第六十四話 一人の戦い方
前回のあらすじ
九雨創治の能力
それは、いたって平凡で凡庸だった。
だったら一体、あれは?
きっと、誰かが変装していたんだ。彼の力を見たときそう思った。
だっておかしいだろう。ただの思い出す能力なんて。
つまり、『正義執行委員会』。それと敵対する組織が俺達の他にいて、あの土壇場で出てきた。
いったいどいつらだ?
「足元がお留守だ! 気を引き締めろ!」
「は、はい‼」
一週間に四回。これでも少ない方だが、今は角闘流開祖の井鳥矛夢体育副委員長との通し稽古を、彼女が所有している武道館でやっていた。
もちろん勝てない。勝てたためしがない。
角闘流というものは単体では機能しない。他の武術などと組み合わせることによりやっと力の大部分を出すことが出来る。
しかし、体育副委員長は単体で軽く他の流派を圧倒してしまう実力者。そんな人に、無理に決まっている。今はまだ。
表向きにはこの流派と双璧をなすのは一撃流派だ。それはこの流派の実力を表し、かなり疑似学園都市に浸透していることを示す、と思うだろう?
しかし、残念ながら、井鳥先輩は弟子をあまり作りたがらない。
絶滅天然記念物並みの力なんだよ。少し残念だとは思うけどな。
「しぃぃぃぃぃぃいいいん! お前あれか? 俺の大切な時間を上の空かおらぁ!」
「い、いえ。すみません。選考会襲撃事件のことを考えていて」
他にもクラスマッチのこととか考えていて、聞いておきたいと思っているのだが、さっき聞いたら生徒会に聞けと言われたよ。
「はぁ、またかよ? どうしてそう卑屈になる? お前が解決した以外ありえないんだぞ? そこまでして実力を隠したいか、うんん?」
確かに実力を今まで隠していた。これからも、隠していくだろう。
でも、実力以上に買いかぶられるのは、どんなときでもあまり褒められたものじゃないだろう。
「井鳥先輩もおかしいと思わないか? 俺にそれほどの力があったら一年の時から今日までこの流派に手を出していないでしょう? 井鳥先輩も弟子にしてくれなかったはず」
「そのとこか、はぁやめやめ、通し稽古止め。ああ、ここまで来ると重症だ。いい医者に、いや、いい機会だ。ちょっとこい慎、最近身に着いたカウセリングをしてやる」
「え、あ、いいです。て何するんですか!」
すると井鳥先輩に、ガチっと顔を掴まれた。彼女は正座をしたかと思うとぐりぐりっと股の間に顔を押さえつけられる!
そこはふわっといい石鹸の匂いがして。て、それどころじゃないやめ、くぁwせdrftgyふじこlp!
俺は押さえつけられながら、どうにか抜け出そうともがいていると、
「いいか、俺は直感を信じている。何処か芯が通っていて、やりたいことの明確にみえるのに。世間と自分のギャップに苦しんでやりたいことがないと息巻いているお前を見てカリスマとはこういうものなのか、と思ったんだ。それに」
「ぐぐうううう! はぁ! はぁはぁ、いきなり何するんだ!」
井鳥先輩は人によって言葉遣いを変える、つまり俺もよく分からないまま彼女に対して丁寧語になったりしてしまう。
今回の場合は歯に着せぬ物言いをしてしまった。
「実力とは『その場でできる全力』を出すことを言うんだ。悩むのは当たり前だ、その悩んだ結果力を使うことを決断した、それは『その場でできる全力』だと判断したということだ。一人でも複数でも見せたくない、力を使いたくない、言えない時はよくあることなんだぜ」
「……」
井鳥先輩は俺が角闘流を使うところを見たことがない。それ以外にも一人で行使できる、隠している力もあると確信している。
お前角闘流使わないだろ? なんでだ?
きっと、それを聞かないのは、自分もブレインと上手くいっていないからだろう。
この疑似学園都市ではよくあることらしい。
結果を出した超能力者に、ブレインが離れていってしまうことが。
今日は何話か投稿していきます。よろしくお願いいたします!




