第四十五話 ふと気づく
前回のあらすじ
理嗣の能力『典×』
理解していなかったのは俺だった
俺は四天王争奪選のいい道具になった
「ぐあぁ‼」
これで何発目だろう。俺は意識がもうろうとなりながらも何とか耐えていた。今ではあんなに媚びていた女性までもがブレインのためと無抵抗の俺を攻撃していた。
「ははは、能力ってのはな頭を使ってなんぼなんだ。バカ正直に力を振るうだけじゃたとえお前が四争選に出ても潔く散るだけだぜ」
その通り、イライラしていたと言い訳しても遅いだろう。これでは、再月を笑えない。
理嗣は稼いだ金を数えながら笑っていた。もう金で買えないものはないと嬉しそうだ。愛情も人の力も、権力さえ金で買えるとでも思っているのだろう。実際、金で買える。女性を振り向かせたかったら買いたいものを与えればいいし、権力が欲しいなら上司との飲み会で自分が払いますといえばいい。人の力が欲しかったら金で雇えばいい。もうコイツに動かせないものなどないと薄れゆく意識の中ふと、思った。
「よ~す。干からびた魚を見に来たぜ~」
不良の一団が観客席に現れる。とても楽しそうな声をあげて。
「お疲れ様ですボス。ボスのおかげでいいものが見られましたよ」
「そういや今殴り放題だったな。俺にも殴らせろよ」
そういって観客席から闘技場に上がり込んできた。
『ちょっと~! そこごめんねぇ。競技には事前参加しかだめ――』
「ぁあ? なんか文句あっかぁ!」
『ひええぇえ! 暴力はんたいぃ~』
「ボス、今は不味いです」
「は、何だお前。俺に逆らう気?」
「い、いえ、そうではなく」
誰も、この不良共を止められないらしい。ずさんな選考会運営だよ、生徒会長。
「なら文句はないな。よ~しこれは今までのお礼だ受け取れ‼」
ドスゥン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
そういって下っ端に慎を持ちあげさせて闘技場から出ない程度に思いっきり腹を殴りつけた。
「ぐ、ブウぅ!」
べチャッ、と今日食べたものを吐き出した。すこし、血も交じっている。
気が遠くなりそうなほどの激痛と不快感が俺を支配する。
「あ~たのちい。無抵抗な男を殴ることが合法的に許される快感。もう最高だわ」
「あの~ボス。お代のほうは……」
そう理嗣が言うとボスと言われた男はギロっと彼を向いて、
「お前のブレインは誰だ? 俺だろ。俺の金は俺の金お前の金も俺の金って言葉、知っているよな」
と、ボスは言うと理嗣の肩に手をまわしてニヤニヤしていった。
「まあ、そうですが……」
「だろぉ~。さてあと百発ぐらい殴ってから――」
「マスターを殴るのは止めてください!」
誰だ、俺を、かばうって。
叶帆だった。叶帆が能力を解き、闘技場に上がって俺を庇うように目の前で両手を広げて立っていた。
「おい、邪魔だ。そこどきな」
理嗣のボスは威圧するように言った。
「いえ!どきません‼ 私はマスターに返さないといけない恩が山ほどあるのです。たとえ、てこでもこの場所から離れません!」
言い返してはいる、けど、足はプルプルと震えていて、上手く呂律が回っているのが奇跡だったと思うぐらい恐ろしいと思っているのが、背中越しからでも分かった。分かってしまった。
「はは、お前に何ができるんだよ。手袋に取り付くことしかできないカスが。そこをどきやがれ‼」
顔を殴られて、吹き飛ばされていってしまう、そのまま叶帆はこっちに飛んできた。まだ上手く目が開かないほど殴られ、胃液を吐き出した体から精気が抜けていく、俺の目の前に。
叶帆はそのまま優しく胃液でベタベタな俺の頬に手をやって――、
遅くなりました。




