第七十六話 作戦
前回のあらすじ
クラスマッチ、俗にいうクラス対抗戦が始まった。
今回の大会は超能力者は能力を使わない方針らしい。
それに、色々と特殊なルールが与えられているようだ。
構成能力等々、色々きな臭い相手のせいで迷惑をかけているし、絶対に優勝をしたい。それが恩返しになるはずだ。
「さてそして~! 今回の最大の敵はこのクラスだ、バン‼」
大きな声で壇上に立ったクラス委員長がホワイトボードみたいなものに映し出されている映像を叩いた。
入ったそこは最弱クラスということでかなりの金をむしり取られた特別ミーティングルームである。そこのモニターに映るのは3年A組のクラスだ。
このクラス、ほとんどの男子が野球部に所属しているくせにドッジボールに力を注いでいる。理由を俺のお金で、俺のお金で‼ 新聞部に確認を取ったところ、1年A組には勝てないかららしい。どんだけ強いんだろうなあの組。ちなみに進行は尭志が務めている。
「さてこれらに勝つ知恵を、分かれて一回戦を見た知識を総動員してみんなで考えていきたいと思う」
クラスマッチごとき、といってはいけないだろうがその練習をしているうちのクラスの生徒は数えるほうが少ない。勝てるかどうかも分からないからではない、その日を生きるために非効率なりに授業の予習や小さい依頼など、挙句の果てにはアルバイトまでしている生徒が多いのだ。
「はい」
ここではきはきと手が上がった。千鶴である。
「少し調べてみたのですが、正攻法で菱形囲みではだめなのですか」
菱形囲みとは外野の右、中央、左、内野の菱形をモデルに相手を追い詰める戦法である。
「今さっきルール確認したらダブルパスとして反則らしい」
そうなんだ、じゃあどうすればいいんだよ‼ と、愚痴がそこらじゅうから飛んできた。
「あと、説明しとくとその必殺技を温存しながらクラス対抗戦に勝ちのこらないといけない。策はバレたら簡単にメリットがデメリットになるからな」
進行の尭志の言葉で、ウッと言葉に詰まり静まり返る室内。でもその中で俺は柄にもなく本気で考えたくなっていた。
「ちょっといいか」
「なんだ。お~君」
「ドッジボールのルールを確認したい。教えてもらえるか?」
「まあ、だいたいのルールはラインを踏むな、相手のコートのボールは空中だったらとっていい、5秒以内に投げろ、さっき言った同じ内野、外野同士のパスは禁止、顔、頭はセーフ、、2人同時に当たったら二人ともアウト、当たっても誰かがキャッチすればセーフ、内野は外野の外にはみ出ての走りなげは禁止、外野が内野を当てても中に入れない。あとはボールデットかな」
尭志は生徒会から渡されたルールブックをわかりやすく解説していった。
「そうか、ならこんな作戦はどうかな」
俺は作戦を話した。これなら勝てると、実感しながら。
「は~はっは、俺様は1年H組の柿津端しょ――ふげえ‼」
「やった当たった」
サンキュー、ナイスとそこらじゅう活気のある掛け声が第一体育館を満たしている。やっぱり、こういう自分を素直にだせる大会はいい。1年生の時はただこのような行事を馬鹿にしていたが、今のクラスにはそんな過去の十字架を突き付ける人もいない。今、俺は。心の底からみんなと騒いでいたい、そうすれば竹夏の心は戻ってくるだろうと、本気で考えていた。
「さて、では初戦だぁ~。みなさん頑張ってろくでなしどもから勝利を奪い取りましょ~‼」
『お~』
「おお~」
大きく空に手を伸ばす竹夏にまだ変化はない。しかし、これが一番大事なことだと、経験上知っていた。
作戦通りに動く覚悟は決まった、俺達は気合いを入れなおすと、2年Dクラス、最初の下剋上の1歩を踏み出し始めた。
「あたりやがれぇ!」
と相手選手がすごい速さのボールを飛ばしてきた。それにわざと俺はあたり中に浮かんだボールを尭志が確保する。
「やりぇ、とった!」
掴んだボール、尭志はくるくると回転させて相手をおちょくる。
「くそ‼ 弱小クラスの分際で」
今の俺達は相手から見て一列横隊で並んでいる。この方が仲間が当たった時ボールをとりやすいのだ。しかも、バレーを打ち返す手の形を全員がしているのでボールが上の方に飛んでいくようになっている。
これが、ドッチボールのおける作戦だった。
「さあ、こんどはこっちがお返しをしないとな! みんな‼」
『おう‼』
一列横隊の俺達は、尭志を置いて前の方に走りこんだ。
「な、なにを……ボール‼ 選手が見えない‼」
そう、バレーボールでいうとサーブのように拾おうとする相手選手からボールを見えなくするのだ。これで相手はボールがどこから飛んでくるのか、かなり分かりづらくなる。
「行くぜ~3‼」
そういってあとから走りだした尭志の指示で右から3番目の人が場所を開ける。そしてその穴を縫うようにボールが飛んでいった。その勢いがついたボールが相手選手の一番取りにくい場所、足に当たった。
「10番‼ アウト」
「くそ‼」
審判がそうジャッジするなり相手選手の強そうな人が内野から外野に出ていく。
そうやって強そうなやつを外野に出すとボールをとられない限りこちらの有利である。
「慎君‼ うまくいってるな」
「ええ、クラス委員長。相手が対策にもたついているので助かっています」
今三回戦である。今まで倒してきたチームは一列追横隊も知らなかったりしたドッジボールを詳しく知らないチームと当たってきた。俺達は、どうやらついているらしい。このままだったら優勝も狙えるかも。そう、思っていた。
「勝者2年Dクラス‼」
『よっしゃー‼』
メンバー12人は手放しで喜んでいる。女性達は抱きあい、男性達はお互い肘をぶつけあってして感情を表していた。
「うえ~ん‼」
「ク、クラス委員長‼ なんで泣いているんですか」
「だって、こん、なに勝ち進んだの、初めてなんだもの。ひっぐ。みんな私のせいでつらい目にあって、それでも私についてきてくれた。そのことに感謝、を、ひぐ」
繭は号泣していた。それにつられて周りのクラスメイトも目に涙をためている。
「俺たちはクラス委員長を信じてついてきたんですよ。誰のためでもない自分のために。泣かないでください。委員長が言ったんですよ。笑えばいいって」
なぜか俺は繭の頭の上に手をポンとおいて慰めていた。少しぶっきらぼうな感じを出していたほうがいいな。なんかハズいからさ。
「ぐす、お~君は泣かないんだな」
俺? そうだな。
「俺の涙は、遠い昔にかれちゃいましたから」
そういったら周りから大笑いされたよ。
くそ、こいつらぁ。
今日は今までの反省も込めて何話か投稿していきます。よろしくお願いいたします。




