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第六十三話  九雨の能力

前回のあらすじ

学生の言い分、先生の事情。

食い違う両者にとってもがくことは成長することに繋がる。

たとえ楽な道が正解だとわかっていても、決して――ない。


 俺は一人の男と待ち合わせをしていた。


 イライラしていて足をがたがたと揺する。今までの経験上、彼の存在はそこまで重要視していなかった。

 それなのに、


 先の四争選選考会の時、彼は確かに俺の知らない力を使っていた。


 とても俺の力とは思えない、力そのものがこの疑似学園都市で無視できない力を見せてきた。


 敵ではないのか、もし味方だったとして、目的はなんだ。


 その答えの分からない疑問に行きつく不安を燃料に、揺する足がどんどん激しくなっていく。




 というか、もう待ち合わせからかなり経っているんだが‼


 そいつ、九雨(くぐれ)はそんな俺をしり目に悠々とこっちに向かってきたよ。



「や~慎。災難だったね~。あの居心地のいい二年B組から除籍されるなんて。この疑似学園都市の成功者の大半は普通の人間なのに。いやっぁ。お疲れお疲れ」



「九雨、いや、この際待ち合わせ時刻を破ったことはどうでもいい。答えられる範囲でいい。お前のことを知りたい」



「え?」


 さ~っと九雨の顔が笑顔のまま凍り付く。



「慎、どうしたの? なんか切羽詰まっていて、今からいう言葉が告白前の女子みたいだし。もしかして新しく入ったクラスって。男子と男子の組み合わせを大事にする系のクラスですか?」



 そのボケにイライラは募っていく。しかし、このイライラを解放して敵に回すことは避けたい。


 そもそも国に隠されている素性だ。そう簡単に教えてくれないのは分かっていたことだろう?



「違う、二年Ⅾ組だ。まったく面白いクラスだったよ。あのクラスに入るくらいなら待機室、先生に授業を教えて貰えない自習室にでも入ったほうがいいと思っていたが、あんなクラスもあったんだな」



「ふ~ん慎を取り込むことが上手いとか、そ~と頭のねじが飛んでいるクラスなんだね~。あ、ウエイトレスさん、僕頼みま~す。もちろん慎、奢ってくるよね?」



「いいぞ。今の俺は退クラス金や、小学校の運営をさせてもらっているから金ならある」



「いえ~い。慎太っ腹~、ならこの喫茶店で高いやつを片っ端から――」



「何割か払わせるぞ?」



「ケチだな~! 優しくしてよ~」



 いくら情報料だとしても、店ごと買われる勢いはやらないのが普通だと思うがな。


 どんどんとデザートが並んでいって、別な意味でかなり目立ち始めた。


 なんか、負けた気分だ。そもそも、男子が男子にこれだけ奢るとか、本当にどんな関係か疑われそうだな。



「いや~、普通は大変だよね~。こうして常に満足できないし、満足したら成長が止まるし。ああ、上級委員会とコネが欲しい~」



「上級委員会なんて都市伝説だろ? 格差を作らないように設計された都市がこの疑似学園都市だって説明されたじゃないか」



「そうだね~。でもそれを探してみるのも悪くないんじゃない~?」



「はぁ? それってどういう」



「すみません、いまいいですか? 九雨(くぐれ)先輩!」



「うん? どちら様かな」



 三人組で固まっている、最近トレンドのように身長をわざと小さくなるように生活していると思われる、何処かの委員会のグループが会話に入ってきた。


 その中では大きい方の、ちょっと赤い顔をしている女子生徒は九雨に呼びかけた。


 実は、クラスの中でコイツとはつるんでいたが、プライベートでは一切会ったことがない。


 そもそもただの会話だけさせてもらい、クラスの中で浮かないために友達になったようなものだ。今の今まで特にコイツのことを知ろうとしなかった。


 そして結局それが、コイツを危険視しないといけない理由になってしまったのだが。


 友達とは知り過ぎてはいけない、でも知らな過ぎてもいけない。


 難しい塩梅だと今ハッキリと思っていた。


 それにしても、女性に声をかけられるとか。羨ましい、恋愛経験豊富そうだなお前?


 ああ、俺に声をかけてくる女子は女子ではあるが面倒事を持ってくるからカウントしない。



「失礼しました! 私、保健委員会の一年生です。先輩って、あの先輩ですよね? 私の友達も先輩に助けてもらったらしくて、どうか私にもその『能力』を使ってくれませんか⁉」



『能力』、を使う⁉ これは、今まで知らなかった九雨の力が見られるかもしれない。



「いいよ~。そうだね、友達割が効いて千円くらいかな」



「はい、よろしくお願いします!」


 ポンっと軽々しく彼女の頭に触れる九雨、これはやり慣れている。


 そして、難しい顔をしてうんうん唸り始めた⁉




「むむむむむ、うん。思い出した!」


 お、思い出したぁ?




「君が忘れてしまったのは、部屋の鍵のありかだね? 大丈夫だ、何を思ったかお風呂の浴槽の角に置いていたよ」



「あ、ありがとうございます! 昨日探してもなくて、もう美化委員会に鍵を作る相談をしようと思っていたんです」



「いえいえ、これからも僕『思い出しサービス』のご利用よろしく~」



「はい、ありがとうございました!」



 去っていく三人組に手を振る九雨。


 ウソ、だろ。そんなショボいちから、か?



「九雨の、能力って」



「ん、見ての通りだよ? 『忘れたことを思い出す』能力だね」




「お前選考会の時の力は――」

「選考会のときって? その時は確か寝ていたけど、もちろん慎とも会ってないね」





お疲れ様です、イイタチイリュウです。停電です、停電が起きました。

遅れました、ごめんなさい。申し訳ございません。

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