第八十七話 シンの服化(ふか)
前回のあらすじ
二人組、誰だろう。
彼らは生徒会も危険視しているようで、
何かが動き出そうとしていた。
虹の輝きが体育館を包む‼
ドス黒く、その姿をさらしていて無数の黒い羽を持つ竹夏の体はどんどん浄化されていくように見えた。
ポトリ、とポトリと竹夏の頬から零れ落ちる何かがある。
「ほんとうに、いいの”? あたしなんかがやり直して、人も殺した、仲間も裏切った、ブレインに従うしかなかったあたしは、救われていいの‼ ねえ慎、答えてよ。あたしは――、
生きてていいの⁉ 」
「知るかよ」
グルんと、黒い何かがまた纏わりつこうとして、でも、
俺は嘘偽りなく言ってやることにしていた。それが、彼女を取り戻すことになると知っていたから。
「世界は残酷だ。いじめもある、すれ違いもある。どうしようもないこともある。でも、『みんなが言っていたから』ってそれが正解だと決めつけるんじゃねえ」
俺も戻ってこれたんだ。きっと正解じゃくても、答えがお前を待っているさ。
「小さい言葉でも、大きい言葉でも、本当に大事なことはアイツ等が教えてくれる」
俺は体を少しどかした。竹夏は、二年D組のクラスメイト見て、驚くと、笑っていた。
男子達に押さえつけられている、一歩その輪から出たら敵に切り裂かれるかもしれないのに。
繭達女性陣は、靴を脱ぎ棄ててでも駆けつけたいとでもいうように飛び出そうとしていた。
さっきまで竹夏を怖がっていたはずだった。でも、
絆とは、お互い大事に思うことによってどんな亀裂も困難も、克服するんだと思えた。
竹夏はホッとして、そのまま眠ってしまいそうに。
俺から何かが飛んでいく、その白い光は竹夏の体をぐるぐると回って。
ピチャンと頭からその光を被ると、服が、服が真っ白に包まれていく。
俺が中心になる。服化、なのか?
燕尾服の尖った部分がスラリとした足の後ろで高潔な白さを醸し出し、
所々切込みが入っているゴシックドレスのような真っ白な服も合わせて身についていく。でも胸の周りは服の切れ端すらない。
その代わり、胸を隠すものは沢山の天使から抜け落ちたかのような羽が張り付いていた。
どこも真っ白。それだからか、欲情してしまう邪な感情が全く感じられない。
本当に竹夏か? 逆に、不安になるくらいだ。
しかし、目をパッと力強く変えて、真っ赤な、本当に真っ赤な髪のハーフツインテが彼女を竹夏と認めていた。
今まで黒かった『深層化』も、炎症反応の素材が変わったように黄色に変わっていた。
「慎、あたしは戦う‼ もう自分の気持ちに嘘はつきたくないから‼」
「ああ、その強気な態度こそ、お前だ‼」
俺は、二人で敵を見定める‼
「殺す、慎、殺す殺す殺す‼‼‼‼‼‼‼」
「ば、やめろって無迅ん‼」
傷をつけるなと言っていたのに、墨氷先輩に操られた獣人幼女を弾き飛ばして吠える無迅先輩。
「これが、落ち着いていられるか‼ だから言ったんだ、この作戦は無謀だと‼ さっさと三国に宣戦布告する方が良かったんだ‼ それで、俺とフィアンセは歴史に刻まれる英雄同士になったのに。そのまま誰もが羨む結婚を、くそぁおおおおおおお‼‼‼‼‼‼‼」
「ああああああああああああああ」
やばいな、もたない。無理矢理、皆大路は力を引き出されて廃人寸前だ。
「食ラウ、全て俺のためにあるんだ。部外者が俺達の邪魔をするんじゃねぇええええ‼」
「姉さん、これ、不味いよ。かいかくへんこーした方がいいかも」
「た、確かに。なんか力も抜けていくし、やっぱわたしたちでどくだんせんこーまずったかなぁ?」
相手がもたついている、どうやら、竹夏を奪われたのは誤算だったようだ。
「竹夏は無迅先輩を止めろ‼ 俺は、双子共を止める‼」
「分かった。あたしに任せて‼」
「ここはまたいちからやりなおーよ? これほど操りにくいふたりだったってことさ」
「だね。だったらもう、無迅先輩もいらないよねぇ‼ むじん~」
「うるさい、俺は、慎を抹殺――」
「はじきとべ?」
ギャリン、ころ、ん。
ドクン、と無迅先輩が、白目をむいて、
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、ア”ア”ア”‼」
「‼ 下がれ‼ 竹夏‼」
「な、何なのよ、これ⁉」
この雰囲気は……きっと、そうだ。
無理矢理、竹夏のような服化を起こしているんだ‼




