第八十二話 悪事
前回のあらすじ
ここまで来るのに必死だった。
三年A組、それを倒して、
優勝だ。
「2年D組が優勝、だと。せっかくあの生徒を使ってやったのに……」
3年A組の先生は体育館の2階から歯噛みしてみていた。
『あなた方が使っていたボールはこのボールですか?』
そう、こいつ等が、ボスに特殊なボールを渡したのだ。
『はいはいそのボール。一つ言っとくけどさぁ、後始末は先生の方でやってくださいよ?』
先生が今まで使っていたボールを後ろに隠し、ある特殊なボールをボスに渡した。
そのボールはチタン製で軽くて硬い。さらに中にはバランスを壊すために小さいチタンが入っている。見た目はまったく同じ色だ。これを頭に投げれば……重症になるのは分かり切っていた。
「へ、先生方も大変なこって」
そういってチタン製ボールをボスはつかみ競技場へと戻っていく。
ボスは実際、もう慎には関わりたくなかったらしい。でも、ある筋の関係者がどうしても恨みを晴らしたいというから、ボールを投げるしかなかった。だったら最後までやる事に、したらしい。
そうだ、俺がクラスに嫌われるように、リーダーの女子に狙いを定めて。
それが、ウサギ耳のパーカーを羽織りうるさいくらい声を出している繭に当てることに決めた理由だ。とボスはあの時のことを振り返って言っていた。
でも、俺にクラスメイト達はついてきてくれた。尭志の一声がなかったら、どうしようもなく俺も、クラスも、立ち直れなかったかしれなかった。けど、
俺達の、勝ちだ。
「ここまでだ。先生達」
俺達の優勝をたたえる歓声の中、ひっそりと風紀委員長が自分の部隊で二人を取り囲んでいた。
ざわざわとしていたので、騒ぎに気付いたクラスの何人かも、もちろん俺も、遠くから見ていた。
「な、なんですか‼ 私達は別に何も――」
「生徒会長が愛夕さんの『運謎』を使われたところ、あなたたちが主導しているのが分かりました。さあ、裏で糸を引いている組織を吐いて下さい‼」
「いや、違う‼ 私じゃない。船占、そう‼ 船占先生の指示のもとやったのです!」
「本当ですか。船占先生?」
風紀委員長はたとえ言い逃れしても無駄ですよという風に船占先生に聞いた。船占先生は風紀委員長を見て、その目を胴上げされている少女にうつし、ため息をついて言った。
「はい。私がやりました。お金欲しさに……」
とても乾いた笑みを浮かべながら諦めたようにそう告白した。
その発言に風紀委員長は、少し満足そうだった。
「そうですか。では生徒会、ひいては校長先生から通達です。今回、この連水宗宏の裁量に任せるとのことでした。よって先生達二人は1か月の謹慎処分としその間に生徒会で先生達の責任について議論することとします!」
風紀委員長はそう堂々と宣言した。
「そんな、今私は指示に従っただけと船占先生が言ったじゃないですか。なのになぜ私も―」
「『指示されていたから自分は悪くない』と、本気で言っているのですか? あなたがチタン製のボールを渡したのは明白なのです。目撃証言、もとい開発工場も全て押えました。あなたも同罪、いえそれ以上かもしれませんね!」
「そ、そんな‼」
どうやら三年A組の先生である彼の問題行動は、一つぐらい罪に問えなくても変わらないらしい。
「1つよろしいでしょうか」
「なんですか。船占先生」
「私は謹慎処分が終わったら一からやり直してみたい。島への転勤を生徒会長に打診してもらえませんでしょうか」
船占先生は目に火がともったような、まっすぐな目で問いかける。すると、風紀委員長、連水はくすりと陰のあるイケメンスマイルを作り、船占に近寄った。どうやらその姿勢が気にいったらしい、優しく自らの手で手錠をかけた。
「考えておきましょう」
「ありがとう、ありがとうございます」
船占先生、彼は、これから再出発する。後に、疑似学園都市で有名な熱血教師になるのは、そう遠くない未来だった。
だが、三年A組の先生は、もう救いようがなった。
「ふざけるなぁ‼ ここで捕まったら俺が今まで積み上げてきたものはどうなる! 何もかも捨てたんだ、今更クソみたいな生徒の子守なんてできるか! どけ、どけどけどけぇええええええええええ‼」
「暴れるな‼ くっ!」
風紀委員長の部下達は船占先生の罪を認める姿勢に力が抜けてしまっていたようだ。いきなり暴れる先生にスキを突かれて包囲網を突破されてしまう。
「きゃさあああああ!」「つ、捕まえろ!」
「どけ、どけけけけけけけけけけけぇええええええええええええ‼」
目は血走り、人を突き飛ばし、自分が今なにをやっているか、三年A組の先生は自分のことしか頭になかった。
そして、
逃げていなかった、一人の女子生徒に。縋りつくように抱き着く。
「私は『正義執行委員会』の刀龍の命令に従った。これは緊急事態だ‼ 再月竹夏! 俺を助けろ! ここにいるやつらを殺せぇえええええ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
「……」
「竹夏、そいつから離れろ!」
くそ! あいつに離れ過ぎていた。優勝で気が緩んで!
「『正義執行委員会』‼ 聞こえているんだろぉお! こいつがお前達とまだ繋がっているのは体育館でチタン製ボールを受け取ったことから分かっているんだああああ! 今すぐ助けろ! じゃないと、コイツを殺――」
瞬間、だった。
ジリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ‼
『高エネルギー攻撃感知、衝撃まで、二、一‼』
べちゃぁ、シュウシュシュシュシュシュシュシュ。
壁が、体育館北側の壁が、どんどん溶けだした⁉
「いぇ~い、助けにきたよ~! 私、『双子ちゃんねる』朱象 奏太とぉお~‼ 「朱象 未来で~す。またせたね~色々後退せんせ~、それに竹夏ちゃ~ん‼」
申し訳ございません。遅くなりました。




