第五十九話 二年Ⅾ組
前回のあらすじ
俺はクラスに在籍できなくなっていた。
でも、俺を買い取るクラスが出たらしい。なるほど、
モノ好きもいるものである
それが、最初の挨拶だった。
目の前の女性は帽子付きのパーカーを羽織り帽子にはウサギ耳のように長い耳がついている。俺は最初見たとき二足歩行のウサギかと思った。
「さあ~文句を言わず入りたまえ~このすかぽんたーん」
「いや、俺はすかぽんたんじゃないです。ちゃんとした慎といった名前が――」
「よし、わかった! 君の名前はこれからお~君にする、そしてみんな紹介しよう! これが我がクラスの救世主、お~君だ。みんな仲良くやってくれ~」
『よろしくぅ‼』『けっこ~かっこい~じゃない!』
歓迎の言葉がクラス中に飛び交っていた。俺はよくわからないあだ名も含めて、訳が分からなくなっていく。
たいていは、クラス移動というものはそれぞれ頻繁に行われる。でもその時のクラスメイトの雰囲気は見下す目、敵対する目といった気持ち悪い視線しか移動者には向けない。
クラスというものは競争だ。どれだけクラス委員に媚びを売り、賄賂を贈って学校内マネーを受け取るか、税金を少なくしてもらうか。
もちろん、やらないものは来月分の食費を減らしたり、もっと利益率の高い依頼を受けなければいけない。しかし、旨い依頼はそれだけ常に肌身離さず持っているマネ―カードを奪われる可能性を秘めている。
最初に言った依頼を妨害する依頼というものだ。
俺はそれで戦力外通告を受けた生徒を何人も知っている。俺が低ランクの依頼しかしないのはそのためでもある。確かに利益率は減るが、確実にお金はたまる。しかも、俺は隠れて内職もお手の物だ。だから、四争選という危険がつきものな大会は嫌いなのである。
「ほれ、お~君自己紹介して~」
「は、はい。俺は矢炭慎といって……違う‼ そうじゃない! なんでこんなに和気藹藹としているんだ。もっとこう『きやがったかクラ運泥棒め』みたいにな目をするはずだろうが!」
「うん? 君は何を勘違いしているんだ。新しいクラスメイトが来た。喜ぶべきことじゃないか」
ウソこきやがって。弱小クラスがそんな能天気な頭をしているわけがないだろう!
「違う。断じて違う。お前らわかっているだろう。このクラスは最弱クラスだ。つまりクラス運営費が生徒会や体育委員会から多く支払われない。みんな財布の中身がカツカツだろ。しかも俺みたいな自分でいうのもなんだが優秀な人材が入ったんだ。さらにクラス運営費が俺に流れることになる。もっと俺をさげすめよ。俺なんかお前たちのことを――」
「そこまでだ。お~君」
ウサギ少女が俺の唇に手でバッテンを作ったものを押し付け笑顔で言った。
「確かに、このクラスはクラス運営費が多く支払われていない。もう私も月々の支払いがカツカツだ。でもね、そんな時こそ笑えばいいんだよ。お金がなければ稼げばいい。貧しい人には手を差し伸べればいい。きっと自分に返ってくる。それがこのクラスの座右の銘だ。そうだろう。みんな‼」
おう、あったりめーよ。私なんて今日のおかずさえ手に入るかわからないんだから。じゃあ、俺の所で飯でも――。あんたの所は部屋が汚いから嫌‼ 持ってきなさい。そんなこと言うなよ~。
みんな笑い声が絶えない。まるで家族、いや文明が飛躍してからは家族さえも寂しくなってきてしまった。家族以上の存在がこのクラスにある。なぜかそれは新鮮に感じた。まるで心の氷が融けるような、春一番が吹いてしみじみと感じるような……。
「まあ、あまりにも仕事をしていないものは怠け者とみなして私のスーパージャイアントクロッキングをかましてやるぞ!」
あれは痛い、あれを味わったが最後二度とお天道様を拝めねえかもしれねえ。そんな愁傷めいた言葉があちらこちらで飛び交っていた。
「まあ、自分の家族だと思って勉学に励んでくれ。ちなみに私が君を買ったのは有り余る可能性があったからだ。あと安かった‼ 無理に全力を出せとは言わない。1か月間、税金を君からはとらない‼ これからよろしく頼むぞお~君」
「……」
バカなクラスがあったものだと思う。多分最初に会った生徒がクラス委員なんだろう。こんな超約をしたがらないと噂がある、クラス増強を望めない生徒をとって何がしたいんだろうか。裏があるんだろうか。
いや、それならもっとやりようがあるだろう。
なぜか、笑いがこみ上げてくる。こんなバカなクラスはさっさと抜けた方がいい。うまく利用した後でな。
と、わざと自分の気持ちに嘘をついてこのクラスを持ち上げようとする計画を練るぐらい、
どうやら、彼女達の毒気にやられてしまったらしい。




