第六十七話 繋がりは何度でも
前回のあらすじ
最近こそこそと隠れていることが多い気がする。
もっとも今回は自分から、理不尽さはない。
慣れてしまっている、やっぱり俺は対応力は高いらしいな。
と、思っているそばから。
「見つけましたよ、矢炭マネージャー!」
ダルいことになった、出合崎実凛が俺をゆびさしてプリプリと怒っている。
「おい表道、どういうことだ? 意外と簡単にキノミというやつの超能力が破られたんだが?」
「私にも、わからない。今までこういう事なかった」
表道は奇妙なほど冷静に見える。まさか、言っとくがここでコイツを殺そうとしたらお前達との関係はなかったことにさせてもらうぞ。
そういうことか。別に、生徒会長や井鳥先輩に相談した方が効率が良かったらしいな。この結果を見たらそうとしか思えなくなった。
「僕は、もう使い物になりません。静沙ちゃんとの触れ合いがなかったから簡単に目移りしてしまうようです。ああ! ここを乗り切るには静沙ちゃんのキスがないと」
どさくさに紛れて好きな人に思いを伝えるとか、ずいぶん余裕だなおい!
「マネージャー! どうしてこういう問題を起こしたの、わかってますぅ? 今は大事な時ですよ? 土地の交渉や、超能力者による建設スピードのブースト、生徒手帳に記載する内容の精査などやることはいっぱいあるんです! そのあなたが問題を――」
指でこちらを刺してガミガミと近づいてくる。元小学生の生徒会体育委員長であり、今は栗数大河のサポートとして小学生を牛耳る『クラブ委員会』幹部が指摘する言葉、さすがに所々グザッと来るな。
「お前、どうしてここに?」
「私達の所に『貴方の上司が問題を起こしました探してください』と苦情が入ったんです。もう、破天荒な人だとは思っていましたが、ここまでとは思いませんでした」
ここまでって。俺はいったいどういう人だと思われているんだよ?
大人しさと努力家が取り柄だと思っていたのだけどな。
うん、大人しいやつは今していることをしないって? な訳ないだろ?
「出合崎、言い訳は言わない。だから、見逃してくれないか?」
「はい、わかりました。なんていうわけないでしょう!」
「うわぁ、小学生に罵倒される、いいな羨ましいなぁ。は! いえ僕は静沙ちゃん一筋です。けど、すごくいいなぁ」
さっき言っていたし、目移りしたってことはこの裏表が激しい出合崎に好感を持ってしまったってことだろう。
なら、このままこいつに彼女を振って逃げ切ろうか。
「出合崎。実は表道の、超能力者のコイツに無理矢理連れてこられたんだ。『ついてこないと出合崎を襲うぞ』って。だから、お前の大切なものを守るために仕方なくだな」
結局言い訳をしてしまったが、このさいどうしようもないか。
「ええ、僕は静沙ちゃん一択、一択、はぁはぁ」
「ひぃ、なぜか悪寒が、気持ち悪い! そうだとしても、そうです! 嘘をつくなら自分のためにつく噓は止めた方がいいですよ!」
ッチ、コイツの気持ち悪さで逃げ出してくれればいいのに、さすが小学生のトップ。大人顔負けの根性を持っているらしい。
「さぁ! さっさとその女をブタ箱にぶち込んで帰りますよ! この件は私達がもみ消してあげますから!」
どうするの? とこっちを見る表道。しょうがないか、このままここにいると本当に捕まりそうだ。
何をするか、理解してくれればいいが。
「出合崎。俺は、これから馬鹿なアイツを助けに行く」
「馬鹿な、アイツ?」
「そうだ。正義感の塊で、見た目だけ強そうだけど脆くて、俺達の大切な仲間を取り返すつもりだ」
「……それは、ダメ、です! もう彼女は指名手配されています。要注意人物なんですよ、だから」
「それでも俺は、アイツを光の中へと連れ戻す。彼女を連れ戻して、今やろうとしているクラス対抗戦に参加させて、大切なものはどんな人間でも持つことが出来ると分からせてやる」
「……、そういうことですか」
出合崎は俺から目線を外して表道の、その目に宿る思いを読み取ろうとしていた。
「いい目をしていますね。これから命を賭けようとする人間の目です。私達もそうでした」
「あなたとは何段階も覚悟が違う。私はいつだって慎様の道なき道のために行動する」
「そう」
睨みあう両者、どちらも一歩も引く気がない。
はぁっと、出合崎が呆れたようにため息をついた。やれやれと頭を押さえて首を振っている。
「しょうがないですね~。あの先輩を助けたいのは私も一緒ですし、わかりました、わかりました~! だったらこっちのことはかまわず何が何でも連れてきてくださいよぉ?」
「ああ、まだお前達に教えることは沢山あるからな。簡単には死ぬつもりはない」
ニヤッと笑った出合崎は、ブツブツとこれからやる事を呟いているよ。
「あれとあれをして、あの経理と余剰次元能力研究者のデブを黙らせて――」
「表道」
いつまでも目移りしてもらっていいんだが。俺のわがままを突き通すために、色々なところに迷惑をかけていることをはっきりさせられた。さっさと、キノミを気持ち悪い妄想から覚めさせないといけない。
「嫌だけど仕方ない、キノミ。私の下着を後であげるから、がんばって?」
「うぇぉっしゃぁああああああああああああ‼ 元気百倍! 誰も俺の変装を暴くことはできないぃいいいいいいい‼」
さらに酷くなったぞ? 表道はそれでいいのか。いいのだろう。……いいのか?
「ありがとう、出合崎」
俺達が彼女から通り過ぎるとき、出合崎はポロっとついこぼしてしまったようにツンとして言った。
「お節介はマネージャーの本質ですね。私達にうつさないでくださいよ」
最後まで振り向かずに、俺と出合崎は自らやるべきことのために進み始めた。




