第五話 体育委員長
前回のあらすじ
高校生が切磋琢磨する場所、疑似学園都市。
相手はこの都市のエリートだ。
「いいのか、動いて? お前はそれに、命を賭けられるのか?」
「っく!」
ピタリと動くのを止めた。相手の力も分からないのに下手に動くのは不味いと理解してくれたらしい。
俺も命を奪って、この疑似学園都市の住民から一般人にしたいわけじゃない。彼女にもこんな遊びのような戦闘に命を賭ける必要はないと理解してほしいぐらいだ。
「ムカつくムカつくムカつく‼ 覚悟しなさい! アンタ達の超能力、絶対に丸裸にしてやる!」
「はは、怖いなぁ!」
俺は後ろを見られないように注意する。もし手元を見られたらこの手袋の秘密に感づかれるかもしれないから。
じりじりと彼女を人質に取りながら、ドアを蹴破った。
かなり広い、社長室のような内装の部屋は、殺気だっていた。
そんな中一番偉い人が座る席の、生徒会長が手を叩いて笑っていた。
「ははゃゃっああはは‼‼ 凄い、凄いよ。今回の会議のせいでレベルファーストだったとしても、あの再月ちゃんが後れを取るなんて! 体育委員長に聞いていた通りだ。これは面白い遊び道具になるなぁ! でも」
ゾシンっと、三人の委員長の敵意を受け止める。名前は憶えていないが三人のうち二人は風紀委員長、体が逞しいのは保健委員長だろう。そしてもう一人は、実質的な俺の上司である刀龍介沁先輩だ。
つまり、俺達の敵だ。
「きみもバカだね。この布陣で逃げられるとでも? ふつう、入ろうとも思わないのに」
「生徒会長は必ず約束を守る人と知っていますから。しかし、ここに初めて入りましたけど、生徒会はこれだけってことはないですよね? ならそんなに恐れる必要もないのですが」
「そんなことあるはずないだろ? 君、高校の生徒会がどれだけ大変なのか分かっていないね! 前会長と同じ委員長枠を引き継ぐことでさえ、ついて来てくれなかった委員会もいるんだ。秘密結社のように暗躍している委員会もある、学校ごとに特別な委員会が次々出来て認定でさえ追いつかない、それに君のように届け出を出していない委員会も沢山ある。ある、ん、だよぉ‼‼ ううううう、うぇええんんんんんんん‼」
な、泣いた? 名ばかりの生徒会だと自覚しているらしい。もっと追い込んでやろうか?
く、何? 迫ってくる何だこの悪寒は⁉ ビクンと心臓が跳ねた。
「生徒会長が泣いてしまったぞ‼」
「だから書記がいない時に生徒会長を自由にさせ過ぎてはいけないと言ったでしょう!」
「俺は知らん、もともとお前、保健委員会の彼女が外に連れ出したんだ。そのつけは保健委員会、そのリーダーに解決してもらうのが筋だろう」
人質にされた身内が責任を取れ、と威圧するように刀龍先輩が低い声で言う。
これが生徒会として体育副委員長と敵対している、『一番槍』の一人。使い捨ての重要な武器という、昔能力者だったと言われる先祖の一部の名を持つ、国の人間。
格が違う、俺も同じ人間だと知ったからわかる。
彼とは戦うことにならないらしい、安心した。
「そうか、なら今回はわしが責任を負うとしよう。早くしないと親衛隊がここを地獄に変えるだろうぞ。おい、ブラック委員会よ」
違うから。俺は素晴らしく評価の高いホワイト委員会になるんだよ、これから。
「なんですか?」
「今回は見逃す、早くこの会社から出ていけ。お前と遊んでいると、この建物の被害が甚大になる」
「言われなくても、そのつもり!」
俺はツインテ少女を蹴飛ばして保健委員長ぶつけ、そのあと生徒会室の窓を銃で壊し、窓から飛び降りた。
「クラスマッチをするときは、ぜひうちに相談をお願いしますねぇ~‼」
「ま、マスタぁああ‼ 置いて行かないでくださいぃいい! ひいい‼」
どうやら、叶帆は捕まえた体育委員をひもで体に結び付けて飛び降りるつもりらしい。その震え声は高すぎたから出た悲鳴なのか、それとも周りの委員長に対しての恐怖なのか。
「し、失礼しましたぁ~」
目をつぶって彼女は窓を通り抜けた、俺は出来るだけ体に抵抗を持たせ、叶帆をキャッチする。
「安心しろ体は守ってやる。この空中散歩から抜け出すぞ!」
「はい、マスター!」
何とか、目標達成。
しかし、危なかった。俺は息を吐いて今回の綱渡りをどうにか渡れたことに満足していた。
もともと、俺達はこんな依頼は死んでも受けない。それを受けたのは、借りがあった体育副委員長きってのお願いだったからだ。
あと委員会を作ったばかりで、なかったし、いろいろと。
俺の目標は決まっていた。それは『本物の学校』を見つけることだ。
見つけたら、俺がこれから推奨する『委員会』の学校が、実質学園都市に影響力を持つことになるだろう。
そうなったら俺は国と交渉して引きこもり関係を助け、医療を一手に受け持つ『戦う医者』の国家資格を受けられる高大一貫教育の学校をつくるつもりでいる。
超能力が根を張っている学園都市、そのものを餌にして呼び寄せてやる。
もうこれ以上あの人のような被害者を出したくない、そしてその人の、医者が無理だと言っている病に答えを出したかった。だから――、
昔の自分は理解していなかったんだよ。
俺が引きこもっている間に食い物にしていた、血の繋がっていない家族のことを。
すみません。遅くなりました!




