しそうな顔をし始めた。ただ、ルーへの料理は手を止めずにちゃんと作っている。器用な人だ。


「さて、献立は肉をメインにして余ってる麺をパスタに……あとは野菜を添えて食後にデザート、というメニューで大丈夫か。ユエル様は一人分、トファリには三人分くらいは必要かな?」

「ねぇねぇ! デザートは何かしら?」

「トファリはまず、包丁の使い方から。デザートは何作るか考えておくから、まずは焼くぞ! 肉を!」


 トファリの料理作りには苦戦させられた。包丁の使い方が荒いし、火力を上げすぎて外側だけ焼けて中は半ナマ状態になるし、パスタは茹で過ぎて食感が弱くなるし、野菜はちょっとしか盛り付けない。

 とりあえず最初に説明をして後は見守っていたが、言った事を全く守らないという残念な結果を迎えてしまった……。材料に申し訳ない。


「もう見てらんない! まずは包丁の使い方から!」

「あっ……ちょっと、なによ、手、を、後ろから……なんて、ちょっと……」

「一回しか教えないからちゃんと集中してくれ。包丁を持ってない方の手は指を丸めて、そして上からブツンって切るんじゃなくて、気持ち引く感覚で切っていく。オーケー?」

「あ、う、うん……もう手、離しても大丈夫よ? 大丈夫……」

「じゃあ次は火。厚めに切った肉ほど弱火でじっくり。トファリは何でもかんでも急ぎすぎだ。オーケー?」

「お、おーけー」

「麺は……残り少ないから俺がやる。あと野菜! ちゃんと野菜も食えよ?」

「え~……苦いじゃない」

「それはそうだけど……言ってもしょうがないだろ」


 トファリの料理上達までの道はだいぶ険しそうだ。まずもってセンスが無い。神に愛された子であれ、苦手は苦手なままらしい。


「そもそも、お前は料理なんか作らないでも料理人とか作ってくれる人が居るだろ?」

「それはそうかもしれないけど……作ってあげたいんだもん」

「……誰に?」

「……べ、別に! 未来の旦那様とかによ! ふんっ!」

「なるほどなー。お前が下手なままだと教えた俺まで笑われそうだ」

「ならもっと丁寧に教えなさいよね!」

「はいはい、仰せのままに」


 焼くのを失敗した肉は、焦げた部分を削ってまた新たに火を入れてリベに試食させておいた。

 ミーニョさんには定期的に氷魔法で冷やしたフルーツシャーベットを差し入れして、何とかルーが満足するまでの間みんなで作業をやりきった。

 ルーの胃袋は凄まじく、普通の人のおよそ一週間分近い量を食べてようやく満足したらしい。


「いつもはね、あのね、みんなの分とか考えて我慢してるの……でもね、今日は本当に久し振りに満足した! シューゴ、トファリ、ユエル、ミーニョ、リベ、ありがとう!」


 そう言ってルーがみんなにハグをして回る。それだけで大変だった作業が報われる気がした。

 特に大変だったユエル様も、どうやらルーの虜になってしまったみたいである。


「……ユエル様も休んで食事にしてください。後は俺だけでも十分にみんなの食べたいだけ調理できますから」

「では、お言葉に甘えまして休ませていただきますわ」


 ユエル様と場所を変わると、いつの間にか忍び寄っていたリベがまた背中によじ登ってくる。


「なぁ、なぁ子分! 妾も腹が減ったぞ?」

「リベ、さっきつまみ食いしてなかった?」

「……くふふ、足りぬ足りぬわッ! 流石にあの獣ほどではないがな……妾だって沢山食べるのだゾ!」

「へいへい。何か食べたいのはある? リベは頑張ってたし作ってやるぞ?」

「本当かっ!? んとなー、大福!」

「餡子がないからなぁ……」

「むむっ、じゃあ……何か甘いのを作るのダ! 妾の為だけになっ!」

「んー、大福じゃないが包む系なら……クレープとか作れそうかな? ミルクも残ってるし卵もあるだろ? 具はミーニョさんがフルーツを持ってきてくれたし」


 だけど大事な大事な生クリームが無い。ついでにフルーツ以外のトッピングも無い。チョコレートやカスタードクリームも無い。これじゃただのフルーツ包みになってしまう。


(でも、食魔法を使わないと言ってしまった手前使いづらいしなぁ……)


 フルーツ包みのフルーツソース……って美味いのか疑問だ。不味くは無いと思うが、クレープ生地で包む意味が見出だせない。

 クレープ生地なんて生クリームを包むのが仕事みたいな部分もあるし、やはり生クリームが無いとツラい。

 生クリームに関しては、牛乳から派生しているんだろう……ぐらいのざっくりとした知識しか持ち合わせていない。元から掻き混ぜれば生クリームになるやつを使っていたから、魔法なら出せてもどうやれば作れるのかまでは知らない。


「ん~~悩むなぁ。いざ作るとなると悩むなぁ~」

「早く~しろッ! 早く~しろッ!」

「角で突っつかないでくださいよ。フルーツでしょ? ミルクでしょ? 卵……砂糖的な粉……冷やす魔法もある……ッ!!」


 基本的に甘い食べ物は砂糖があればなんでも甘くなるのだが、そこにミルクと卵があれば全てのスイーツの基本となる材料が揃ったと言ったら過言かもしれないが、作れる物の幅が広がる。

 とりあえず、誰にでも簡単に作れる物が一つ――みんな大好きプリン。

 俺のバリアで何かの四方をかなり薄く囲んで、火魔法を使えばオーブンになるし、氷魔法を使えば冷蔵庫になる。薄さの調節が肝心になってくるが、ここにいる面々なら火力の方を調整出来るから心配はない。


 食後のスイーツは『プリン~フルーツソースを絡めて~』に決定だな。



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