第九十三話 優勝記念
前回のあらすじ
ちょっと時間が空いたので竹夏の経過を見に行くことにした。
どうやら元気そうだ。少しほっとする。
しかし不安が、いつか鎌首をもたげるような、予感が胸をざわめかせていた。
「さぁ、さぁ~寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今ならクラスマッチ『二年D組優勝記念』で忘れてしまったあんなことやこんなことを≪思い出す≫料金が特価価格百円で思い出し放題だよ~‼」
「わた、わたしは学習委員会に作成を依頼したレプリカの武器を売っています~。買ってください、買ってってくださいぃい‼」
「いい、まずは購買部を買収して正解だったよ~‼ このあんぽんたんどもぉ!」
おっと。くはは、と高笑いしている粕駕嶺繭、学級委員長が売り上げがうなぎ上りで嬉しそうにしている。
なんだろうな。少し死亡フラグが立っている気がする。気のせいか?
「な、何してんのよ?」「ふふふ、楽しそう」
「なぁ、あれって」「そうよ。最近の注目株」
さて、二人を連れて歩いているときから何処からともなく不躾な視線が飛んできていた。それは、この購買部でも変わらないらしい。
俺も目立ってはいるが、この二人と比べるとそうでもないな。
理由は簡単、この二年D組が一躍注目されることになった理由としてこの二人が中心となっているからだ。
二人の内の一人。竹夏は灰色と白の、病院連盟のロゴが入っている制服で、赤髪のハーフツインテ百四十センチ少女だ。足や手などは細い方、その瞳は青空のように澄み渡っていていやな感じはしない。
はずだったが、そういう印象は最初だけだ。眉が吊り上がっていて喧嘩っ早い彼女は結局近づきづらいに落ちついてしまう。しかし役得と思っている層もいるらしい少女。
一方の、今は高校が預かっている形となっている表道詩沙。ゴスロリという世間から少しずれてしまっていると思われる、銀髪がとても長い中学生、だ。プルプルとしている二の腕みたいに柔らかそうな体で肌身離さずぬいぐるみを持っている。なぜ持っているか詳しくは知らない。でも『それかわいいな』、と若干持ち上げてやる時に言ったらとても嬉しそうにしていた。大事なものなのだろう。
【白。黒】。
二人はそう陰で言われている。彼女達は気にしていないみたいだけどな。
彼女達、彼女達はこの疑似学園都市での希望になるのか、絶望になるのか。そういう意味で付けられているらしい。
この学園都市を左右するクラス。裏の住人も表の住人も気になって仕方ないらしい。
「おお、来たのか~‼ 合法ロリっ子天使達~‼ いや~、この売上どうしてくれよう! もうとんちんかんだよ~!」
「おめでとう学級委員長様。それで、私も受け入れてくれて、本当にありがとうございます」
律儀に頭を下げる詩沙。
「あ、あたしは保健委員会から抜けるつもりはないからね、て抱き着くなこんのぉ!」
「あああ麗しき、私達のクラスただひとつの超能力者チーム。愛しているぜ~‼ ベイビー‼」
あ、あたしは慎のチームじゃ、違うわ‼ 僕も違いますね。と若干横からことばを割り込ませるのは竹夏と九雨だ。
というか、ウサギ耳パーカー少女はハイテンションが突き抜けてしまっておかしくなってしまっているな。
俺は、若干離れる。こっちにまで公衆の面前で恥ずかしい目にあいたくない。
しかし、
『お~君』
ガシッと掴まれてしまった。目を光らせたナースと聖職者の、クラスメイトである双子達に。
「あ、あんですか⁉ 痛い、引っ張るな!」
「そんな怖がらないでください。取って食べようするわけではないですから」
「そうですよ。ちょっと放送委員会に引き渡して、この売上を伸ばす協力をしてもらうだけですから」
これが言ってほしいセリフ。と紙を目の前に持ってきたり、商品を買った時についてくるうちのクラスメイトの簡単なプロフカード、当たりはもちろんあなたですが、それの告知を。と、言って聞かせてきたり。うちのクラスメイトの幹部が付き従う。
ひぃい。目がガチだ。どこからそんな力があるのだと思うぐらいに双子達は俺の両手を宇宙人のように挟んで企業のロゴが入っているマイクが並んだ会見場に連れて行く。
胸なんて気にしないと思っているように、大きい胸を押しつけて。ああ。
そういうこと、だったのだろう。確信したよ。
メールには『二人を連れて遊びにおいでよ』。と繭からきていたから冷やかしついでに行ってみようと思ったのだが、
俺達をだしにしようとするためだった。と。
こんなことなら来なければよかったよ、と思わずにはいられない。
だって、記者らしい人々が悪魔のように、俺を丸裸にしようと舌なめずりをしているのだから。はぁ、めんど。
また同じ言葉を繰り返さないといけないらしい。噓つきが板についているよ、本当に。
あの事件は全面的に竹夏の力でした。それしか、
言えないんだ。




