第七十五話 クラスマッチ開始!!
前回のあらすじ
敵の本拠地から生きて帰ってきた。
俺を叱ってくれるのは、叶帆と井鳥先輩の二人。
そして、『時空』にどうやったらなれるかの仮説調べていたことをもとに、竹夏の状態を詳しく調べて小連が分かったことは――。
「さ~てぇ、やってきましたクラスマッチ‼ ではでは最初に、このクラス対抗戦は少し複雑な大会ルールがありますのでそれをおさらいしていきましょうか~! なんと今日はあらゆる解説者として有名である放送委員長の墨氷さんに来ていただいています! 解説よろしくお願いします、墨氷さん‼」
生徒会の連中の一人だ。喋ったことはまだない。彼が近くにいると生徒会は竹夏を監視していると思われるだろうが、この件について、体育委員会と保健委員会に任せろと二人の副委員長、井鳥先輩達が圧をかけたらしい。
だから放送委員長が来たのも偶然だ。事前に井鳥先輩がこのクラスマッチの解説役としてオファーしたんだと。
「きゃはははは! うんどーかい。だれでもかかってこ~い‼ この竹夏ちゃんが相手になってやるぞ~ぉおおおお!」
「はいはい、竹夏ちゃん。ここで大声を出さないでくださいね」
つまり、生徒会としては俺の罪状、どこに行ったか、竹夏の取り調べ、相手の詳細など突っ込みたいところが沢山あった。それを、俺が竹夏の治療を優先したいといった言葉を信じてくれて、二人の副委員長が生徒会を黙らせてくれたんだ。
しかし、生徒会を無視したことで何かあったら、それは井鳥先輩達の首が飛ぶことになる。
「キッチリお前が見ていれば生徒会長は何も言わないさ。だが、か弱い乙女と一緒の部屋は許さん‼ だから、その。俺の部屋にだな」
「井鳥副委員長にご迷惑をかけるわけにはいきませんね‼ マスター、久しぶりに固定してある仕切り壁、スライディングウォールを取り払いましょう!」
「そうだな。大丈夫です副委員長、ありがとうございます」
「あああ、ああ、あ」
先輩は、「せっかく、私の部屋で弟子と師匠が織りなす――」と小声でこっちに向けて届かない手を伸ばす、が。何がしたいことがあるのだろうか? 二人だけの会話は何度もあるし、意味が分からん。
この催しは疑似学園都市で存在している全ての体育館や校庭を使って行われる。その中で俺達は、ミーティングのために会社のある一室を借りていた。今はそこにクラス運営委員と向かっている。
「はい。解説を務めさせていただきました。墨氷です。では本大会の絶対的な約束事で1つ大事なルールがありますので説明しましょう。それはクラスで大会を出場するということです。たとえば野球とサッカーが同じ時間でかぶっていた場合、野球に戦力を固めるか、逆にサッカーに戦力を固めるか、あるいは両方バランスよく配置するのかをクラス運営委員が率先して舵を切ります。試合時間五分前には会場に集まっていただかないと失格です。つまり、どれに的を絞るのか、はたまた、バランスよく配置するのかをクラス全体で前もって話しあわなければどの競技にも出場できません。ちなみに会場に来なかった場合クラス運営費がどんどん減っていくのでクラス運営委員は頭をひねって考えてください。以上クラス対抗戦の基本的なルールの解説にうつります。まずは男女でポイントの割り振りが違います。男がサッカーでは一点の所を女性は2点。女子はドッジボールの場合2回まで当たってもいいなどと……」
「イェーイ。こっちには称号αを持っている潜在能力おばけがいるんだ。負けなしですなぁ~」
「学級委員長。今から力入れていたら怪我しますよ?」
俺と並んで歩いてくれていた粕駕嶺繭と桧杉尭志はこんな俺に何も聞かず、竹夏さえも受けて入れてくれた。
前にいたクラスだったらきっとクラスから排除されて、この竹夏の治療になりそうなクラスマッチも参加出来なかっただろう。
そう、治療になるんだ。
~*~
『そんなことは分かっている! 敵の自称『時空』構成能力者に操られて――』
「違う。操られている以前の問題。その敵は、この世界そのものを否定しているの。竹夏を調べて、協力してくれた小さい女の子の話を聞いてみてわかった。竹夏はこの世界の理論から別な法則にコンバートされている』
『ど、どういうことだよ‼ 竹夏は人間じゃなくなったってことか⁉』
「それ、限りなく今言ったことに近いと思う。敵の構成能力者の法則は基本的に『創造』に内包されている『時間』という部分構成能力をコピーし、全ての構成能力、『起点』と『空間』に付与しているんだと思う。つまり、敵の力を勝手に名付けるなら『時空』、『起間』、という新しい構成能力で世界を乗っ取ろうとしているってこと』
『……、まてよ。それじゃあ、『時間』は構成能力の潤滑油になったってことか?』
「潤滑油になるだけじゃない。私の考えた通りなら『創造』から『時間』が部分構成能力として抜けたことになる。つまり穴の開いた構成能力の一つ、『創造』が変わった『時世』というものが、あるのなら。敵の『時世』構成能力者は未知の部分構成能力を持つことになる」
『もしかして構成能力者を殺し、世界にそれを浸透させるのがやつらの目的……』
~*~
俺は頭を振る、敵の目的がはっきりしたのはよかった。俺を欲しがったのは『時間』を奪って何か企んでいるという事だろう。『正義執行委員会』の連中は知らないようだったが、確実に『時空』構成能力者の双子共は知っている。
いいぜ、やってみろよ。俺だけでなく、姉さんさえも傷つけるのなら。例えどんなことがあっても潰してやる。
『時空』にどうやってなったとか、聞きたいことは沢山あるが姉さんが危険になるのなら話は別だ。
『師匠』にも、そのうち会わないといけないだろうな。
「ということで我がチーム2年D組はドッジボールを優先します。チームメンバーは私達クラス委員とお~君、竹夏ちゃん他数名を合わせた12人。それ以外の人たちはそれぞれ話し合って競技に出るだけでいいよ。みんな。勝ちに行くぜぇ~!」
『お~‼』
さて女王様のために働きますか。いっちょがんばろーと励ましの声が響いていた。
どうやら、考え事をしている間にミーティングルームに着いていたようだ。周りには俺のクラスの生徒が掛け声をあげていた。
「おいお~い、お~くんさんよ?」
「……」
なぜか、心が少しほっとする。これは治療でもあるとわりきっていたが、俺も昔、入学したときはああやって友達を作れるんじゃないかと周りの壁を取り払お……。
「おい、お~君‼」
「な、何だよ」
「いや、なんか遠くの方を見ていたからな。お前がそんな顔するのはまだ早すぎるぜ」
尭志がそう大人ぶる。なので、俺は喉からせり上がった疑問をいつの間にか口にしていたよ。
「お前何歳だよ」
「16」
と笑顔でそんなコントを繰り広げていた。




