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第九十五話 借金

前回のあらすじ

井鳥矛夢体育副委員長に怒られてしまった。

それにしても生徒会、ホントめんどくさい奴らだな。

何が、彼らを動かしているのだろう。





 その言葉は俺にとって、考え方を改めないといけないものだった。






 そして、絶賛追及中のこいつにも考えを改めてもらおう。





「そんな、繭(まゆ)学級委員長‼ 売上全部なくなったって、どういうことですか‼」




「本当にすまん、だけど絶対に、絶対にみんなに返すから。だから」




「言い訳を聞きたいわけじゃありません‼ どうして売り上げがなくなったのか、その理由を聞いているんです‼」


 そうだそうだ! と周りのクラスメイトが不満の声をあげる。クラス運営委員も寝耳に水だったらしい。彼女に疑いの目を向けていた。


 俺は二年D組の壁に寄りかかって、この話を聞いていた。まとめると、




『繭が売り上げのほとんどを何かに、無断で使った』




 ということだ。


 彼女がお金を管理することについては、信用していた。誰もが彼女の人となりを知っていたし、こんなことになるわけがないと思っていた。


 俺も、おかしいと思う。訳が、きっと彼女の口から聞きださないといけない理由があるはずだ。



「せっかく、みんなで、『温泉旅行に行こう』って言っていたじゃないですか‼ どうして、どうして……」



「叶帆、もういいだろう。許してやれ」


 ち、甘いのは俺もだな。



「そんな、マスター‼ これで『楽になる』って嬉しそうに言っていたではありませんか‼ 裏切り、です! こんなクラス、来るんじゃ」



「黙れ叶帆!」



「ッ!」


 ビクッと叶帆の体が縮こまる。鼻眼鏡の横にある瞳には涙が浮かび、どうして怒られたのか分からない顔をしていた。


 彼女の気持ちは知っている。購買部を買収した時、これからのことも含めて気合を入れていたのは誰の目にも明らかだったから。


 俺も、そんな彼女を認めている。でも、


 俺が彼女の言葉を止めなければ、今にも涙を一杯にしている、耐えて、耐えている繭がどうしても。その姿に俺も苦しくなったんだ。



「繭、売り上げがなくなったのは仕方ない。大丈夫だ、このクラスが貧しかったのは今に始まったことじゃないだろ?」



「お~くん。君は、聞かないのかい?」



 ウサギ耳のパーカーを羽織っている彼女は、うん。特ダネを抜かれた外国の芸能人みたいに申し訳そうな表情だった。



 でもそれにしては、しっかりしている。言い訳しないしな。



「おい、お前ら全員に聞くぞ? この中で学級委員長が私利私欲のために金を使ったと考えるやつは?」



「……」



 シンと、静まり返るクラス内。そして、へへ、と男子達が知ったように笑うと、それにつられて女性陣も、はあと息を吐く。



「繭学級委員長‼」



 バシッと叩いたのは、図らずもこのクラスで入ったばかりの再月竹夏さんだったよ。


 ひゅう、さすがヒーロー。かっこいいな。


「ちなっちゃん。私」



「借金なんていくら作ってもね、私達のこのクラスは慎がいれば大抵のことはどうにかなるわよ‼ というか、原因は慎にある‼ だからあなたが信じなければならないのはここにいる全員よ。一緒に、がんばろ!」



 通じるところがあったのだろう。もちろん、彼女のことは彼女で理解されない苦悩だろうが、少し、打ち解けてくれるのが早くなったな。



「いいのかい、慎。本当に聞かなくて?」


「うるさい、くそ野郎が。どうせ、お前にはお見通しなのだろう?」


 そそくさと近づいてきたのは、九(く)雨(ぐれ)だ。ニコニコと、まるで状況を楽しむようだった。



「知らないな~。はぁ、本当はもっと稼ぎたかったけど、これが限界だよね。ああ~、夢のステーキ弁当がなあ! 誰か買ってくれないかな~‼」


「買ってやるよ、だから、お前もクラスから抜けないでくれ」


 クラスがこんなことで分裂なんて、死んでも嫌だからな。俺は、このクラスが好きだから。


「優しいんだね~」



 仕方ない、言質を取った彼の晩飯は、俺の小学生地区で働いた賃金で支払われることになりそうだな。



「慎、大好きだよ~、お礼に頬にキスを」



「止めろ‼ 死ね、近づくな」



 咄嗟の事だった、だから、彼の唇が俺の耳元でささやいた言葉は、しっかり聞き取れたものなのかどうか。



「彼女は嘘をついている、本当は借金地獄だ。早くしないと、身売りだよ?」



 距離を取る九雨、彼は。


 存在している中で一番不気味だった。



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