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第七十三話 誰の言葉が真実か

前回のあらすじ

姉さんを犠牲のまま終わらせない!

道を踏み外しても何度でもやり直せる。

俺が、そうだったように。






「どうした? 簡単な話だろ? 自分の大切な人だった。その人を救うために行動しようと思っただけだぞ」


 表道は下を向いて黙って聞いていた。それはまるで、俺が受けた傷を追体験しているようで。


 なにかがこぼれおちた?



「勝てない。お姉さまには。だから『時空』構成能力者を。てっきり封印されていると思っていた、自分の力を取り戻したいとばっかり。そのために、生きてきたのに」


 間をおいて、勢いよく顔を上げた。俺の手を取って、て? 急に引っ張るな!



「な、なにするんだよ⁉」



「竹夏さんの所に案内。私も、お姉さまのように本当に慎様のために考えられるようになりたい。だから、もうこことはお別れ」



 俺は、何も言えなかった。だって彼女は嘘をついていたから。


 きっと、俺の答えに満足しなかったら、そのまま王嶌の野郎にいって全てを話し、殺されるつもりだったのだろうから。


 それほど、この場所を大切に思っていた。



「きっと、竹夏さんは皆大路の近くにいる、でも皆大路に接触するのは危ないから教えない。でも、王嶌副委員長に聞く限り、今はチャンス。一人で部屋にいるって聞いた」


 チャンス、か。



 俺の思想を実現している奴が簡単にぼろを出すだろうか。


 ちぐはぐだ。俺はいくら思い出してみても王嶌の考えが分からなかった。


 一般的に考えるなら、悪を突き進む人間にしか見えないだろう。どう庇ったとしても彼のしている、もとい昔俺がしてきたことは許されることじゃない。



「ほら、行くよ! 助けるのは今‼」



 万が一、彼が心からしたいことが今していることと違うのなら――。



「分かった。信じるぞ。静沙!」


 伝えた瞬間、どんどん彼女の手が熱くなっていく。緊張しているらしい。


 顔も少し真っ赤になり、この幼女はきっと美人になると、どうでもいいことを考えてしまっていた。




 ~*~



「ここ、皆大路が使用している部屋」



「鍵は、開いている!?」



「皆大路は操られてる。そのかかり具合が悪いらしくて扉は閉めないようにしているの」



 おあつらえ向き、不思議と。


 でも、罠だとしても行くしかない!


 そこは、この『学園都市の隙間』には似合わない、豪勢なホテルだった。どちらかというとこのホテルの方が王島が住んでいる屋敷より高そうだ。



 俺は急いで中に入る。気絶させてでも連れ戻すつもりだった。



「あれ~。慎くん。また会ったね~。どうしたんだよぉ? あたしの着替えるところでも見たいのぉ?」



 竹夏が自然体でいた。足をバタバタとさせてベッドに腰かけている。



「竹夏。帰るぞ? ここはお前の思っている場所じゃない。分かるだろう?」



「帰るって? あたしのブレインも神様も、ここにいるんだよ? それに助けてくれる仲間もいるし、人を救おうとしているこの委員会があたしは好きなんだ~」



「お前は、まだ、きっと夢心地なんだ。しっかりとした医者に診てもらって、昔のお前に――」



「きゃああああああああああああああああああああああああああ‼」



 いきなり大声を上げる竹夏。その声は何かを思い出すことを振り払うように、今の自分を見失うのを恐れるような叫び声に聞こえた。



「昔、もう? んあにいっているの? あたしの生まれた場所はここ。幸せもきっとここ。それとも、あたしの幸せにあなたがなってくれるの?」


 叫び声を忘れたようにケロッとした顔で、次には歯車が狂ったように笑っている。


 この状態になった超能力者は危険だ。今すぐにでもブレインの力がいるだろう。


 彼女は『戦争潰し(ウォークラッシャー)』と言われるぐらい力が強い。その人間の力が悪に偏ったら、


 世界が終わり、姉さんが悲しむ。


 ウソでもいい。彼女の事を連れて行かないと。



「ああ、お前の幸せになる。お前が、好きだ。だから、一緒に戻ろう」



「……」


 黙っている静沙、手をぐっと握りしめて我慢している。


 どうやら、俺が彼女を好きでいることが許せないらしい。それはそうか。今まで俺を慕っていた人間が誰かを好きになる。きっと今まで応援していた人に、恋人ができたことと同じなんだろう。


 じ~と。座ったまま、少女はこちらをのぞき込む。曇り切った目で俺の瞳の奥を覗こうとする。



「私のことが好きなの~? ふん! だったら好きすればいいじゃな、んんん。いいの?」



 今、一瞬戻った?


「分かった‼ 何か面白そうだからついてく! きてきて! お礼にぎゅ~としてあげる」


 心からホッとした。取りあえずは騙せたようだ。


 しかし、今さっきのは?


 近づいた、これで少しは扱いやすくなると思って。しかし、


 ピタッと、止まった?



「ど~してかな、体が震えるよぉ?」


 寒くなったように体をさすり始める。俺は、静沙をばっと見た。


 すぐに、静沙が近づいて。



「あれ、おさまった。なんだったんだろ~?」



 竹夏は何かおかしい。それもこれもあの双子共のせいだ。


 待っていろ。この借りは必ず返してやる。




「さあ、行きますよ。竹夏様?」



「そ~っし! 旅行だね!」




 俺達は、その後すぐに気絶していたキノミと合流。彼の協力を得て『疑似学園都市の隙間』から脱出した。



 ~*~



「……」



「本当に大丈夫なのかい?」



 刀龍無迅(とうりゅうむじん)は静かにその場面を遠くから観察していた。



「大丈ぶい~悪の根はもう取れないからね。それに彼女から希望という、表舞台の思いを根こそぎ奪っておきたかったし。若干扱いにくかったのよね。それに」



「あの、王嶌という男か?」



「うん、全然仲間のようにどす黒い感情を持っていないんだものね~。姉さんの色気も通じないし、信じていいのか悪いのか」





 俺は、俺達は。ここでは何一つ信じてはいけなかったんだ。


 この言葉を聞いたときそう思えてならなかった。



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