第九十一話 見た目
前回のあらすじ
絢小町小連と世界の謎を解き明かす。
そのために俺からヒントを探ろうとしているらしい。
こっちはそんな。すごいやつじゃないのだけどな
「つまりだ。レッテルを増やすと、ものや人は違ったものになると思ったんだ」
「違う、もの?」
「そうだ。例えばどんなものでも、一次元、線でしかなかった世界では、点でしかものを確認できない。二次元では線でしか、三次元では形だけしか分からない。これで言えること。それが次元は、【物質の存在を変化させる】と言う事なんじゃないかと思う」
「見た目を変化させる……」
どんどん声は小さくなっていく。それは、手応えありってことだろうか。必死に俺の言葉から何かを掴もうとしている、気がする。
「これが意味するのは、物質が変化するこの世界はまだ隠れている余剰次元があり、世界が三次元じゃない証明になるのじゃないかと思ったんだ。変化させる力自体もこの世界に存在する力、じゃないかと」
「……、まだ、言ってないことある?」
「そう焦るなよ。嘘みたいなヒント、でもいいか? それは沢山あればいいってものじゃない。俺にとっても、小連にとってもな。後伝えるとしたら――」
いつの間にか小連は椅子から立ち上がっていた。
機械がしばらく触っていなかったため、警告音が鳴っていて、それも気づいていない。
「重力が話題になっているだろ? 重力だけが統一理論を複雑にしているって。あれ、世界は九次元でその最終次元が重力だから、重力だけ不安定なんじゃないかと思っている。ほら、だって三次元でも、形しか見えないだろ? 本当は奥行きと言う次元があるのに縦と横しか見えないように感じるってことだ。つまり、この世界はN-1の次元しか安定しないからじゃないかと」
シンと、空気が一段階冷えていくような気がした。あれ。変なことを言ってしまったか?
ぐう! なん、だ!? 抱き着かれた? 彼女の方が少し小さいから俺を見上げてきて。
小連は俺の目を真っすぐに射抜いた。
「『重力』、は構成能力にも、部分能力にも入っていないけど?」
「それを調べるのは俺じゃないだろ? 小連の仕事だ」
そう、と彼女はとても楽しそうにつぶやいた。
名残惜しそうに離れてガタ、と倒した椅子をもとの位置に直して帰り支度をしている? どうした? せっかく使わせてもらえるこの実験室をもう明け渡すのだろうか。
「慎、矢炭 慎くん。保健委員会、いや、この大学に今から入らない?」
誰が入るか。だてに人より大きく違っていじめられたわけじゃないんだぞ。
「俺は高校で、やらないといけないことがある。さっきも言ったろ? お前に任せるよ」
「分かった。じゃあ、依頼料として」
チュッと、え? 何だ、なんだなんだ!
いきなり何をするんだ‼
「コレぐらいにしておいてあげる。また来てね?」
瞬間、何処からか。ビクッとする殺気が俺に向かって飛んできたように感じた。
~*~
どうやら、俺のどうでもいいと思っていた考えを使って新しいヒントを見つけたらしい。考えを纏めるため足早に診療所に帰っていったようだ。
少しの罪悪感。俺はテキトーに気になったことを言っただけなのに。
ただでさえ、俺は他のブレインから脳筋と言われているほど、頭はよくないのにさ。
もっとも小連が言っていた『保健委員会』で、更に目立つ存在になってくれれば嬉しいのは事実だ。
『委員会』というのは、この疑似学園都市で本物の学校を見つけるために動いているそれぞれの学校のようなものだ。委員会はそれぞれの制服を着用し独自のルール持っている。
俺のところ、体育委員会を例に出すと体育関連の授業を中心にしたりとかして日々仕事という名で学んでいるのだ。
誰もが、最初はここに夢を見ている。引きこもりだった俺も、その一人に間違いはないだろう。
一発逆転してやると思っていた。でも結局人が怖くなった、言うことを聞かないやつは黙らせる、を一年生の信条としてしまうほど暴れてしまっていた。
『正義執行委員会』を作り、人をこの疑似学園都市からはじき出す。でも今の体育副委員長のおかげでやっと自分勝手に生きることから他人と協力する生き方を模索できるようになった。
今は学校を探して『いじめや引きこもりの問題に関わった人々を救う学校を作る』ことを目的にしている。
俺は本当は目立ちたくない。でも、学校を手に入れないと叶えられそうにない。
今は着実に、影響力大の自衛隊近く、小学生地区にも足を運んで勢力を伸ばしている最中だ。
さて、と。時間が空いたしちょっと顔を出してみるか。
「竹夏、いるか~‼」
「し、慎。あんたなんかきら」
ブツブツと机に突っ伏している。
古い駄菓子屋で、前衛最強の超能力者が暇そうにうたた寝をしている現場を目撃した。
今日やっと投稿しました。どうもイイタチイリュウです。
この話は休題章、つまり物語と連動していながらも、前まで出てきた解説をメインに取り扱っています。
他の章は読まなくてもこの章でわかる、そんな文章を作りました。
物語は夏に、それも【四争選】に近づいていくのですが、きっと私の文章力がなさすぎるのでひとまず思い出してもらおうと考えた次第です。
どうぞこれからもよろしくお願いします。




