第八十一話 決勝、と
前回のあらすじ
心を許した相手に嫌われる。
でも、たっか~は気にしていなかった。
最後まで、俺達が優勝することを信じて――。
決勝戦、試合は体育館などの割り振られた会場で1競技ずつ行われる。その会場、野次馬達は妙な興奮に包まれていた。
なぜなら、弱小クラスといわれていた2年D組が優勝候補の3年A組と一番をかけて勝負するというのだ。これは野次馬達もどぎもを抜かれたらしい。
というのも、裏で賭け事があり、2年D組と書かれた馬券のようなものはそのクラスメイト数人以外存在しなかったからである。ほとんどが3年A組に賭けていた。
もし2年D組が勝ったら大穴。2年D組を弱小クラスと呼べなくなるかもしれない。そんなこともありドッジボールの決勝戦は白熱の元行われようとしていた。
「さ~て妙な興奮に包まれる体育館第二競技場、これらの試合を放送部の黒氷さんと一緒に解説していきたいと思います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。この試合はなんといっても2年D組ですね。事実彼らのフォーメーションは完璧だと思います。普通そこまでしないドッジボールの基本ともいうべき一列横隊の並び、そしてバレーの基礎を盛り込んだ当たる時の手の作り方、そして極めつけは全速前進のキャッチャーから見えなくするチームプレイ、これらのプレーは背の高い選手がいないといけないという大前提がありますがそれを克服してのプレーの仕方はうまいと思います。しかし、今回は決勝戦、しかも前の試合で1人欠員が出ています。新しく入った選手が上手くチームに溶け込めるか。チームプレイが相手選手にきくか。これが2年D組の焦点だと私は思います。逆に3年A組はチームプレイを打ち破り、欠員のスキをかいくぐり野球部の本領を発揮できれば普通に勝つことができるでしょう」
「ありがとうございます。では出場選手のプロフィールに移りたいと思います」
実況の方も今回の試合について、前に行われたバレーボールの決勝戦以上に盛り上がっているようだ。
俺は緊張する体に鞭うって対戦相手を見ていた。普通相手は『弱小クラス』と当たるときは蔑む目や侮蔑の言葉などを言う人が大半だがこのクラスのほとんどは違った。みんな強敵と当たるような顔をしている。それが勝者の余裕なのか決勝戦の緊張なのかはわからないがとにかく一筋縄ではいかなそうだ。
「お~君、君の真価が試されるときだよ。私を悲しませるんじゃないぞ。このちゃらんぽらん」
「わかった」
俺の顔を繭は満足そうに見ると、
「最後のエンジンだ。尭志の分までみんな頑張ってくれ‼」
『よし‼』
競技場に入っていくみんなは、とてもたくましくみえた。
「2年D組、12番アウト」「3年A組3番アウト」「2年D組、5番アウト」「3年A組6番アウト」
試合は接戦。相手も同じ1列横隊の構えを見せたのだ。あとバレーの構えもまねをしている。
しかし、一番大事なことは相手全員が野球部で男だということだ。こちらの女子は腕力はある方だけど、それは男子と比べた時は普通の腕力と答えるしかない。それでも女性は2回当たっていいから全速全身のチームプレイの生き残りやすい壁的な役割を担ってくれている、けど。
「さて、ドッジボール大会もいよいよ大詰め‼ なんと2年D組は4人残し、3年A組は一人という大判狂わせが起こりました! しかし、2年D組の内野に残っている男は一人だけ。残りは全員女子という布陣です。だが、相手が悪いか! 3年A組で残った一人は、野球部キャプテンを務め、なおかつ四天王争奪選選考会を勝ち残ったエリートの、紅院智将選手です‼」
うぉ~と観客が智将に歓声を上げていた。そしてそれに手を上げて答える智将選手、まるで自分が勝つことが当然という振り方だった。
「君が噂の救世主さんだね。選考会ではお世話になった。君がサンドバックになったおかげで僕は簡単に四天王争奪戦の切符を手に入れることができたよ」
「……どこがエリートだよ。ただの欲に駆られたカスの間違いだろ」
「ちっち、わかってないな慎君。世の中はコネの力で動いているんだよ。君がたとえ1人で頑張ってもコネの前には何の意味をなく崩れさる。そういう世の中なんだよ。ただ、君のクラスメイトの尭志君……だったかな。彼には悪いことをした。まったくね」
そういってボールを上に投げたりして遊んでいる。
「……今なんつった」
「うん? コネの力の前ではむ――」
「そんなつまらない話じゃねーよ。尭志になにかしたって話だ」
「口で説明しないとわからないのかい?」
その口元は気持ち悪いぐらいに歪んでいた。
「そうか。そういうことか」
ふらっと俺は女性陣の防御壁から前に出た。
「お~君‼ 君は前に出てはいけない‼」『お~君さん‼』
そう、繭と双子がとめたがそれを振り払って前にでた。
「そうそう、そんな簡単にキレるところも直した方がいいよ。慎君‼」
野球部の腕力が加わったすさまじいスピードのボールが俺の足を狙って飛んでくる。勢いが、尋常じゃなかった。
バチィイイイイイイイ!
足に、当たった。誰もがそう思っていた。
「これはチームにとって痛いぞぉ! 慎選手、ここで足に当たって――‼」
「な、何だと……」
「お~君!」
競技場にいた観客、選手は目を疑ったらしい。足に飛んできたボールを、足に沿った片手で、つかませてもらった。外野から見ても威力があるボールで、しかもまだ回転している威力のボールを。
完全に、物理法則を無視しているように見えただろう。
「まさか、あの噂は本当だったのか!」「ブレインが解決したのって、その超能力者がしたことだと思っていたのに!」
「ちっ。また手品を使ったか。どういうものかは知らないがしかし! 君達のチームプレイの弱点は知っている。あのチームプレイは1人では意外性に欠けるのであまり効果はない。しかも、ボール回しは投げる段階で女子が投げるタイミングがある。そこを狙えば簡単にボールは奪い取れる!」
智将は負けるはずがないと勝ち誇っている。
「お~君、どうする?」『お~君さん』
繭と双子は聞いてきた。俺は優しい笑顔を作って、
「いつもどおりで」
そういった。
「よし、あとは任せた。これで決めろよ。このてくてくぼーし‼」
繭は俺の体に軽くタッチして双子と一緒に走り始めた。
「ふん。馬鹿ですね。そういって尋問を繰り広げている間に私はラインのギリギリまで来た。さて……右か左か、はたまた真ん中か」
智将は女子の動きに注目していた。そこから俺がボールを投げてくると思ったからだ。
「消えろ、クズ野郎」
俺は、飛んだ。天高く。これが最後まで残した、俺達の決め技だった。
「は、まさか……ジャンピングスロウ、ファイヤボールだ、と」
ヒュウうううううウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ‼
繭達を俺は飛び越えて、ファイヤボールを投げてやった。その威力は人間技じゃないほどの威力がある球になったよ。
「この程度、防いで――ぐぁああああああああああああ‼‼‼」
文字どおり吹っ飛んだ。球に押されてコートの外に出て壁に叩きつけられ、ボールはポロリと地面に落ちた。
「場外~‼ 智将選手アウト‼ よって優勝は2年D組ー‼」
『よっっっっっっっっっっっっっっっっっっしゃあああああああああああ‼』
観客からの歓声、それに合わせて2年D組が全員、飛び上がって喜んでいた。そしてこっちへかけよって俺を胴上げしようとしてきたよ。さすがに恥ずかしいので、逃げさせてもらったけど。
それならとみんな、プラス観客席で見ていた叶帆がおりてきてクラス委員長に駆けよって胴上げした。クラス委員長は泣きながら、まんざらでもなさそうに胴上げされていたよ。
それを遠くで見つめる、すぐに当たってしまった竹夏。彼女の今の性格だったら。嫌でも混ざってくるはずなのに。彼女は黙って俺達を見つめていた。
優勝の余韻に浸る時間もなく、その疑問の答えは、確実に動き出し始めようとしていて。
お疲れ様です、イイタチイリュウです。
昨日は投稿せずすいませんでした。本当に気をつけます。
そして、今日は何話か投稿していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。




