第五十二話 天秤は傾いた
前回のあらすじ
俺と双子達の会話の途中
服化という現象それは
再月竹夏をどんどん覆っていく
一瞬、キレイだと思った。
服化と双子が呼んでいた現象、その存在は知らなかったが、何が起こるのかは見ていたので分かった。
ぐるぐると卵型の繭が中心を基準に回転している、その場にいた全員がその不気味さと神秘さに心を奪われ戦う手を止めて空のその一点を見つめていた。
そしてゆっくりと繭が、いくつもの翼が折りたたまれているように重なった状態に変わった。
体を覆っていた何翼を開いたら、なかの人間の生まれたままの肌が光ように美しく見え、どうしようもなく目を離せない。
再月、再月だと思われる少女は服で隠す必要最低限の体の部分を黒い羽で覆って壊れた人形のように無機質な顔をこちらに向けてきた。
姿が変わっただけじゃない、戦闘力も上がっているように思う。深層化か? でも違うような。
「慎先輩、知っていますか~? 超能力者はブレインが力を操る、じゃあブレインを操るのは誰でしょう?」
まさ、か‼
「そう、私達構成能力者んだよ! 構成能力者という人間はその人間の性質を変化させることが出来るんだなこれが! そして、竹夏ちゃんの体は、私達『時空』構成能力者が染め上げてあげました~!」
「皆大路ちゃんの次元をちょっといじってやったから意外と早かったね~」
「いや、違う違うよ~。きっと無迅先輩の次元に少し触れているからだよ~。ないす~ぅ!」
「いえいえ、それほどでもありません」
「竹夏、俺だ、俺が、分かるか?」
「?」
誰? というように首を傾ける少女に残酷なほど、人間味を感じなかった。
「ダメです、マスター‼ そちらに行ってはいけません。恐ろしい何かを感じます。あれは、あれは本質的に化け物です!」
腰に腕を回されて止めるのは能力を解除した叶帆だ。
知らないうちにずいぶん表道達に近づいていたらしい。
「そ~だよ! そうじゃない? うん、化け物じゃない! あの子は感情を否定したから脳の隅から隅まで空っぽになっちゃっただけだよ~!」
「姉さんそれ、お人形って言うんじゃないの?」
「そうかな~。可愛いと思うけどなぁあ? 竹夏ちゃん、ほらアイサッツ~!」
ブウォン!
黒色と、氷の色が混ざった剣を瞬く間に近づけてきて大きく振りかぶって寸止めされる!
「くぅ!」
反射的に距離を取る、余りの速さに死の恐怖が俺にのしかかった。
「お~よくできましたぁ‼」
双子の片方が嬉しそうに手を叩く。腹が立った、人の気持ちをあざ笑うようなことを! そいつを俺は睨みつけた。
「いやいやぁ、怖いこわい!」
「可愛い可愛い、双子さんたち。そろそろお仕舞いにしてもいいかな?」
その声は無迅先輩だ。手には入念に準備する時しか持つことがない、『刀刀』という極限まで殺しに特化した武器を腰から双子達に見せつけていた。
「そうだね~。そうしようか」
「やっちゃえ~!」
「はははは、よし」
ザアアアンンンンンンンン!
俺は、その場から動けなかった。
無迅先輩と魂の抜けたような竹夏の二人が右と左の首筋にそれぞれ刃を張り付けるように近づけていたから。
無理だ、今の俺では。この二人を相手に勝てる気がしない。
「ま、マスター‼」
「おっと、叶帆くん。動かないでくれ。俺も仲間になるかもしれない人間をむざむざ殺そうと思わないからね」
「嫌です‼ 絶対に私もマスターもあなたの仲間にはなりません。あなた達の力は私達には必要ありません‼」
「と、いっているのだが、君はどうするんだい? 慎?」
俺は、どうすればいいのか。
「ハイハ~イ。じゃあ、これで最後の問いかけです。私達の仲間にならない? 今なら好きなことを好きなだけやらせてあげるよ? もちろん私達の、きゃ!」
「え、姉さんと違って私、先輩はタイプだよ?」
「え~? 性格的に同じだから被った~? うん、その話は後で解決するとして~、そういえっば、目的がっあたね~こっちに来る前に、そのお荷物の叶帆先輩と小学生は殺してくれよんね。大丈夫‼ ズサッとやれば後はこっちの力で勝手に天国に連れて行ってやるよ~」
「ひぃ!」
小学生の実凛、大河、希がおびえた。殺される、彼女達の首を絞めている感情は小学生にとっては早すぎた。
すがりつくような目で俺を見てくる三人組に俺は――、
「可愛い可愛い双子達よ。叶帆ちゃんは要らないのかい?」
「要らないというより詩沙ちゃんがうるさくてね~。それに慎さんだけいれば私はもっと強くなるし、ブレインよりも超能力者の方があっている~きもするぅ?」
俺は、正しい答えを知っていた。その答えは、この無限ループに終止符を打つことになるから。
でも、俺の経験則はそれを拒否していた。痛みを伴うことぐらいわかっていたはずなのに。
「……」
俺は無言で小学生のもとに歩いていく。
もっとも小学生達は絶望していながらも最後の最後まで生を諦めるつもりはないらしい。
「大河、もう隠していられないわ‼ 超能力を最大まで上げて‼ 小学生はファーストまでだけど、秘密練習したフォースまで!」
「分かった! 俺達は諦めない。絶対に学校を造って、彼と好きなだけ遊ぶんだ!」
「はははは、慎くん、これを使え。俺からの入会祝いだ」
無迅先輩から投げられた『刀刀』を掴んだ。
そうか、やっぱり大河がブレインだったらしい。意識を集中させて超能力を具現化しようとする、が。
――遅い。
俺は決断した、して、しまった。最後の最後まで迷っていたから剣先が鈍ってしまったけど。
酷いやつ、このままじゃ殺せないかもしれない。その刀は切り刻もうと小学生の首筋に迫り――、
でも、その迷いは新たな風を巻き起こすのは十分だった。
ガクキキキキキキキキンンンンンンンン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
「『生徒会』だ! この戦闘はこの瞬間を持って無力化させてもらう‼」




