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第七十四話 帰還

前回のあらすじ

この場所の仲間を意を決して裏切り、表道は別の道を歩き出すことにしたようだ。

誰の言葉が嘘で、誰を信じればいいのか。

この時は、ただ我武者羅に突き進んでいることが正しかった





「きゃはははは! くすぐったい、みゃめて~!」



「暴れないで竹夏。上手く写真がとれない」


 今いる場所は絢小町(あやこまち)小連(これん)の診療所だ。俺達は『疑似学園都市の隙間(ランダムリリーフ)』を去った後、すぐにここに竹夏を連れてきた。


 なにせそのあまりの変わりように、俺は心配になったから。


 絢小町は何も言わず状態を確認してくれるようだ。そして今までの経過を私は知っている、と静沙に俺が言わせると二人で協力して竹夏を調べてくれた。



「ま、マスター‼ ぐす、わたし、私は心配しました。それに置いて行くなんて、まだ私を信じてくれていないかと、ううううう」



 おいおい、生徒会に連絡はしなかったが、布印(ぬのじるし) 叶帆(かなほ)には連絡したらしい。


 今は真夜中で大雨だ。きっとすぐに飛んできたのだろう。着替えをする時間さえ惜しかったようで恐竜のアニメキャラだと思われる着ぐるみのままだった。



 着ぐるみのおかげで髪の毛は濡れていなかったがそのストレートになった髪型は少し湿っぽかった。



「ああ、心配かけてごめん。だから、泣くな」


 俺は、小連(これん)が竹夏を調べている間、叶帆、とここに来たもう一人。迷惑をかけてしまった彼女達に怒られることになったよ。



「慎、まだまだ俺にシバかれたいらしいなぁ。よし、これからは週三日だった稽古を毎日にするかぁ?」


 ちょ、ちょっと待ってくれ矛夢先輩。俺の神聖な自由時間が無くなるってことかよ!


 伊達に今まで定期利用のサービスをしていないんだぞ‼ 自由時間が無くなったら、どうやってあのキャラを育てながらあのアニメを見ればいいんだ!


 しかし、思考の決壊はそこまでだった。井鳥(いどり)矛夢(むむ)先輩に頭をぐしゃぐしゃにされて無造作に撫でられる。



「よく帰ってきた。馬鹿」



「はい、勝手なことをして、すみませんでした」



「でも、これはこれ。そこに正座ぁ‼」


 余りの剣幕だったから、正座をすることに何の疑問も持たなかった。診療所の待合室の床は思いのほか冷たかったことを、俺は心に刻んでいかないといけないだろう。そうひしひしと思う時間になったよ。





 ~*~

 ある程度お叱りも受けて一息ついていた時、猫のようにあっちにフラフラこっちにフラフラしている小連が目に映った。


 誰か探している、のだろう。けど、目的の人を見つけられないらしい。


 俺の横を通り過ぎる、目が合う、違うか。こういった方が正しい。目は合っているのだが彼女の網膜には俺の存在が見えていないような動きをしている。


 探し相手は俺の近くにいるのだろう。さっきまでいた叶帆だろうか、矛夢先輩だろうか。


 それにしては、なんかこう、あんでみつけられないのぷんぷん、と頬を膨らませている。意地悪していると思われているらしい。


 小連をそこまで手玉に取るとか、いったいどんな奴なんだと少し興味が湧いて、くる? え? まさか‼


 俺はすぐにペン型携帯を四角い枠に変形させて仮想画面を開き、メッセージを飛ばした。


 すぐそばでレロレロレロ、とした着信音がなる。前に聞いていた音から着信音を変えたらしい、それを聞いた小連が怒涛の速さでペン型携帯の仮想画面を開いた‼


 ぱぁ~と顔をほころばせてとろんとした顔つきになる。ちょっとハズいな。俺からのメールに反応した彼女は怒っていると思う、しかし何処か可愛さが見え隠れする顔でメールをすぐに返信する。




『どうして隠れているの! 私の目の前に竹夏(ちなつ)が来たから、てっきりあなたが連れて来たと思っていたのに、酷い‼ 気味の悪い闇委員会の生徒もいるし。最初は一人で心細かった。ぷん!』



 あれか。うん。どうやら俺が連れてきたと認識していなかったらしい。



 ここまで男が目に映らないのはもはや病気だと思う。そんな医者志望が病気に気づかないとか。対策は取っているんだよな?



 ダメだダメだ。このままじゃ話が進まない。とにかく彼女のことは放っておいて俺を探している理由を聞こう。


『ごめん。ちょっと手が離せない場所にいてよ、近くにはいるんだ。で、言いたいことは何だよ?』



 そのメールでキョロキョロと辺りを探す。ここだぞ~。近くにいるというか目の前にいるぞ~?


 ギュッとペン型携帯を握りしめる手に力をこめて、嬉しそうにするのは、ご愛嬌だろう。



『今まで調べていたことと、竹夏(ちなつ)を調べていて疑問に思ったこと。それを伝えたいと思っているけど、また、メールで話さないといけないの?』



 不服の絵文字付きで返されたメールに、俺はしばし考え、こうメールを返した。




『俺が何を考えているのか、疑問にも思うだろうけど、近くの窓に向かって話してくれないか? ほら、お前がどこに居るのかは見えているからさ。声も拾えるから大丈夫』 



 ???? とはてなマークが見える勢いだったが、ここは疑似学園都市。彼女が受け入れるのは意外と早かった。




「ん、わかった。竹夏は、今『時空』構成能力者の支配下にある。だから彼女を元に戻すには、その『時空』構成能力者から別の構成能力者に移し替える必要があるよ?」



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