第八十四話 一人で戦うんじゃない
前回のあらすじ
双子共は戦争をしようと語っていた。そして、その戦争が起こった後の終着点。
『時世』という奴の構成能力そのものになる、『竹夏』という存在を概念化する、だと⁉
絶対に、取り返す。今でも俺の答えは変わらない。
誰でも、やり直せるんだ‼
「今回はてぇえ抜いていないよぉ‼ 目障りな生徒会一味にバレないように、情報の出どころを押さえつけているからね~!」
「つまり、ここにいる生徒だけで私達に勝たないといけないってことっさぁ! 獣人幼女、私達、それと再月チャン! さてさて~君達に止められるかな~⁉ ああっと! コッチニ応援がないとは言っていないからね!」
キャピっと目を隠したり見せたりするピースで俺達を馬鹿にする。竹夏を逃がしていたんだ。相手もこの作戦で絶対に取り返したいと思っていたはず、なら。綿密な計画だと腹をくくらないといけないことはいわれなくても分かっている。
しかし、身体強化された獣人幼女でも、うちの生徒は手こずっていた。
体育委員会の新たなイベント、それが連戦で続いたんだ。試合に出場した、実力のある生徒は軒並み体力切れ。さらに悪いことに見学の生徒はどちらかというと情報屋が多かったのもある。俺達、二年D組の情報確認だったからだ。
確かに何人かは実力者はいる。放送委員長の墨氷先輩に、風紀委員長の連水先輩もその一人だ。
でも、レベルフォース、前衛最強の名をほしいままにする再月竹夏と直接ぶつかり合ったら、きっと――負けるだろう。
勝てる可能性があるのは、俺だけだ。せめて、せめて竹夏だけに集中できれば。
構成能力者と自称している双子の男の娘共。取りあえずこいつらは無視でいい。
相手の生命線は、急所は再月竹夏だ。アイツを止めれば、いや味方に出来れば、こっちに勝機がある!
「風紀委員長‼ こっちにこい!」
「貴様、弱小委員会の分際で、最大派閥の風紀委員長に命令だと、ふざけるのも大概にして‼」
獣人幼女と戦いながらこっちに部下らしい奴がガンを飛ばしてくる。余裕そうで羨ましいよ、本当にな。
「まあまて。慎、今勤務中だ。手短に頼むよ」
「は、勤務中でこの有様とか、お笑いものだな」
「こいつ、殺す‼」
元気な外野だな。しばらく黙って欲しい。
「俺が竹夏を止める。だから、あの双子共と獣人幼女を足止めしてくれ」
戦場に、すうっと溶けていきそうな言葉はピクっと反応した連水先輩に届いたようだ。
分かってくれ。勝つことが出来るのは、俺だけだろ。
しかし、
「……、殺す許可は君には出ていない。君こそ、大人しく我々のために足止めしていろ‼」
敵を吹き飛ばし、パッと本を閉じて走り出した。あの連水先輩の目は、竹夏を――。
竹夏は体から伸びているあらゆる黒い羽をはばたかせ、壊れたように笑って迎え撃つ。
黒色の警察官が持っているような拳銃を連水先輩は六法全書から取り出した。そのギラリと光る武器は命を持って命を償わせる、六法全書の紐づけられた力の最後通牒のように見えて。
カチ、トリガーに手をかける。
止めようとする、が、連水先輩のその顔には何故か焦りの色が出ているのが見えてしまい、
命令を受けた、しかし、やはり『法を従える行動者』も人の心を持っている。
こんな時でも人の命を奪うことに迷う、それが当たり前で、普通で、
拳銃ごと体を切り裂かれたのが風紀委員長だと認識した俺は、その迷いは人を弱くするだけなのか、と疑問を持たずにはいられなかった。
敵は、とっくに殺人を肯定していた。
「お~やっときたねぃ! 皆大路ブレインと、レベルフォース、右武最強の『戦争起こし』‼」
「真打ちは遅れてくるんですよ。双子さん達? いや、言いなおそうか。『時空』構成能力者様方」
酷い、それは、風紀委員長に卑怯にも横からいきなり切りかかったからじゃない。
刀龍、無迅。
竹夏、そのブレインである皆大路がまるで置物であるかのように目を隠され、猿ぐつわをされていて、手足を縛られて運ばれてきていた。
口からは人間の尊厳を奪われたかのように唾が垂れてきていて、仲間である自称構成能力者の部下にでさえも運びながら蹴りつけられている跡があった。
人間の道具化、ブレインに人間として生きる必要はないとでも言っているようだった。
「てへ? あまりにもいしきがもどることがお~いので、こうしたの、えへ?」
「風紀委員長‼」
連水先輩の部下が彼を心配して走って近づいてくる。一撃流派で持っていかれたんだ。傷は深い。
意外と冷静だな、だって? そうじゃない、そうじゃないんだ。必死に落ち着こうと俺は、見ていただけだった。
本当は、もう爆発しそうなんだよ。敵はもう能力者の集団じゃない。超能力者の根底を否定している。
これじゃあ、沢山の人を傷つける直接的存在がモノから、人に変わっただけだ。
きっと超能力を開発した人も、こんなこと、望んじゃいない。
「マスター、私がいます! 私を使って‼ それでマスターの力で敵を倒したら――。聞いていま――か! マ――」
俺は、周りが見えていなかった。さっきから、始めから叶帆が一緒に戦おうと言ってくれていたのに、彼女の今の力じゃ勝てないと思い込んでしまっていた。
彼女は聞こえない俺を守るように、ものを投げるふりをして獣人幼女を近づけさせないようにしてくれていたのに。
この戦い、やる前から、相手のペースに持っていかれてしまっていたんだ。
聞こえてはいた。しかし、部分部分しか耳に入ってこない。
怒りが、原因だった。
確か。四争選選考会の時もこうやって怒りで、支配されていて――。
「たのちいことしてんなぁ。なぁ、 矢炭さんよ?」
その声は、俺を更にいらだたせるのに十分だった、はずなのに。
次の言葉でなんか、力が抜けた。しっかり地に足を立てている自覚が戻った。
振り向いた俺の肩に、ポンと、不良のボスが気持ち悪く笑った。
「俺達も混ぜてくれや。あの変態共と、獣共を止めておけばいいんだな」
明日は投稿が遅くなる、またはできないかもしれません、申し訳ございません。




