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お前もプリンセスかよっ!  作者: テラェフカ
第一章 英雄姫は止まらない
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第二十二話 荷物多し、リスク多し

 

 ――遠征当日。

 早朝のグラウンドに、一年生がパーティーごとに並ばされていた。引率の冒険者は森に直接来るのか、姿は無い。それに、ポンちゃんやパピーの様な動物を連れて来ているのは俺だけらしくちょっと浮いていた。

 生徒の点呼を取り終えた先生が、今日の予定について話し始めた。


「一応、冒険者の方が補助として居ますが、基本的には各自で目的地へ行く訓練です。魔物を間引いて頂いていますが、危険が無い訳ではありません。緊張感を持って取り組んでください。それと、パーティーごとにスタート地点とゴール地点は違いますのでチームの仲間と力を合わせて頑張ってください」


 それから他の先生からの注意事項を幾つか聞いて、ようやく学園が用意してくれた移動の為に用意された馬車へ乗り込む時間となった。


「はい、次のパーティー。テントと食料を持って馬車に乗って。乗った馬車の中にゴール地点への地図を置いてあるので、無くさない様に。リーダーは?」

「妾じゃ!」

「そう。じゃあ、貴女には活動中の記録を提出して頂きます」

「……リーダーはコヤツな! 本当はコヤツじゃゾ!」


 スススと後ろにスッこんだリベの代わりに、羊皮紙とペンとインクを受け取る。荷物は分担して馬車まで運んで行き、みんなで乗り込んでいく。学園がちゃんとしているから、荷台がポンと付いている馬車ではなく、しっかり扉のある貴族が乗る用な馬車である。

 対面式の椅子に座るも、俺の荷物が多すぎる為に席はミーニョさんとポンちゃんと一緒で、反対側にトファリ、ルー、リベの順で座ってもらった。パピーは飛んで行くそうだ。後は出発を待つばかりである。


「これが地図ですか~」

「それはルーに持って貰うとして、よっこらしょ……っと」

「シューゴ……アンタ、何でそんなに荷物多いの?」

「いや、それがさ――」


 道具の持参は認められているとはいえ、俺と同じくらい『調理器具』を持ってきた生徒は居ないだろう。

 この一週間でいろいろと各自で準備を進めた中で、食堂に通っ

 たのが良かったのか、昨日のトファリとの買い物の後に寄った食堂でおばちゃん達に器具を押し付け……沢山借りれたのだ。

 揚げ物用の鍋とフライパンでも借りれたら上々と思っていたから、包丁から何から借りれたのはありがたい話。まぁ、それで荷物が(かさ)張っているんだけれど。


「シューゴ……ルー、これだけじゃ足りないよぉ」

『僕も足りない!』

『私もこれじゃあ……ねぇ?』


 学校から受け取った食材――主に野菜とお肉。五人分の夕食の材料としては適当な量であるが、大食いのルーからすると五人分が一人分にも足りないらしく……嘆いている。

 ポンちゃんとパピーはそれぞれ勝手に何か捕まえるとしても、もう一人、ルー程では無いが沢山食べる女の子が居る。


「そうね。ゴールを目指すのも大切だけど、食料確保もしっかりしないと……」

「なぁなぁ、シューゴを説得すれば良いのではないカ?」


 リベが俺の方を見ながらトファリに問いかける。俺が能力を使わないと宣言した事についてだろうが、それならばやはり使う予定は無い。

 そう答えようとするより先に、トファリが喋り始めた。


「あー……それはきっと無駄よ」

「……なぜに?」

「自分の能力で訓練の意味が無くなるとでも思ってるんじゃないかしら? そういう奴なのよ」

「おぉ~、トファリさんはシューゴさんの考えが分かるのですね~」

「確かに。よく分かったな?」

「……べ、別に! たまたまよっ!」


 そこそこ長い付き合い……そう思えば他の貴族よりも何故か王族であるトファリとの付き合いが一番長い気がする。家に修行しに来ていたという理由が大きいが、仕事上の付き合いしかない他家よりも親密ではある。

 お互いがよく分かるのも当然なのかもしれない。俺も、トファリのコトならそれなりに気付ける気がするし。


「そろそろ、出発します」

「……あ、はい! お願いします」


 馬車の御者(ぎょしゃ)さんから、声が掛かり出発の揺れを感じて馬車が動き始めた。

 森に入る出発地点は違うけれど、王都を抜けるまでは一緒だ。馬車がぞろぞろと抜けていく光景は、街の方々も年に一回の祭でも見ているかの様に応援の声を掛けてくれる。


「カッカッカ、妾の見送りじゃナ!」

「うーん……トファリさんを呼ぶ声ばかりの様ですね~」

「まぁ、人気だもんなトファリ……いや! トファリ第二王女様は!」

「やめなさいよっ!」


 伸びてくる拳を危険察知を使って寸で避ける。


「何で……避けるの?」

「いや、死ぬからだぞ?」


 ニッコリ笑顔で言うトファリと、ひっそり冷や汗を流す俺。トファリ相手だと、ちょっとした冗談も命懸けになってしまう。


「シューゴさん、せっかくですからあたち達にトファリさんの凄い所を教えてください~」

「ちょ、ミーニョさん!? なんて恥ずかしい提案をしているのかしら?」

「一緒に過ごすんですから~能力だけじゃなく~もっとお互いを知っておく必要があるかと~」


 能力についてはお互いにそこそこ把握している。でもお互いの内面的なコトについてはまだ深くは知らない。

 鬼族の掟や妖精族の生活様式、獣人さんの価値観なんかも確かに気になる。


「一理ある、な。良いだろう! どうせ到着まで時間は掛かるんだし、俺がトファリについて知ってる限りのコトを話してやろう。まずは、トファリがどれだけ凄いのかをだな――」


 一度話し始めたら、トファリがしでかして来た事件が多過ぎて止まらず話してしまった。

 幼少期のバリア壊せず泣いてしまった事から貴族からの求婚を相手の力量を試して断って来た事まで、話題の尽きない王女の話を、そしてそれに振り回されている可哀想な護衛の話も織り混ぜてみんなに聞いて貰った。

 もちろん、途中で恥ずかしがって止めに入るトファリを想定出来ない俺ではなく、バリアを張って喉の潤いが無くなるまで話してやった。


「――まぁ、そんな感じで今は学園に居るんだよな。がんばり屋なんだけど、才能に誰もついて行けてない感じかな」

「トファリさんも大変だったんですね~シューゴさんが居なかったら……どうなってたんでしょうか?」

「フンッ! 妾の方が凄いし? 妾は……四つの頃にでっかい猪倒したからナ!」

「ルーはね、トファリ凄いと思う! ルーの村に来ても沢山求婚されるよ?」


 トファリは途中から顔を真っ赤にして押し黙ってしまったが、三者三様のらしい反応だった。

 常識的なミーニョさんの感想は貴重で、確かにトファリと出会ってない世界線だったらどうなっていたのだろうか。

 俺はきっと学園には行く事もなく、家の仕事をしてユキちゃんと円満夫婦になっていたのは間違いないだろう。トファリも慎ましく聡明で別の才覚を発揮して国の発展に貢献していた筈だ。


(……アレぇ~? いや、うん。出会ってから言っても仕方ないけどさ)


 何か、国のコトを考えたりフラれた貴族達のコトを考えると俺がトファリの人生や国の運命を狂わせてしまった感がフツフツと湧いて出てくる。

 本来……というものが何なのかは分からないけど、転生は間違いなくイレギュラー。テキトーな神様だったけど感謝はしているし、今は楽しいけど、間違いなくトファリの人生は狂わせてしまっている。


(責任感……じゃないけど、トファリが幸せになるまで責任を持たないといけないやつか?)


 幸せは、それぞれが勝手に掴み取るモノと話を投げてしまうのは簡単だけど、一度ちゃんと考えてしまったら納得する答えを出す前に投げ出すと微妙に気持ち悪いモヤモヤが心に残ってしまう。


「あのさ……女の子の意見として聞きたいんだけど、出会わなければ順当に幸せだったかも知れない女の子と出会って、その上深く関わった場合って、その男はその女の子が幸せになるまで責任を持つべきと思う?」

「う~ん……そんな事は無いと思いますけどね~。幸せは他人に与えられるモノじゃなくて他人と分かち合うモノかと~」

「クッククク、話は難しくて分からぬガ! 欲しいモノは力を示して奪うモノ! 男も女も家畜も土地も奪うのが鬼の生き方ゾ!」

「ルーはね! ルーはね! シューゴと出会ったから美味しい食べ物をもっと知れたからね、幸せ~」


 本当にルーは可愛い……。しかし、それぞれバラバラな意見に見えて共通するのはミーニョさんが言っていた『幸せは与えられるモノじゃない』という事だろう。

 確かに、トファリが今幸せじゃないと言うのなら責任を取らなければならないが、今トファリは――。


「トファリ、楽しいか?」

「いや、楽しい訳ないでしょ! 散々語られて! ふ、ふふ……次はアンタの番だから、ね? 覚悟しなさいよ!」


 少なくとも不幸って顔はしていない。なら、しばらくは様子見で良いのかもしれないな。

 それから順に話し合っていき、出発してから三時間程で森のスタート地に馬車が到着した。


「んん~っ、座ってるのも疲れるわね~」

「ルー、お腹すいたー……」


 俺達の目的地点は森の中腹辺りにある川辺。日の暮れる前に到着して、泊まる準備をしなければならない。

 翌朝は少し遊んでから、またこの場所に戻ってくる。他のパーティーは知らないが、地図を見て立てた予定はそんな感じだ。

 それほど余裕がある訳では無さそうだけど、学園の一年生には丁度良い訓練だろう。最悪、無事に戻ってくればそれで良いらしいし。


(ま、このメンバーなら休憩も最小限で行けるだろうから大丈夫か。荷物の多い俺が足手纏いにならない様にしないとな)


 俺とミーニョさんが最後に馬車を降りた。そして、他のみんなが普通に立っている中で俺とミーニョさんが綺麗な敬礼をしていた。

 理由は単純。ここには監視役の冒険者が居る筈なのに、何故か俺とミーニョさんの担当の先生であるレイラン先生が仁王立ちしていたからだ。


「全員整列ッ!」

「「はいっ!」」


 ポカンとしている三人も並ばせて、俺達は訳も分からないままにレイラン先生の前に横一列となって整列をした。


「レイラン先生、質問です!」

「なんだ、シューゴ」

「レイラン先生の隣の女性は誰でしょうか!」


 待っていたのはレイラン先生だけではなく、俺達と同い年くらいのいかにも(・・・・)な女の子が立っていた。そして、チラチラとトファリに視線を送っていた。


「ふむ。……お前達には残念なお知らせしかない」

「し、しかない!? 普通、良い知らせと悪い知らせでは?」

「お前の普通など知らん。一つ目はこの地が一番難関であるという事。二つ目は、王都の他の学園に通う貴族の子女もしくは子息が一人加わる事」

「一つ目は運ですし仕方ないと受け入れますが、二つ目は……何故でしょうか!」

「……――伝統だッ! と言ってしまえば簡単だが、こちらのお嬢さんは魔物の居る森を歩いた事は当然ないからその体験。お前達は戦えない子を守る訓練となる」


 俺が質問をしていたからか、レイラン先生の隣に居る女の子が俺に視線を向けてくる。あの子に見覚えはないけど仕事の関係上、ああいうタイプの子も護衛した経験がある。

 世間を知らない、大事に大事に育てられているいかにもな貴族のご令嬢。笑い方は『うふふ』それで語尾が『ですわ~』な感じの子。


「トファリ様以外の皆様は初めまして、ミハエル・ファンデルト侯爵が娘、ユエル・ファンデルトでございますわ。以後、お見知りおきを」

「あー……そうそう。トファリ様はともかくシューゴは気を付けておけよ。侯爵家のご令嬢だから傷が付いたら死刑だぞ?」


 俺ばっかり死のリスクが付き纏い過ぎてない?

 ――そう口から出そうになった気持ちをグッと飲み込んで「大丈夫です」と声を絞り出した。

 ユエル・ファンデルト……侯爵令嬢。戦えない子の護衛であれば俺はきっちりとやり遂げる。決して権力に屈したとか、顔がめちゃくちゃ綺麗でスタイルも良いから……という理由ではない。という理由だけど。


 ◇◇

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