第五十五話 飛び入り
前回のあらすじ
上回っていると思っていた
でも、敵はまだまだ上を行く戦力だった
いや。止める!
「ではバイなら~」
「俺は負けていない! 次会った時がお前の死だ介沁‼」
ひときわ大きく、双子近くに出来た獣人たちを回収したのと同じ影。手を振って双子達と皆大路のチームがその影に吸い込まれていく。
もちろん、再月と無迅先輩も。
一部の『正義執行委員会』も静かにその影に潜り込んだ。
俺は急いで生徒会長のもとに走ろうとした、でも足が動いてくれない、引っ張る感情があった。
「表道、お前も来い! 表道⁉」
経ったまま気絶している⁉ もしかしてあの双子共、コイツに何かしたな‼
「彼女も連れてこい‼ きっとあの『時空』構成能力者が彼女に与えた力を回収して体に負荷がかかったんだ‼」
彼女を連れて、生徒会長のもとに行く。こんな時にも慌てず指示を出す人だ。きっと俺達を助けてくれることが可能だろう。
でも、この威力を食らったら、学園都市の一部は機能停止になるかもしれない。生徒会長は俺達を守るだけで精いっぱいかもしれない。
「……、矛夢先輩。表道を運んでもらえませんか?」
「君は……止める気かい?」
「はい、生徒会長の作戦では無理かもしれない。だから、俺に出来ることをしてきます」
「ふん、いい年してカッコつけるやつだ」
吐き捨てるように介沁先輩が言う。その間にも太陽は時限爆弾がゆっくりと制限時間を告げるように、落ちてきている。
「俺はこの学園都市でやることがあります。学校を探して、姉さん助けて、それで俺は今までの鬱屈した感情を、感情を……」
言ってしまったら。俺の何かが崩れてしまうような気がした。
まだ、これには蓋をしておいたほうがいいと直感的に思った。中学時代の俺の気持ちには我慢させてしまうけど。
矛夢先輩はここにきて一番大きなため息をついた。そしてバシンと俺の背中を叩くように押す。
「力を失ってしまったと思っていた、でも、何故か君はすぐに新たな力をつけて立ち上がっていったな。私の流派も短時間で吸収して、君のその諦めの悪さはもう個性だぞ? 絶対に生きて帰って来い、早くいけ!」
「はい!」
俺は矛夢先輩が走った方向とは反対側に、再月が降り注がせる太陽のようなものに立ち向かう。
この力を使ったら、きっと今までのように上手く立ちいかなくなるだろう。
でも、
俺は力をぶつけるために死の太陽を感じさせるエネルギーの塊に飛び込んだ!
「レベルフォース、【時――」
「ふぁぁあ。かっこい~ね慎。その世界線の軽視とか、人の命の大事さとか。自分を中心に考えない君、僕は大好きだよ~」
その声の主は、気だるげにそうつぶやいた。
「く、九雨。お前、どうしてここに‼」
「どうしてと言われても、僕にしかできないことがあるからここにいるのさ」
飛び込んだ俺の横に、いきなり現れた⁉⁉⁉ 不味い、この攻撃では守り切れないかもしれない。
「早く、生徒会長の近くに!」
「いや、いいよ。さて、『時空』だから『空間』の成分が多いよね? だったら、ジャンケンだったら『創造』が一番いいかな。世界から忘れ去られた≪彼女の力≫が、一番いい!」
いきなり現れた九雨が、その所々氷のとげがある無限の力のような太陽に触れた!
ズプウォンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン‼
爆発する太陽が破裂したと思わせるエネルギー。しかし九雨がぶつけているエネルギーと拮抗していた!
再月が作り出したエネルギーの球に、九雨が沢山の太い光線のようなものであたりに弾けようとするのを抑え込んでいる。
上手い。それは上空の方、きれいに力を誘導している。
彼は、いったい何者なんだ? この力、俺をゆうに超えている。
「はぁ。まったく彼女も突然呼び出すよね~。こっちの身にもなってよ。寝ていたのに」
「九雨、お前は、何者なんだ?」
「んん? ああ、心配しないで。僕には何も力はない。そもそもこの力は、君の力と同一だよ?」
「いったい、何を言っている?」
「君の力を使っているだけだから、君が止めたのと一緒ってことさ!」
ンンンンンンンンンンツピャアリリイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンンン‼‼‼‼‼‼‼‼
エネルギーが上空に弾け飛んだ!
『太陽氷陽』言われていた力は跡形もなくなっていて。
俺は空中に飛びあがっていたが、結局何もせずに闘技場に体勢を崩して落ちるだけ。
押し込めないと思っていた、なぜなら構成能力者の力が籠っているから、受け止められないはずだった。
でも、九雨は止めてみせた。
「九雨‼ お前は!」
尻もちをついて閉じてしまった目をすぐに開け、辺りを見渡す。
近くには、誰もいなかった。
そして、壊れていたものも、一つもなくなっていた。
一体、何が起こって。
まるで俺が使った超能力のように、全て元通りだ。
「九ぐ、いて!」
「流石だよ、慎! ほら飴ちゃん上げよう! 私の一番のお気に入りだぞ‼」
そう言って車椅子を降りた、嫌そうな介沁先輩におんぶされている生徒会長が俺の頬にぐりぐりと飴玉を押しつけてくる。
俺だけをたたえる歓声は、そのすぐ後だった。
今日はここまで!
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