第八話 依頼
前回のあらすじ
ヒーロー
信頼できないな。と、
避けられた??
改め、自衛隊基地の近くにある土地、そこには複数の自衛隊、警察官、研究者、超能力者、その他もろもろが席を置き切磋琢磨する場所、それがこの疑似学園都市である。
ここにいることとは将来国の中心になる人材になるということ、小さい子供だとしてもここでの目標があるのならみんなこぞって行きたがる場所だ。それはつまり店もその人材と懇意になるためにあちらこちら店を構えることになる。
もっとも、超能力者というものと関わる以上危険はつきもの。なのだが、国の補助金で生徒が壊してしまったものを新しく直してもらえるので意外と商人には居心地が良かったりする。
しかも、日本で災害が起こらない所はないが、ここは超能力者でその災害も予想できるので安全に仕事に専念できるところもこの場所に来る一つの理由になっていた。
つまり、金がかからないということである。まあ、超能力者と懇意になった店限定だが。
「これで八か所目か」
俺は低ランクの依頼である荷物届けを集中力皆無の叶帆と一緒にやっていた。
この依頼も授業の一環。店の簡単なお手伝いを任される。それで疑似学園都市で使用できるペンから四角の枠に広がる携帯にお金と評価が入るようになっている。
だが甘いことばかりではない。集中できなければ足元をすくわれる。理由はいたって簡単で依頼を邪魔する依頼というものが存在するからだ。
もっとも依頼を邪魔する依頼はあまり低レベルの依頼は狙わない。達成依頼報酬が美味しくないからな。
しかしさすがに。叶帆が空き缶などで転ぶ姿を見るとイライラしてくる。だから、
「叶帆、辛いなら先に帰ってもいいんだぞ」
とお前は必要ないといわんばかりの声で言ってみた。
実際、いらない。なぜなら叶帆を万が一のために連れて行っているだけだから。
しかも、この依頼はただ指定時間までに運ぶだけの仕事、邪魔者が出てくることはそれすなわち依頼失敗である。
「だ、大丈夫です。さあ、あと一つです。頑張りましょう」
叶帆が明らかに無理しているのがわかる言葉遣いで言い、走っていく姿を見て俺は少し、怒りが湧いた。
あの不良少女達とその後ろにいる委員会である。あいつらのせいでイライラしないといけないと思うとあいつらにやり返してやろうかと考えてしまう。
だがやり返したなら、後でかっこつけだの好きだったんだなどと言われてしまうだろう。さてどうする……。
「おばあちゃ~ん」
「あら、叶帆ちゃん」
叶帆が走りながら元気よく手を振って駄菓子屋にいるおばあちゃんに声をかけた。おばあちゃんも手をゆっくり振り返す。
ここのおばあちゃんは足腰が弱く、医師に定期的に見てはもらっているが薬を遠くにある薬局に買いに行く力がない。それを慎達が荷物のついでに届けているのだ。
「悪いねえ。私が自分の力で行けばいいんだけど……」
「そんなことないよ。私が自分でやっていることだもの。おばあちゃんは気にしないで」
全く。お金でこの薬を運べば今は少ない駄菓子屋の協力者として依頼報酬が入り学校の評価も上がるのに。叶帆はそれをしたがらない。
なぜなら、このおばあちゃんが余り世間に出たがらないからだ。それを叶帆が汲み取っている。自分も、お人よし過ぎると思いながらも許可していた。
理由はわからない。まあ、ここで恩を売っておけば後々帰ってくるだろうと軽く考えていた。俺は現金な男なのだ。
構えている駄菓子屋は古い。中の照明はついておらず、日中でも暗く感じられていた。
商品は真ん中に数々のお菓子が並んでいて左側に日用品、右側には冷凍物を冷やすアイスケースがあった。
コンビニと比べるとやはり清潔とは呼べない内装をしていたが、今の社会にはない大切なものがあった。子供たちを見守る暖かい心である。お客様としてではなく近所の子供としての目、それが駄菓子屋には詰まっていた。いや、あふれていた。
「そうだ。部屋の冷蔵庫にアイスが入っているから持ってきておいで」
「そんな‼ お礼なんて大丈夫だよおばあちゃん。私はこの駄菓子屋が気に入っているの。ここに通っているだけで幸せな気持ちになるんだから!」
「いやぁね。私も食べたいんだよ。おばあちゃんのささやかな楽しみの一つでねぇ」
そういわれると叶帆はさすがにうっと言葉を詰まらせた。そして一通り悩み、結局従うことにしたらしい。そそくさと冷蔵庫のあるリビングまで歩いて行った。おばあちゃんはそれを見守ると、こちらを振り返り、
「あの優しい子がつらそうな顔をしているねえ。これじゃ、商売にならなくなるかもしれない。せっかくよくしてもらっているんだけどねえ」
「……」
おばあちゃんは叶帆の変化に気づいたのだろう。こちらを試すような瞳を向けてきた。俺はその瞳から視線を反らす。
しかし、おばあさんの目がどんどん細められてきたので俺も何か言葉を返さなくてはいけないのかと焦燥感に駆られ、
「俺にはどうすることもできません」
と、おばあちゃんに本当の気持ちを吐露した。それはここまで考えていたことと合致しているからだ。
いじめというものは解決できそうな問題であるが、たとえ先生に報告しても解決できないものもある。そればかりか逆にさらに苛められる可能性もあるのだ。ゆえに、俺は手出しができない。たとえ卑怯者といわれようとも。
しかし――だったら、
「そうかい。なら、一つ依頼を出そうかね」
おっと、このおばあちゃん俺の心が読めるのかな。と俺は驚きながらおばあちゃんに聞いた。
「なんの依頼でしょう?」
「同じ気持ちを分かってもらうでどうだい?」
「せっかく叶帆が隠そうとしたお立場を表に出すことになるかもしれませんよ」
「その時はその時さ。どうせ、うまくやれるんだろう?」
上手くはやれるが、もしかしたら叶帆のいじめ自体はなくなったりしないと思うけどな。
「わかりました。その依頼、承りましょう」
お前やり返したら好きだと思われると言っていただろ、だって? いや違うね。 なんだろうと依頼があった時点でただの仕事と同じ、だろ?
申し訳ございませんでした。遅くなりました




