第九十四話 体育委員会
前回のあらすじ
突如始まったクラスマッチ、その優勝記念。彼女達は常にハングリー精神旺盛である。
二人の新人を巻き込んで、盛り上がりはさらに加速していく。
しかしだが、俺を巻き込まないでほしいのだけど。
ダン、と執務机を叩いたのは、井鳥矛夢。体育副委員長だった。
「おいぃ、慎‼ てめえいつから商人の真似事するようになったんだ、え? なんか言ったらどうだ‼ ああ⁉」
俺に言わないでくれよ。
スレンダーな美人さんが机が割れるんじゃないかと思うくらいの威力でさっきから、ダンダンと叩いている。
流派、『角闘流』のため彼女は鍛えているからあの机、きっと明日には使い物にならなくなっているかもしれないな。
だって彼女の流派は、相手やモノの防御やテンポをずらす力だから。つまり、机が壊れるのは誤差があるってことだ。
マネージャーも、きっと頭を痛めているに違いない。
「そもそも、購買部で事業みたいなことを始めるのはいけないコトなのかよ? そんな規則、聞いていないぞ?」
「うるせえ! お前の二年D組がことあるごとに何かおっぱじめるせいで関係各所からとてもとても面倒事が俺のところまで飛んでくるんだよ‼ 『商売のことなら私の委員会に』とか、『生徒会の税金については是非わたくしたちに相談を‼』ってな‼ ウゼえ、死ねえ‼ おい慎‼ 今すぐ俺のクラスに移動しろぉおお‼」
「なんでだよ⁉」
「聞いていなかったのか‼ お前のせいだって言ってんだよ‼ それが嫌なら、今すぐ俺の立場を譲ってやる‼」
なんか、井鳥先輩は疲れているようだ。イライラが溜まって仕方ないらしい。もともと武闘家だったからその実力でここまで上がった人だ。その人に体育委員会の運営をしっかりやれって言うほうが酷なのかもしれない。
こういう時は大抵上の圧力が火種になっている。今回もきっとそうだろうな。
「……どうしたんですか? また、生徒会が無茶なことを言ってきたんですか? エロ本いります?」
「か、ななななんてことをおっしゃりりゅ――、ゴホン。実は角闘流から一人、刀龍無迅を監視できる人を貸せという命令が来ている。無視したら、刀龍介沁が体育委員会の再編成を行うかもな。と言ってきた。――後エロ本は二冊ですわ」
生徒会、令司紫苑率いる、この疑似学園都市最強の集団。その全貌は放送委員会や、新聞委員会でも掴み切れていないらしい。
あの車椅子ポニテちびっ子野郎。敵対心を持っているのか、それとも仲間なのか。今回はハッキリ言って分からないな。
これまでも助けてもらったし、協力を申し込まれたこともあるが、立場的には学校を手に入れ疑似学園都市を支配下に置こうとしている敵、なんだし。
まあつまりだ。刀龍無迅を止められる人間を差し出せと。四争選選考会襲撃事件と再月竹夏奪還事件に関わった彼を止められるなんてそうそういない。ということは、
「俺、ですか」
「そうだろう。もともと、一撃流派と双璧をなすうちの流派は人数が少ない。決定的だろうな」
一撃流派。読んで字のごとく一撃で相手を倒すあらゆる流派に組み込むことのできる力、それの門下生は疑似学園都市には多い。その圧倒的な強さの分かりやすさで人気の流派だからだ。
角闘流派もあらゆる手段に用いることが出来るのだが、地味だし、難しくもあるし。というか、井鳥先輩が弟子を取りたがらない。
角闘流派の開祖は彼女だからかだろうか……、教えられる人も、いるんだろうけど、どうなんだろう。
そこについては、俺は勉強不足かもしれない。彼女の余剰次元超能力である『角闘流』で派生している力だとは知っている。
まあ元々ぽっと出で対になる力になったらしいし。一撃流派の方は疑似学園都市が出来る前からあったらしい。
確か、開祖は弌鯨、なんだったか。
というか、そもそも。
「井鳥先輩、前のクラスマッチでは生徒会と仲が良かったんじゃないか? なにせ、俺に黙って、俺の管轄のイベントをやっただろう」
「いや、あれはあれ、仕方なかった。その、あのだな」
歯切れが悪いな。何かまだ、隠しているな。
「その仕方なかった理由を聞いているのですが?」
「う、うん。実は、な。天引、愛夕が」




