表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/14

出発

「シカナ、やめなさい……! 今の時期、御者は特に危険だということはわかっているだろう?」


「え、そうなのか?」


 思わず口にでたジーンの言葉に、ルーブンは頷く。

「春、特にこの時期は交易が盛んでね。馬車も頻繁に行き交っているから、それを狙った賊たちが現れやすいんだ」


 ルーブンの話を聞きながら、ジーンは仲介人の言葉を思い出していた。

 

 ーー賊や魔物との闘いはできるか?

 みたところルーブン商会には護衛の姿も見あたらない。自分自身で何とかしなければいけないということだ。仲介人はそこまでわかっていて、訊いてきたのだ。


「平気だって! 馬もちゃんと乗りこなせてるし、何かあっても自衛用の弓もあるから!」


 シカナは丈が短かく両端の近くが曲がった短弓を見せる。少し傷はあるが、手入れもよくされており、戦闘にも十分使えるようなシロモノだった。


「しかし……」


「俺たちだったら大丈夫だよ、おっちゃん」

 難色を示すルーブンに、ジーンは明るく声をかける。


「ジーン?」


 バリは不思議そうに首を傾げた。


「俺とバリは魔法学園の新入生なんだ。魔物とも闘ったこともあるし、そこらの賊に負けるつもりはないよ」


 ーーここがダメなら別の馬車を探すつもりでいたが、そもそも見つかるかもんからない。

 それならいっそここで決めてしまった方がいい。


 ジーンの思惑に気づいたのか、バリも説得にまわる。


「……ええ、僕らなら賊の数人くらいは追い払えます。安心してください」


「き、きみたち……。わかった、そこまで言うなら、シカナを御者として馬車を出そう」


 おおっ、と声をあげるジーンとバリ。


「やった! お父さん、私、しっかりやるから!」


「ああ、頼んだぞシカナ」


 ルーブンはジーンとバリに向き直り、告げる。


「陽が沈む前には出発させたいところだが、お互い準備がいるだろう。数日分の物資でも用意してから、また来てくれないか」


「わかった。ありがとうな、おっちゃん」


「話は終わった? 二人とも、よろしくね」


 シカナはニカッと笑った。


「おう! それじゃあ、俺たちは市場にいって買い物してくるから」


「了解、こっちもしっかり準備しとくから!」


 シカナの言葉に頷き、ジーンとバリはルーブン商会を後にする。


 来た道をもどって、大通りへ。

 ジーンとバリは手分けして買い物をすることにした。

 ジーンは大通り市場の露店で食料の買い物をする。馬車は徒歩よりはマシだがそれでも決して速いとはいえない。5日はかかるとみて品物を選んでいく。

 

 まずは果物。暑い季節ではないし、紙に包んで直射日光を避ければ数日は十分保つ。

 それからリバレスは河が近いこともあり魚は豊富だ。乾物なら同じく数日保つ。

 さらに主食の芋と、水樽等を買ってジーンは買い物を終えた。

 香草は買えば高くなるが、幸いジーンの田舎では自然に生えており、祖母から特製の調味料(乾燥した香草と塩をまぜたもの)を貰っていた。

 

 大荷物なので台車をかり、バリを待つ。まもなく荷物を小脇に抱えたバリがやってきた。


「お待たせしました。重いものを任せてすみません」


「身体は鍛えてるから大丈夫だ」


「そう言ってくれるとたのもしいです」


「ところでバリは何を買ってきたんだ?」


「ああ、薬草を漬けた傷薬です。何度かお世話になったことがあるんです。傷口を洗うみたいにかけるとよく効きますよ」


 バリが見せた小瓶には、薄く濁った水がはいっていた。

 ほかにも、と見せてきたのは包帯やら薬が数点。どうやら魔物や賊との遭遇も覚悟しているようだ。


「いざという時のためです。首都につくまで使わなくても、魔法学園に入学したら怪我することはよくあるでしょうし」


 そんな話をしながら、二人はルーブン商会に再び赴く。すると、建物の前に二頭立ての馬車が用意されていた。

 

 飾り気のない質素の木製の箱型客室。車輪は馬のそばと箱の後方に二輪ずつのあわせて四輪だ。


 ちょうど、シカナは車輪の点検を終えたところのようだ。


「……ん? ああ、もうすぐ出発できるからね! とりあえず荷物積んであげるよ」


 シカナは荷物を渡すよう手を広げるが、ジーンとバリはさすがに拒否。


 重たいし危ないから、と自分たちで客室の中に荷物を詰め込んだ。


「ありがとうね!」


 シカナの満面の笑みに、ジーンは思わずドキッとしてしまうのだった。



 それから間もなくして。

「車輪よし、馬よし、荷物よし、準備よし!」


 シカナが指差し点検を終え、馬上へとあがり御者席へ。


「シカナ、気をつけるんだよ」

 店の入り口からルーブンが声をかける。


「うんっ!」


「お客さんにお願いするのは申し訳ないが、何かあったらシカナを守ってやってほしい」


「もちろんです」

 ジーンのかわりにバリが頷く。

「もうっ、お父さん!」

 恥ずかしさと怒りで顔をしかめながらも、シカナは言うのだった。


「ルーブン商会、出発です!」


 土煙をあげ、馬車は動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ